【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.61「大失態」

やっちまった。やってしまいました。致命的な大失態を演じてしまったのです。前作「異次元からの咆哮」に収録されている「痴人のモノローグ」のメインリフで、知らず知らずのうちに他人のものとそっくりなリフを使ってしまったのです。元はJUDAS PRIESTの「Stained Class」に収録された「Saints In Hell」という曲です。今までも誰かの曲に似た感じのものは多々あり、自分の中で「このくらいはOK」と判断していましたが、この件に関しては完全に「アウト」です。イントロのギターだけでなく、それに絡むドラムまで同じパターンなのでたちが悪いです。もちろん意識してのことではないのですが、これは「パクリ」と言われても仕方ありません。和嶋くんとノブくんに謝り、この曲は封印することに決めました。特に和嶋くんには、せっかく苦労して歌詞をつけてもらったのにこの有様ですから申し訳ないことです。そして「Saints In Hell」の作曲者であるGlenn Tiptonさん、Rob Halfordさん、K.K.Downingさんに深くお詫びいたします。


この事実に気付いたのはごく最近のことです。DOWNLORDフェスでのJUDAS PRIESTのセットリストに、見慣れない曲があるなぁと思い聴いてみたのです。イントロが流れて凍りつきました。ずーんと心が重くなり、青ざめてしまいました。「リフの四分の一は違うけれども四分の三は同じだ」とか、何度か聴いて分析してみたりしましたが、パクってしまった事実が薄れるわけもなく、やり切れない気持ちでいっぱいになりました。東京オリンピックのエンブレムに盗作疑惑が持ち上がったことをふいに思い出して、あの作者もこんな気持ちだったのかなぁと想像してしまいました。自分で考えたつもりが、潜在意識の中から引き出しただけのものであると判り、自身の創造力の欠如に愕然とするのです。時間を巻き戻せたらと考えることがよくありますが、今回は心の底からそう思います。2年前の自分にそのリフはまずいよと教えてあげたい。「覆水盆に返らず」ということわざが心に響き渡ります。不幸中の幸いは、「痴人のモノローグ」が発売直後の数回しか演奏されなかった、アルバムの「捨て曲」であったことです。

こんな風に深く落ち込んだ時は、プログレでも聴いて穏やかな時間を過ごそうと思って棚から取り出したアルバムはGONGの「You」です。スペイシーな音楽ですが、バカテクで、特にドラムとベースは驚異的です。いろいろな楽器がファーン、ファーンと鳴っていますが、自分の耳はドラムとベースだけを追いかけています。ジャズのような即興演奏にも聴こえますが、計算された実に緻密な演奏です。目を瞑って心静かにアルバムの世界に浸ります。電車に乗ってスマホで聴いていると乗り過ごしてしまう可能性があるので注意して下さい。

あまり落ち込んでいるとツアーの演奏にも影響するので、気を取り直して何事もなかったかのように過ごしていきます。今後ともよろしくお願いします。パチンコ屋に行ってマリンちゃんになぐさめてもらおうかな。ふぅ～（深い溜め息）



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