【インタビュー】VALSHE、通算100曲目に「最も自分らしい楽曲と新たな変化」
■“これはさすがに言っちゃいけないだろう”
■焚吐が代弁してくれなかったら一生言えなかったこと
──そしてVALSHEさん作詞作曲の「魔女裁判 〜imaginary nonfiction〜」は今作の中で曲調がいちばんファンタジックで演劇的な要素が強いですね。サビに移行するボーカルのテンション感も素晴らしい。
VALSHE:ありがとうございます。この曲は楽しげな感じですね。VALSHEの楽曲にはロックな側面もファンタジックな側面もありますが、そのファンタジーにもメルヘンな世界観もあればダークでゴシックな世界観もある。「魔女裁判 〜imaginary nonfiction〜」は楽曲的には前者、歌詞的には後者という明確なヴィジョンを持って作りました。
──サウンドはミュージカルのような楽しさがありますけど、歌詞は社会風刺というか、シニカルを究めているなと。
VALSHE:4曲の中でいちばん鋭利かもしれないですね。“裁判”というワードが出てきますが、社会的な裁判について歌っているわけではないんです。
▲「SYM-BOLIC XXX」【通常盤】 |
VALSHE:というよりも、端的に言うと“事なかれ主義”が大嫌いなんですよ。そういう人たちを徹底的に断罪してやろうって書いたんですよね。
──なかったことにしよう的な考え方?
VALSHE:無関係とは言いきれない場所にいながら、見ていないふりで何もしない人たちとか、責任がない場所で後出しじゃんけんをする人たちは、ある意味、矢面に立っている人たちより全然悪質だと思うんです。そういうことを思っていても今までのVALSHEなら大人になればいろんな環境があり、立場があると考えて言わないで濁してきたんですよ。でも、自分の作品の中で自分が疑問に思っていることやこうしたほうがいいと思うことを主張しないでどうするんだ?って。言っても伝わらない可能性のほうが大きいんだから言うべきだろうって思い直したんです。自分と同じように思っている人はぜひ聴いてスカッとしてほしいなって。
──掲げてきたのは反骨精神、という部分がもろに反映されているんですね。
VALSHE:そうですね。4曲すべてに影響していると思います。毒にも薬にもならないことを歌うのはVALSHEではないなって。
──それでいて法廷を舞台に、最後は“ああ残念…その目その口その耳はお飾りみたいなものでしたね これにて閉廷”でオチをつけてるのが技ありです。
VALSHE:ははは。さっきお話したように曲調的にはメルヘンでちょっとゴシック感があるので、ライブやイベントなどいろんな場所で歌う曲になると思うので、ぜひ楽しんでほしいですね。
──あとビックリしたのはシンガーソングライターの焚吐さんがVALSHEさんに書き下ろした曲「空腹」です。
VALSHE:これこそ新しいですね。
──レーベルメイトの後輩でもありますが、どんなやりとりがあって生まれた曲ですか?
VALSHE:そもそもはVALSHEが「MONTAGE」(2017年)をリリースしたときにラジオ番組で共演したのが出会いで、そのときお互いに作品を交換したのがキッカケですね。彼のスタンスや作品の内容の深い部分を知る前から“どうも似た匂いがする人だな”とは感じていたんです。その後、2018年のリリースにともなってレコードショップでラジオジャックをする機会があって、その店舗に焚吐がCDを買いに来てくれたんですよ。
▲焚吐 |
VALSHE:お店にいる焚吐をスタッフが見つけて、強制的にラジオに彼がゲスト出演させられることになったんですが(笑)、スタッフさん同士で「いつかなにか一緒にできたらいいですね」っていう会話が生まれていたんです。そんな経緯があったのと、100曲目のシングルはVALSHEの総まとめ盤ではなく“VALSHEは、まだ新しいものを作っていこうとしているな”と思ってもらえるような内容にしたかったので、焚吐は適任なんじゃないかと。そう思って楽曲提供をしてもらおうということになったんです。さらに言うと、これまでは作曲をオファーしても、VALSHEが作詞するというのが基本で。例外的に自分が信頼している人には歌詞も託すという形を取っていたんです。なので、当初は曲だけ作ってもらおうと思っていたんですけど、途中で気が変わったんです。“歌詞も書いてもらうのもいいかも”って。
──それで歌詞も焚吐さんに任せたという?
VALSHE:ええ、作曲を依頼した後にLINEや電話でやりとりしたんですが、サウンドとか歌詞の話というより、自分たちの主観を話す謎の“持論祭り”みたいなのが何度か開催されたんですよ(笑)。結果、共通項がたくさんあったので、これだけ一致してるなら大丈夫だろうって。なので、「空腹」は歌詞も曲も最初期の段階から一切変わっていないんです。ただ、デモが出来た後に電話で、“これはどういう意味ですか?”、“どういう想いで書いているんですか?”って一語一句確認して、全て納得した上で歌いました。
──尖っている部分が似ているんでしょうね。
VALSHE:“なぜ?”って疑問視するところが非常に近いと感じます。
──サウンドもアレンジも含めて、洗練されていてエッジがあってとても刺激的なコラボレーションです。
VALSHE:自分が言えなかったけれど、言いたかったこと。彼が代弁してくれなかったら一生言えなかったこと。だから、最初にデモをもらったとき、ちょっと怖かったんです。あまりにも自分が「「SYM-BOLIC XXX」」を作っているときに考えていたことと合致しすぎていて。
──怖かったというのは?
VALSHE:“これはさすがに言っちゃいけないだろう”って蓋をしていた部分があまりに赤裸々に描かれている。自分の目にはそう映ったので、最初は“VALSHEがこれを歌っていいのかな”って。近い感覚を持っているからこそだし、焚吐しか書けないだろうなと思ったので、託して良かったなと今は思います。
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