【インタビュー】DOTAMA、壮大な進化を遂げるスーツに眼鏡のラッパーが作り出したミニ・アルバム『MAJESTIC』
■タイトルは、壮大(MAJESTIC)な進化を遂げている”という意味
■2018年の活動をまとめた7曲なので一番ふさわしい気がします
――自伝『怒れる頭』で「近年は後輩をフックアップしたいと思っている」と書いていらっしゃいますね。それは、アーティストとしてのアイデンティティが確立できたという意識が生まれたから生まれた思いなのでしょうか。
DOTAMA:まだまだ何も成し遂げられていないのですが。ヒップホップでは、自分の生まれ故郷をREP(REPRESENT)する、自分が生まれ育ったストリートや生活のリアルを歌うというマナーがあります。でも正直、自分のスタイルは異端だったので、故郷で活動しているときは、満足いく支持が得られず、仲間もいなかった。もちろん自分の力不足もあります。それに、それは僕だけの話ではなくて、どこの地方の音楽シーンでも、ヒップホップに限らずそういうことはあると思うんです。思うように先輩に応援してもらえなかったり、周りの環境そのものが敵になってしまうときもある。でも、自伝のタイトル『怒れる頭』の通り、自分は怒りをモチベーションにして頑張ろうと思って、それを歌にしてきたんです。その後、皮肉なことに東京へ飛び出して数年経ってから、テレビに出させていただいたりして、地元にも温かく迎えてくださる方が増えたんです。そのことにすごく感謝していて、自分がやってもらえなかったことをやりたいなという意味で、思うところがあって「後輩をフックアップしたい」と書きました。
――現在は、故郷のPR大使を務めるまでになったわけですよね。
DOTAMA:はい。栃木県佐野市のPR大使「佐野ブランド大使」に任命されています。市役所さん曰く、「普通にご自身の音楽活動をしていただければ大丈夫です」と言われているんですが、それだけじゃ流石にもったいないので、先日音楽番組の収録のときには、佐野市のお菓子屋さんが作ったいちごタルトと、カルビーさんとコラボした「いもフライ味」(「いもフライ」は佐野市発祥のおやつ)のポテトチップスを持って行かせていただきました(笑)。先ほどもお話したように、ラッパーは自分の育った場所を歌うというのは普通のことなので、今回収録されている栃木県佐野市公式PRソング「MY CITY」の前にも、「栃木のラッパー」「栃木のラッパー2」を歌っていて。大使に任命される前から、お仕事という感覚よりも日常的にやっていたことではあります。
――「MY CITY」は非常に優しい曲になっていますが、一方で「冷血」は、故郷への愛憎入り混じった感情も伺えます。
DOTAMA:故郷というよりは、都会暮らしの鬱屈を歌にしました。
――“おまえの嫁はブス”なんて、普通は絶対言えないですよね(笑)。
DOTAMA:(実際にラップ調で)“年収300万以下の男は男じゃねえ 反論できない俺はクズ これでも頑張ってる30代 出身は同じ学部 けれども天地の差の収入 おまえが勝ち組で認める けれどもおまえの嫁はブス”。今のが一番の歌詞で、二番はよりドメスティックな、ミュージシャンの悲哀を歌っています。前作『悪役』のタイトル曲が、“どいつもこいつもクソったれ 御託を並べまくるクソだらけ”という、ひどいサビなんですけど(笑)、そういうネガティブな本音をぶちまけた曲が『悪役』は多かった。そのときのテンションの延長で作れた曲です。ビートは自分です。人間は自分が上手くいかない時、どうしても人を貶めたくなる。ただ、そんな人へ向ける悪意が自分に向けられたらどうなるか。そんな攻撃し合いの空しさを、ビートの哀愁に込めました。
――「フリースタイル全部 feat.ゆるめるモ!」は、ゆるめるモ!のシングル『HIPPY MONDAYS EP』(2018年5月9日リリース)に収録された曲のリミックスですね。ゆるめるモ!とは、以前に「木曜アティチュード」の作詞をされたり、対バンしたりと、交流がありますね。今回、この曲をリミックスで収録したのはどうしてですか。
DOTAMA:ゆるめるモ!さんとは、自分が上京したばかりの頃からお付き合いがあって。まだスタートしたばかりのゆるめるモ!さんのステージを、青山のライブハウス「月見ル君想フ」で観たり、歌詞提供をさせていただいたりしていたんです。「フリースタイル全部」は、今年の初めに、一緒に曲を作らないかというお話をいただいて、またニュアンスを変えたものを作れたらと思って、ビートメイカーのTomggg(トムグググ)さんにお願いして、最高に素敵な感じに仕上げてもらえたと思います。この場を借りて、ありがとうございました。
――この曲は、歌詞がすごく良いですよね。
DOTAMA:歌詞は、ゆるめるモ!のプロデューサーさん(田家大知)と、彼女たちの意見も取り入れつつ、作らせてもらいました。自画自賛なんですけど、「原曲すごく良いんだよなあ」と思っていて(笑)。これは、もっとどんどん広がって良い曲だと思っています。
――歌っている内容は、ゆるめるモ!のコンセプトである、「つらいことがあれば逃げてもいい、生きづらさをゆるめよう」っていう一貫した姿勢が表れていると思います。ゆるめるモ!のそういうところが、DOTAMAさんの感性とフィットしているのでしょうか?
