【インタビュー】榊原ゆい、初のアコースティック盤完成「“せーの”で録った奇跡のサウンド」
■イメージは“ピアノを弾く榊原ゆい”
■実は私、ピアノ弾けないんですけど(笑)
──続いて「STAR LEGEND」です。
榊原:これはメンバーが一番苦戦した楽曲です。もともと音数の多い楽曲なので、それをアコースティックアレンジするのがとても難しかったんですよね。でも、この曲に関しては、私がどうしてもアコースティックでやりたかったんですよ。ライブの定番曲だからこそ、というのもありますし、「この曲をアコースティックで演奏するの!?」と驚いてほしかったですし。なのでそこはメンバーの腕に任せました。「これ、やりたいですけど~」って投げっぱなしで(笑)。
──定番曲をアコースティック。なかなか冒険ですねえ。
榊原:でも、やっぱり楽しかったですよ。歌いなれているからこそ、新しいアレンジで歌うというのはチャレンジだし、ライブの醍醐味でもあるし。ダンス曲を踊らずに音だけで楽しんでもらうというのは新鮮でしたし、新しい「STAR LEGEND」を作り出せた楽しさもありましたね。アコースティックがドンピシャでハマりましたし、ライブでも皆さんに驚きと楽しさを感じてもらえました。原曲とは違う、生の音を味わう楽しさがちゃんと生まれたなって思いました。
──そして「片翼のイカロス」が最後の曲です。
榊原:これは欲しいでしょう(笑)。私の代表曲でもあるし、みんな大好きだし。しかもアコースティックが映える曲だし! だから入れないという選択肢はありませんでしたね。実は4年前のツアーの東京公演で、「片翼のイカロス」をアコースティックっぽいアレンジで演奏したんです。その時の演奏はもちろん、私が口笛を吹いたのもむちゃくちゃ好評だったんですが(笑)。その時から、「アコースティックバージョンをCDに残したい」とはずっと思っていたんです。なので、この機会にレコーディングしよう、となりました。もちろん私の口笛も入っています(笑)。
──榊原さんの口笛はプロレベルと言われていますから(笑)。
榊原:それを見つけてくれたのもバンドメンバーなんです。それまでは特技というか、人より吹けるかな?ってくらいにしか思ってなかったんです(笑)。でも「片翼のイカロス」をアコースティックでやるときに、鳴り物が足りないってなって……。バンドメンバーがパーカッションの田中さんに「オカリナ吹けないの?」「吹けないよ!」ってやり取りを見ていて、私が「口笛なら吹けるよ」ってサンプル音源を送ったら、「これは世界大会に行けるレベルだ!」となってバンドメンバー全員から大絶賛(笑)。それが今回のアルバムで音源として残すことができました。まあ、そんなこんなで、「片翼のイカロス」はなくちゃダメでしょ!ということですね(笑)。
──そんな「片翼のイカロス」のエピソードをお聞きした後に、ボーナストラックの「Honey」なのですが、こちらは“Acoustic Yui Whistle Ver.”とありますね(笑)。
榊原:これ、レコーディング2日目に偶然生まれたんです。レコーディング中にパーカッションの田中さんの機材が壊れるというアクシデントがあって、待ち時間ができたんですよね。「だったら、「Honey」の口笛バージョンとか録っちゃいます?」ということで、チャチャっと録音したのを、ボーナストラックとして収録しました。本来はボーナストラックを入れる予定はなかったので、リリース情報の修正やらポスター印刷の修正やらを急いでしてもらいました(笑)。この「Honey」が気に入った方は、パーカッションの田中さんに感謝してください(笑)。
──ボーナストラックまでを含めて11曲。かなり聴きごたえのあるアルバムになっています。
榊原:じっくりと、音を楽しみながら聴いてもらう。そんなアルバムになっていると思います。今回、私もメンバーもめちゃくちゃこのCDが気に入っているんですよ。全員とにかくレコーディングが楽しかったみたいで。やっぱり音楽をみんなに楽しんでもらうには、まずは演奏する側が楽しまなくてはダメだと思うんです。それが伝わるといいな、と思っています。
──ライブに近い形でのレコーディングというのも、魅力になっていますよね。
榊原:そこもレコーディングが楽しかったところですから。みんなで「せーのっ!」で録った奇跡のサウンドを、ぜひぜひ聴いてほしいんですよ。生っぽい良さをすごく感じてもらえると思います。
