【インタビュー】いとうせいこう「俺がラップでぶつかって悩んだことは自然なことだったんだ」

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■僕たちのやっていることは
■インターナショナルな流れ

──今日はその<UPJ6>の主催者の一人である、Ikomaくんにきてもらっているわけなんですが……。

Ikoma 僕はもともとハードコアのバンドのボーカルをやっていたんです。でも10年くらい前から自分の活動していた界隈っていうのが結構狭くて、広がりもそんなになくて全然動けなかったというところがあって……そういうところにずっといても仕方ないんじゃないかなって思ったときに、ヒップホップ周りの人たちとなにかやろうと。音楽のジャンルが違っても人間的に一緒の方向に向かえる人たちと一緒に手を組んだ方が面白じゃんっていうようなことで、2011年、“胎動”というオールジャンルのイベントを立ち上げました。割と早い段階でラッパーの友達にポエトリーっていうのがあるよって教えてもらって、遊びに行ったらどハマりしちゃったんですよね。

そこにいた演者や観客たちが、はぐれものの集まりで(笑)、外からくる人にはすごく温かいというか……。ポエトリーのシーンには身体表現の人もいれば、朗読だけの人もいるし、演劇の人もいる、芸術家の人もいるしで、全然違うジャンルから来た人同士が渾然一体としている。それがすごく濃くて面白くて。決してそんなにお客さんは入っていない(笑)。いろんなジャンルとかイベントに関わっていますが、他とは違った魅力があって、その魅力をもっと外の人たちにアピールできたらなって思ったんです。

──国内ポエトリーのシーンには、どんなチームやユニット、団体があったりするのですか?

Ikoma 日本のポエトリーシーンの先駆者でさいとういんこさんという方で、2000年に<UPJ>、2003年に<シンジュク・スポークン・ワーズ・スラム(以下、SSWS)>、2大イベントを立ち上げたバイタリティのある人なんです。いんこさんは、自分自身でも詩を読むし、オーガナイズもする人。<UPJ>は2000年と2001年に、大規模なオープンマイクイベントとして始まったんです。第3回目からは違う主催者が後を継いで1500人ほどの人が集まるようになった。そんな盛り上がりのあった2005年を経て、2009年の第4回目の開催に、僕はたまたまお客として遊びに行って。それでそこから<UPJ>としての動きがほとんどなくて、シーンにも動きがないということを感じていたときに、2015年に<ポエトリー・スラム・ジャパン(以下、PSJ)>というポエトリー・リーディングの日本の大会みたいなものができた。それは、ポエトリーの世界大会に日本人の詩人たちを送り出すための代表を決める大会なんですけど、それを始めたのが村田活彦さん。それを見て、ポエトリーのシーンにも頑張る人が出てきたんだなと思うようになりました。僕も何かできたらいいなと思った時に、<UPJ>に参加していた若い世代の1人で、Anti-Trenchというユニットの向坂くじらというアーティストーー彼女がすごく勢いがあった。ポエトリーのシーンに若い子が入ってくるって珍しいことだったので、彼女と話をしていたらすごく熱かったんです。彼女たちはエレキギターと朗読のユニットなんですけど、お客さんが失神したこともあったんですよ。

──<ポエトリー・スラム・ジャパン>の“スラム”ってどういう意味ですか?

Ikoma <スラム>は海外発祥なんですけど、詩人同士が1本のマイクを使ってするライブ・バトルみたいなもの。日本でその大会をやっているのが前出の<PSJ>という大会で、3分ずつお互いの詩を読みあってどちらがよかったかを決めるルール。

いとう つまり、詩のボクシングのストリート版だよね。

一平 勝ち負けはどうやって決めるの?

Ikoma <PSJ>の場合は、5人のお客さんに審査ボードを渡して、10点満点で点数をつける。その5人がつけた一番上の点数と下の点数を省いて、真ん中の3人がつけた点数の合計で決めるんです。

一平 それは、ヒップホップのMCバトルみたいに相手をディスったり、ディスりあったりするわけではないの?

