マルシア「私はどうしてここに?」由紀さおり、坂本冬美、城田優ら豪華ゲスト参加の30周年記念ライブが2ヵ月連続放送
マルシアのデビュー30周年を記念し、東京・Billboard Live TOKYOで開催されたライブ<マルシア Debut 30th Anniversary Kick Off Live~私はどうしてここに?~>が5月と6月にCS「歌謡ポップスチャンネル」で放送される。
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六本木にあるBillboard Live TOKYOというのはちょっと特別なライブハウスで、知っているはずの歌手でもそのステージで見ると「こんな歌手だったのか!」と新たな魅力を発見してしまう……ということが時々起こる。歌謡ポップスチャンネルで5月と6月に2ヶ月連続放送される「マルシア Debut 30th Anniversary Kick Off Live~私はどうしてここに?~」は、まさにそういうタイプのライブである。
このライブは、タイトルの通りマルシアのデビュー30周年を記念したライブなのだが、しかし彼女は歌手一筋でここまで来たわけではない。「ふりむけばヨコハマ」でデビューし、歌謡曲の歌手として活動をスタートさせた彼女は、その後テレビタレント、俳優、ミュージカル女優など、さまざまに活動のジャンルを広げてきた。芸能活動ばかりではない。1年以上活動を休止したこともあった。
そうして30周年を迎えたマルシアが自身の過去を振り返ってたどりついた境地が、「私は歌手である」ということだった。
ブラジルでの歌謡選手権を勝ち抜き、ブラジル代表として日本の大会に出場したところ、作曲家・猪俣公章にスカウトされ、歌手を目指して日本に移り住むことになった17歳のマルシア。ライブのタイトルにある「私はどうしてここに?」には、その時の思いが込められているのかもしれない。
ライブは、1st Stage「私を育てた歌謡曲~ブラジルから日本へ~」と、2nd Stage「~ミュージカルからスタンダードナンバーまで~」の2部構成。彼女の歌手としてのルーツから現在進行形の姿までを、歌を通じて追体験できる構成になっており、彼女の活動に関わってきた多彩なゲストも登場する。
1st Stage「私を育てた歌謡曲~ブラジルから日本へ~」で見せるのは、「歌謡曲歌手・マルシア」。歌謡曲を歌うマルシアなら、テレビでたびたび見かけたことはきっとあるだろうし、視聴者がもっともイメージしやすいマルシアのはず……なのだが、1曲目の「見上げてごらん夜の星を」でそのイメージが更新されてしまう。高らかに歌い上げられることの多いこの曲を、マルシアは優しく包み込むようなボーカルで歌うのである。ささやかな声の中にも微妙な抑揚の変化があるマルシアの歌唱を聴いた者は、彼女が本当に「歌手」であるということを印象付けられるに違いない。
由紀さおりを迎えての「夜明けのスキャット」では、由紀の透明感あるボーカルに、マルシアもまた透明感のあるボーカルでハモリ、原曲以上の奥行きを感じさせるデュエットを披露する。続く「ふりむかないで」「待つわ」「白い色は恋人の色」も、やはりハーモニーに特徴のある曲。心地よいゆらぎを感じるひとときとなった。
マルシアが猪俣公章の家に弟子として住み込んでいた時代から30年以上のつき合いとなる姉弟子・坂本冬美とは、猪俣との思い出を語り合い、生前、猪俣がよく歌っていたという「君こそわが命」を歌う。同門の弟子でありながら意外にも同じステージに立つのは初めてだという二人が、成長した姿を師に見せつけるかのように、あるいは今までの感謝を込めているかのように、気持ちたっぷりに歌い上げる姿には思わず涙を誘われた。
ゲストなしのソロパートでも、猪俣公章から「歌のお手本にしなさい」と言われていたテレサ・テンの曲から「空港」を、テレサにも引けを取らぬほど哀愁たっぷりに歌うなど、歌謡曲歌手として原点にかえるどころか、むしろデビュー時よりも大いに成長した姿を見せるマルシア。ここからステージは思わぬ方向に展開していく。