──これまでも榊原さんの歌声をゲームやアニメの主題歌なので聴いているからかもしれませんが、榊原さんのヴォーカルも、とてもアコースティックサウンドに合っているように思いました。
榊原:新曲をレコーディングするときは、テイクを重ねて完成度を高めていくのですが、『LOVE×Acoustic Vol.1』では何度も歌ってきているからこそ、スッと歌うことができたんです。もちろん「そうしよう」って言ったのは自分なんですが、実際にやってみて「想像していたものよりもいいものができた!」って思いました。これまでずーっとライブを重ねてきたこともあるし、歌が好きで、20年以上歌い続けてきて、様々な経験を重ねてきて、それがあるからこそこの形でできたアルバムなんだなと感じています。
──そんな中で、『LOVE×Acoustic Vol.1』のレコーディングで気を付けた部分を教えてください。
榊原:私はブレスも歌の大事な要素だと考えているので、普段から気を使ってレコーディングしているのですが、『LOVE×Acoustic Vol.1』ではいつも以上に気を遣いました。生っぽさという雰囲気を大事にしたかったので、楽曲の雰囲気を壊すようなブレスが入って、そこに手を加えるようなことはしたくなかったんです。なので楽しみながらも、耳障りなブレスが入らないように、ブレスが入った時はちゃんと意味のある息であるように、息遣いも音として気を付けています。聴いた人に心地よく聴いてもらえるように、と。今回は音数が少ないしできるだけ生な音で届けたかったからからこそ、特に気を付けました。実は口笛の時もブレスの音が入りすぎないように、ほぼ音を入れずに息を吸っています(笑)。そんなこだわりがたくさん詰まっているので、しっかりと音に浸ってもらえるアルバムになっていると思います。
──そして榊原さんのアルバムと言えばジャケットのアートワークです。今回はどのようなイメージなのですか?
榊原:“ピアノを弾く榊原ゆい”──実は私、ピアノ弾けないんですけどね(笑)。これまでと雰囲気が違うのはロングドレスですね。私は踊るので、なかなかロングドレスって着られないんですよ。でも、今回はアコースティックだから踊らないし、ロングドレスを着よう、と。そのときイメージに合ったのが『美女と野獣』で……。私、大好きなんですよ(笑)! なので「『美女と野獣』のイメージにしたい!」と思って、黄色のシンプルなドレスにしました。黄色っていうのも今まであまり使わなかったメインカラーなんですよね。だからこれまでのジャケットとは、またイメージの違うものができました。発表したときに、ファンの方からはとてもいい評判をいただいたので、嬉しかったですね。
──では、『LOVE×Acoustic Vol.1』アルバムのイメージと、榊原さんの趣味の融合なんですね。
榊原:そうですね(笑)。「ドレスを着て、ピアノを弾いている雰囲気で」というイメージありきでスタジオも探しました。そしたらとても雰囲気のいい、レトロな感じのアップライトピアノがあるスタジオがあったんです。まさに私のイメージした通りのジャケットになりました。
──そしてこのアルバム、“Vol.1”と入っていますよね?
榊原:バンドメンバーにも、そこを突っ込まれました(笑)。これは直感で付けました。きっと聴いた方が「ほかの曲もアコースティックで聴いてみたい」と思ってくれるCDになると思ったし、バンドメンバーとのレコーディングも楽しかったし。そういう手ごたえがあったので、「“Vol.2”を出せればいいな」という思いも込めて、“Vol.1”とつけました。
──期待しています。それでは最後に、ファンにメッセージをお願いします。
榊原:メンバー全員で同時録音した、生の音を楽しんでもらえたらいいなって思っています。ライブのフィーリングを大事にしているアルバムなので、ちょっと音を外した程度のところは、あえて直さず、残していたりもするんです。そういうところも含めて、アコースティックならではの味わいを楽しんでもらえたら嬉しいです。
──ライブにも期待してしまいます。
榊原:このアルバムを楽しんでいただいた皆さんからリクエストがあれば、ライブでもまたアコースティックをやりたいですね。みなさん、ぜひ今回のアルバムを楽しんで聴いてください!
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