Ikoma ディスありきではないです。詩の内容が良かった、朗読の時の声が良かったという場合もありますし、パフォーマンスが評価されることもあります。ただその基準は全部お客さんが決めます。それが今の海外と国内のポエトリー・スラムの流れですね。海外のスラムの話については、<PSJ>主催の村田さんが最も詳しい。

いとう いとうせいこうis the poet始動の記者会見のときには、ぜひ村田さんにもいろいろ喋ってもらいたい。

Ikoma 海外のスラムの映像や写真などの貴重な資料文献も豊富にアーカイブされてると思いますので、ぜひそのときには、という感じですね。例えば海外だと、川の両端にお客さんが座って川に足をつけて涼みながら、川の真ん中で詩人が朗読するなんていう光景もあります。

いとう それは見たい……面白い! 絶対に(記者会見を)やろう!

Ikoma <PSJ>で優勝すると、日本代表としてW杯に招聘されるんです。<UPJ>の代表でもある三木悠莉ちゃんは、2017年と2018年に<PSJ>で見事優勝して、パリW杯にも出場しました。

Watusi その世界大会、俺たちも来年、行った方がいいんじゃないか(笑)!?

いとう 本当ですよね、そうかも!!

Watusi いち早く、スラムのシーンは世界につながってるってことなんだね。いつからなの、そういう繋がりが広がっていったのは?

Ikoma 海外のスラムのシーンを見てめちゃくちゃ感動して帰国した村田さんが、2015年にシーンを再び活性化したことが大きくて、そういう繋がりで盛り上がってきたという感じですね。

いとう 一方<PSJ>は詩のボクシング、こっちはこっちでヒップホップと融合してストリートっぽくなったというかね。

Ikoma 2000年代にはいると、国内のヒップホップが文学に寄ってきたっていうところもあります。たくさんのラッパーたちがスラムの大会に出たことか、ヒップホップ・シーンの人たちが、ポエトリーやスラムのカルチャーに注目をしていた時期もあったんだろうなと。でもそうやってた人たちが、この10年間くらいアクションを止めていたところで、やっぱりスラムやポエトリーとヒップホップは別々の道を行くというか……あまり交わることがなくなってきたというか、そういう10年だったと思います。

いとう そしてさらに今は、フリースタイル(ブーム)からも外れたラッパーたちが、もう一度ポエトリーに戻ってきたというか……もっと自由にやりたいんだ!っていう感じでこうなっちゃった。音にのせなくてもいいっていう世界があるから。それで詩人たちは、音楽にのせないでやる(朗読する)人とのせてやる人の割合はどれくらいなの? やっぱりほとんどが音楽にのせない?

Ikoma 6〜7割くらいの人はオケは使わないですね。もちろんヒップホップと同じでオケを流したり、演奏と一緒にセッションしたりとか、もちろんそういう人もいます。

いとう やっぱりそうなるんだよな。ということは、俺がぶつかって悩んだことは自然なことだったんだ。もともとヒップホップでもラスト・ポエッツたちがニューヨークにいて、全員で合唱するっていうのから始まった。何枚かアルバムがあるけど、それがあってやっぱりラップになっていったはずなんだよ。ラスト・ポエッツを今聴くと、うわーってなると思う。まさに初期衝動みたいなものがもう1回洗い直されて、やっぱりそういうことをしよう!自由にやろう!って思う。なんか嬉しいな!

──いとうせいこう is the poetとしてのリリースは予定されていますか?

