【インタビュー】memento森、恐るべきバリエーションを持つ刺激的ミクスチャー・サウンドのダブル・インパクト
■せっかく与えられた人生だから思いっきり遊び尽くそうぜ
■無理して頑張るくらいだったら嫌なことはやめればいい
――ラストの「Walk,」もいいです。非常にドラマチックな別れの歌。じんときました
宮地:1曲目の「MAY」が生まれるというイメージの曲だったんで、死で終わりたいなと。リピートしてもらえばまた生へと戻っていくという形になっています。
――おお。それは最初から意図して?
宮地:というよりも、「Walk,」が先にできていたんですよ。最初は「AKATSUKI」が1曲目のつもりで、メンバーが替わった頃にできた曲なので「これからやっていくぞ」ということだったんですけど、もっとイントロデュース的な曲がほしいと。「AKATSUKI」が始まりの曲なら、「MAY」は生まれる前かなと思って、これから生まれるという歌詞にしました。別にコンセプチュアルなアルバムではないですけど、頭とケツは合わせたいという気持ちはありました。
――生と死というのはまさにアルバムを貫くテーマだと思っていて、ざっくり言うと、生きているというこの奇跡の中でどれだけ楽しんで生きられるかを歌ってるじゃないですか。人生を遊ぼうぜというのは、それなりの経験をくぐってきた人が歌うと届くわけですよ。
宮地:逆に10代や20代の頃は、何してんねん系のメッセージが多かったんですよ。自分に対しても「やれよ!」と言う歌が多かったですけど、メンバーが替わって自分の中で音楽の向かう方向が変わった時に、それこそTHA BLUE HERBやBRAHMANのような先人たちにものすごい憧れを抱いていたんですけど、そういった先人たちになれるか?といったら、自分は無理だなと。もっと低俗なことで思い悩んだりするし、「まいっか。明日にしよう」みたいなところがあるんで。であれば、許しのヒーローになりたいというか。
――おお。なるほど。
宮地:ここまでやってきたけど、駄目なら仕方ない。でもせっかく与えられた人生だから、思いっきり遊び尽くそうぜという、無理して頑張るくらいだったら嫌なことはやめればいいし、というところになってきたことは、明確に今回のアルバムに出ていますね。
――出ていますねえ。
木原:それは当初から、memento森という名前で、ずっと変わってないですね。
宮地:memento mori=死を思え、ということなので。mementoには記憶という意味があるので、ラテン語の「死を思え」もそうですし、「記憶の森」に迷い込むという、過去と現在のグチャグチャなところにいるという意味もあって。自分の中ではずっとそうですね。やり直しがきかないけど、振り返ってクヨクヨしたりもするし、でも振り返りがなければ今は存在しない。ずっと不安定なんですけど、「不安定でよくないか?」とか、異常であることが正常なんじゃないか?とか。そういうところはずっとあります。
――わかります。ずっと安定なんて、逆にありえない。
宮地:逆に、気づかないのかな?と思っちゃいます。現状に不安で「私、頑張らないと」と思ってる人に対して、異常であることが正しい状態なんだから、頑張れば解決するわけじゃないだろうとか。そういう考え方は、今回、より濃く出ましたね。
――いいリリック満載なので。パンチライン大賞決めましょうよ。
宮地:どれでしょうね(笑)。思い切り考えて書くこともありますけど、ほとんどが何も考えずにワーッと書くんですよ。バラバラに書いたり、何回も書き直したりするんですけど、読み返すとテーマが一貫してる。よかった、ブレてなかったなってあとから気づくことが多いです。
――木原さんが好きなリリックは。
木原:僕は「THYME」が好きです。10年やってきたからこそのリリックだと思うんですよね。前のメンバーが抜けて、これからどうなるんだろう?と思って、でも続けていって今がある。そういう気持ちも入っていますし。
宮地:めちゃくちゃポジティブなレクイエムですね。抜けたメンバーに対してもそうですし、過去に自分が切ったメンバーに対してもそうですし、その決断をした自分に対してもそうですし。今まで一緒にやってきたバンドの仲間もそうだし、もう解散してるバンドに対しても。
――「もうここに居ない人も皆元気でやってるか。こっちは変わらず歌ってるわ」。本当にいいフレーズ。