DOTAMA:30歳過ぎのおじさんラッパーが、こんなことを言うのはお恥ずかしいんですが、作風のベクトルは全然違えど、ゆるめるモ!さんの、ああいうアイデンティティが自分と近いのかなと思います。田家さんとも話したんですけど、彼女たちはアイドルというくくりではあるけれども、そこにはこだわっていないと仰っていて。<フジロック>にも出たいし、フェスでもバンドさんにも引けを取らずにガンガン盛り上げていく。ガッツを持っている。自分も1MC1DJのラッパーではあるんですけど、「社交辞令」という定期イベント(2マン企画)で、様々なミュージシャンの方をお招きしてライヴをやらせてもらっていて、そのマインドはすごく近いのかなと思います。それに、作曲に対するアティチュードも近いのかなって思っています。
――ゆるめるモ!とは「社交辞令Vol.5」でも共演していますが、今作には「社交辞令Vol.3」で共演した関取花さんも「インターステラー feat.関取花」で参加していますね。
DOTAMA:「社交辞令」で対バンしたアーティストの方々は、全員と曲を作りたいくらい大好きなんですけど、今回、タイミングが合ってご一緒できたのが関取花さんでした。この「インターステラー」は、関取さんの歌声の素晴らしさで持っていっていただいた、最高の曲に仕上がっています。
――どちらに寄せているというわけでもなく、すごく良いデュエットになっている印象を受けました。
DOTAMA:ありがとうございます。関取さんは普段はご自身で作曲をされて、アコースティック・ギターで歌っていらっしゃるので、こういう打ち込みのヒップホップのトラックで歌ったことがあまりないと仰っていました。それで結構心配されていたんですけど、全くそんな心配はなくて。それと、今作の半分以上の楽曲をプロデュースしているRhymeTubeというビートメーカーがいるんですけど、彼が本当に辣腕で。すごく良いビートを作ってくれたので、本当にもう「ありがとうございます!」という感じで(笑)。RhymeTubeの天才っぷりが発揮されています。
――「READY feat.SAM,DJ YU-TA」もRhymeTubeさんのトラックですね。SAMさん、DJ YU-TAさんとはずっと一緒にやっていらっしゃるんですか。
DOTAMA:そうです。DJ YU-TAは僕とライヴを一緒にやっていて、SAM君は地元の栃木県の後輩です。グライムというジャンルのビートで、小刻みにマイクリレーをしていて、ハードでスリリングな曲になったと思っています。
――2019年1月から福岡、愛知、宮城、東京の4都市を回る『MAJESTIC』リリースワンマンツアーが行われますね。DJ YU-TAと二人での“緻密に練り上げた2時間を超えるステージ”とアナウンスされていますが、どんなライヴになりますか。
DOTAMA:色々な仕掛けを考えています。ツアーファイナルの東京公演(2019年2月17日(日)渋谷duo MUSIC EXCHANGE)は、今作に参加していただいたゲストの方たちをお招きしてやろうと考えています。でも地方でのライヴも、そこでしか見れないものをやろうかなって、色々練っているところです。
――改めて、今作に『MAJESTIC』というタイトルをつけた理由を教えてください。
DOTAMA:“壮大(MAJESTIC)なる進化をとげている”という意味で、このタイトルをつけました。2017年の年末に「ULTIMATE MC BATTLE」に優勝してから、本当にありがたいことに色んなことにチャレンジさせていただいていて。2018年は、自伝を出させていただいて、地元のPR大使もやらせてもらって、先月からはFM栃木さんでラジオ番組をやらせてもらっています。去年もドラマや舞台に出演させていただいて、未知の領域のお仕事をさせてもらっていたんですけど、今年はより踏み込んだ範囲のお仕事をさせてもらったと思います。それは本当に、手前味噌ですが、自分の“MAJESTICな進化”だなと思っているんです。それを2018年12月に真空パックした7曲だから、『MAJESTIC』というタイトルが一番ふさわしいんじゃないかなと思って、このタイトルをつけました。
――ジャケットもまさに、進化の途中が描かれていますね。
DOTAMA:これは、「トトト」さんという、アートディレクションチームに作っていただきました。壁を乗り越えて先に行こうする、自分が表現されたジャケットです。
――壁を越えた先のDOTAMAさんは、これからどこに向かいますか?
DOTAMA:やっぱり、楽しんでもらえることが大事だと思っています。制作スピード以上に。結構早いタームで作品を出させてもらっていて。去年の夏にシングルを出してから数か月でアルバムを出して、さらにそこから9ヶ月で今作を出した。でも、その度に良いものを出さなければならない。そこは常にプレッシャーです。良いものというのは、カッコイイのもそうなんですけど、新しいもの、「すごい」と思ってもらえるものを作らなければいけない。それは常に意識していかなければと思っています。
――ミュージシャンには定年がないですもんね。ひたすら続けていってほしいです。
DOTAMA:それもお客様ありきだと思っています。楽しんでもらえるものが作っていけるよう、全力でがんばります。
取材・文●岡本貴之
リリース情報
2018年12月5日発売
sube-065 2,000円+税
1.働き方改革 pro by DOTAMA
2.MY CITY pro by RhymeTube(栃木県佐野市PRソング)
3.音楽ワルキューレ3 (MV ver.) pro by RhymeTube
4.READY feat. SAM、DJ YU-TA pro by RhymeTube
5.フリースタイル全部 feat.ゆるめるモ!(Tomggg remix)
6.冷血 pro by DOTAMA
7.インターステラー feat. 関取花 pro by RhymeTube
ライブ・イベント情報
2019.01.20 SUN 福岡Kieth Flack
2019.01.26 SAT 愛知・栄R.A.D
2019.02.02 SAT 宮城・仙台enn 3rd
『ニューワンマン4』
2019.02.17 SUN 東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
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