ライブ音源は、基本、全部配信したいと思っています。その日しかできないことをやるっていうのが、セッションバンドっていうかたちになっているので、わざわざ決定版を作る必要がない。むしろその時のお客の反応を含めたものがどんどん配信されて、気になってる人が買ってくれるとか。あるいはそれをカバーする人たちが現れたりするといいんじゃないかと。一時期のフリージャズっていうか、これはジャズですよ。その日に精魂込めてやった演奏が、もう小銭でもいいから売っちゃう(笑)。そう考えるとやっぱりSpotifyとかが出てきてくれてるわけで。ここまでの話でもわかるように、実は僕たちのやっていることは、インターナショナルな流れなので配信して世界に出ていけることにもなる。

Watusi だからそういうポエトリー・リーディングやDUBポエトリーのレーベルなんかもやらなきゃいけないよね。

いとう ちょっと俺たちの音源も出してくれない? レーベルとか作ってさ(笑)。

Ikoma 今、その現代詩とかの詩人たちと一緒に、実はポエトリーの朗読をメインにしたレーベルをやろうとはしていて。

Watusi 何か一緒になってだせればいいよ。

Ikoma いちジャンルとしてタワーレコードとかにポエトリーのコーナとかできたらいい。すごい何かが生まれそうですよね。理想ですけど。

Watusi 出していこう! ライブがレーベルみたいなものだから。新人アーティストとして! まとめてください(笑)。

──執筆・選曲・翻訳家の荏開津広さんが、関西でポエトリー・リーディング関連の活動をされているという話もありますが、東西というところでいうと、ヒップホップの精神的にお互い意識するところもあるんでしょうか?

いとう そういうことじゃなくて、一緒にやった方がいい。荏開津くんは一緒にやろうって言えばやってくれるはずだよ。僕がポエトリーを深めるために読んでいるような文献を、荏開津くんも読んでるみたいだし。他にも九州とかいろいろな地域にもたくさん詩人たちがいると思うし。分けたくない。抗争みたいになると小さくなっちゃうから(笑)。大きくしなきゃいけないんだからこれ(DUBポエトリーのシーン)をまず。

Watusi それは置いといて、東西戦とかやったらそれはそれで面白いけど(笑)!

いとう みんなで一緒にやりたいよ! そういう全国の勇者ども集まれ、だよ。

取材・文:Naz Chris



<NAZWA!-Saturday night warm up hours!->

2018年12月1日(土)
開演18:00/終演23:00
■会場:
Shibuya CLUB BALL
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町4-9 くれたけビル4F
TEL: 03-3476-653
■前売・当日:
1000円(1ドリンク)※当日券のみ
■出演:
DJ:
NAZWA!(Watusi+Naz Chris)
田中知之(FPM)
Live:
いとうせいこう is the poet
(いとうせいこう (Words)/Watusi (Bass)/龍山一平 (Key)

<坂田明×いとうせいこう is the poet @ 千駄木 Bar Isshee>

2018年12月23日(日)
開場 19:30 / 開演 20:00
千駄木 Bar Isshee
東京都文京区千駄木 3-36-11 千駄木センチュリー21地下1階

■出演:
坂田明、いとうせいこう、龍山一平、Watusi
■料金 :
【要予約】投げ銭制(別途チャージ500円+ドリンクオーダー)
■予約方法:
予約受付メールアドレス : barisshee@keh.biglobe.ne.jp※タイトルを「12/23予約」とし、上記アドレスに氏名(フルネーム)と人数(最大2名)をお知らせください。整理番号を返信いたします。予約は12月21日24時で締め切ります。それ以前に定員に達した場合はその時点で予約終了となります。

<いとうせいこう is the poet with 胎動LABEL>

「Live Dub Jam Vol.1」 Gold Sounds 2nd Anniversary>
2019年2月8日(金)
開場18:00/開演19:00
■会場:
Asakusa Gold Sounds
〒111-0043 東京都台東区駒形1丁目3-8 ベッコアメ浅草ビルB1F
TEL 03-5827-1234
■前売・当日:
3200円/3700円※共にドリンク代別途500円
(チケット発売日:2018年12月15日)
■出演:
いとうせいこう is the poet
いとうせいこう (Words)/屋敷豪太 (Dr.)/Watusi (Bass) 會田茂一 (Gt)/龍山一平 (Key)/コバヤシケン(Sax)

Live Dub Jam:ヤングフォース DJ:Naz Chris

◆いとうせいこう オフィシャルサイト
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