宮地:そこは明確に、今まで出会った人の顔を思い浮かべて書きました。そこの一筆は重かったです。もう来なくなった人への肯定なんで。
――ああそうか。もう来ないお客さんに対しても歌っている。
宮地:本当は悔しいですよ。六人編成の時に来ていて、その後来なくなったお客さんもいっぱいいるんで。でもその人たちを肯定する覚悟をその言葉に込めました。あとCメロの、「あまり望みは多くない/強いて言やこの生活も悪か無い」も、本音だったりします。
――沁みますねえ。
木原:メンバーが一番感動しました。この曲は。
宮地:「想 she 装 I」と「THYME」が続いてるのが結構大きくて。この2曲がアルバムの中で特にリアルなんですよ。「想 she 装 I」は自分の恋愛の失敗を描いていて、今まではそれを比喩表現に包んできたんですけど、むちゃくちゃリアルに書いています。「THYME」は自分の弱音も入ってるし、見せたくない部分なんですけど。
――リリックは堀り甲斐があるんですけどね。ここから1時間かかるんでやめときますけど(笑)。
宮地:うれしいです。リリックについて言ってもらえるのは。
――さあ、この歌たちがどんな人たちに響く、響いてほしいと思いますか。
宮地:そこなんですよね。でもたぶん一番明確なのは、自分たちの同世代を中心に、20代前半から40代くらいまでの人たちかなとは思っています。似て非なる葛藤がみんなにあると思うんですよ。20歳になる時、25歳を超える時、30代になる時、40代になる時とか、節目を超える時にはみんな葛藤があると思うし、そういう人たちに響くといいなと思います。もちろん若い子たちに聴いてもらいたい気持ちもむちゃくちゃあります。メロディやノリだけで聴いてもらってもいいですけど、「昔聴いてて、今聴くと全然違って聴こえる歌」とか、そういうふうになったらなおうれしいです。
――ヘタレのヒーロー。とか言うと失礼かな。
宮地:いや、でもそうなりたいと思います。それが正解です。一番信じられるじゃないですか。調子がいい時は、過去のロックスターや偉人が言った言葉に「その通り!」とか思いますけど、一番駄目になってヤバイ時、そばにいるツレとか、自分同様に駄目な奴が言ってくれた一言が異様に沁みたりする、その言葉で自分は生きてこれたと思うので。そういう位置にいたいですね。自分の中で「まだ行ける」と思ってやっているんで。
――最高です。ツアーも楽しみにしています。
木原:もう始まってるんですけど、来年4月頭まで全国を回ります。3月31日に心斎橋Pangea、4月5日が下北沢SHELTER、これが10年やってきて初めてのワンマンなので、すべてを詰め込もうと思っています。で、ここまでいろいろしゃべってきたんですが、結果、僕はmemento森は冗談だと思ってるので。楽しくしたいし、シリアスに考えてきた変遷もあるんですけど、今はただただ楽しく聴いていただきたいなと思います。
宮地:ムチャクチャ真剣なギャグなんです。人生は喜劇ですから。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
2018.12.12 Release
EXXREC-0022
2,400 円( 税別)
【曲目】
1. MAY
2. 5o What!
3. FLICK
4. AKATSUKI
5. 想 she 装 I
6. THYME
7. 量子テレポーテーション
8. LOSS
9. 日月禍
10. Know No Know
11. YES
12. Walk,
ライブ・イベント情報
<2019年>
01/16(水) 福岡Kieth Flack
01/17(木) 広島4.14
01/24(木) 高松TOONICE
01/25(金) 京都GROWLY
02/01(金) 新潟CLUB RIVERST
02/03(日) 千葉LOOK
02/04(月) 北浦和KYARA
02/06(水) 名古屋ROCK'N ROLL
02/15(金) 水戸SONIC
02/16(土) 仙台FLYING SON
03/03(日) 岡山PEPPERLAND
03/09(土) 札幌SPIRITUAL LOUNGE
03/24(日) 金沢 GOLD CREEK
●ワンマン公演
03/31(日) 心斎橋Pangea
04/05(金) 下北沢SHELTER
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