東京スカパラダイスオーケストラのホーンセクションが登場し、自身のルーツに深い関わりのある美空ひばりの「リンゴ追分」を披露。伸びのある低音をきかせながら、お岩木山の情景をじっくりと浮かび上がらせるように(ほぼ原曲のテンポで)歌い上げたかと思ったら、2コーラス目でスカバージョンに突入。北国から一気に南国にふっとばされたような感覚を覚えた。マルシアの30周年ライブであれば、彼女のデビュー曲にして代表曲「ふりむけばヨコハマ」を歌うのは誰でも予想できるだろうが、まさかここでスカパラアレンジで歌われたのは完全に予想外。何度も聴いているはずなのに、初めて聴いたかのように情熱的な「ふりむけばヨコハマ」だった。
2nd Stage「~ミュージカルからスタンダードナンバーまで~」で見せるのは、「ジャズ歌手・ミュージカル歌手としてのマルシア」。衣装の雰囲気もガラリと変わり、1st Stageが「静」とすれば、2nd Stageは「動」といった感じのステージを展開していく。
1st Stageの中だけでも、歌手としてさまざまな引き出しがあることを見せつけたマルシアだが、2nd Stageの1曲目「CABARET(キャバレー)」はそのどれとも違った力強さがあって、歌い方はもちろんのこと、リズミカルな身のこなし、表情に至るまで別人のようなモードになっていた(実際、1st Stageでは何度も泣き出す場面があった)。
東啓介と共に披露した「Dangerous Game〜罪な遊び〜」は、ミュージカル『ジキル&ハイド』の劇中曲。演劇の要素も入っており、特にクライマックスでブレスをいっぱいにきかせたシャウトの後、二人で見つめあうシーンの張り詰めた緊張感が素晴らしかった。
力強いボーカルが魅力の城田優とは、「My favorite things」の間奏でのほとんど「バトル」と言ってもいいようなスキャットの掛け合いが見もの。それにしてもマルシア、リズム感の回路をいくつ持っているのか。披露してきた楽曲のテンポが違うというだけでなく、歌の世界への没入の仕方も曲によってまったく変わってくるのがマルシアの魅力の一つなのかもしれない。
と思っていたら、次に登場したのはJAZZアカペラグループ・BROAD6。マルシアは彼らとアカペラの名曲「Tom’s Diner」を歌うのだが、なんと本格的にアカペラを練習したのは彼らと出会ってからなのだという。なのに彼女は、BROAD6のボーカルの中を泳ぐようにしてのびのびと歌っている。そして2nd Stageでの「ふりむけばヨコハマ」はアカペラアレンジで歌われたのだった。
1st Stage、2nd Stage共にラストを飾るのは、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦が作詞、元THE BOOMの宮沢和史が作曲をつとめたマルシアにとって10年ぶりの新曲「ALEGRIA(アレグリア)」。平成元年にデビューし、平成の終わりに30周年を迎えたマルシアが、「本気と勇気と元気で臨めば奇跡も起こせる」というメッセージを込めた新しい時代へ一歩を踏み出すような曲になっている。
「マルシア Debut 30th Anniversary Kick Off Live ~私はどうしてここに?~」は、1st Stageが5月4日(土・祝)放送、2nd Stageが6月9日(日)に放送。歌手マルシアを再発見できるライブをぜひ体感してほしい。
写真◎コスガ聡一 文◎前田隆弘
「マルシア Debut 30th Anniversary Kick Off Live~私はどうしてここに?~」
5月4日(土・祝)後6:00〜7:30 ほか
歌謡ポップスチャンネル
ゲスト/由紀さおり 坂本冬美 東京スカパラダイスオーケストラ(NARGO 北原雅彦 GAMO 谷中敦)
・2nd Stage「~ミュージカルからスタンダードナンバーまで~」
6月9日(日)後8:00〜9:30 ほか
歌謡ポップスチャンネル
ゲスト/東啓介 城田優 BROAD6