<2018楽器フェア>レポート第2弾 電子楽器編 最新デジタル&アナログ・シンセ、電子ドラムも多数登場

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10月19日(金)~21日(日)の3日間、東京ビッグサイトで開催された日本最大の楽器総合イベント<2018楽器フェア>。レポート第2弾は、「コンピューター・デジタル」エリアのデジタル楽器、コンピューター関連アイテムを中心に、アコースティック楽器の新製品も交えてお届けする。


▲会場内の天井から吊り下げられている巨大な垂れ幕。

▲広大な会場の中央には大きなステージを2つ用意。交互にさまざまなライヴやイベントが行われる。

今回楽器フェアの会場を回って感じたのは、電子ドラムの人気の高さ。各ブースには男女問わず試奏者が絶えることがなく、小学生低学年と思われる子供がプレイしている姿も多く見られた。人気の高さを反映してか、新規参入メーカーを含む電子ドラムの新製品も多数。Aerodrums(エアロドラム)というパッドを叩かずに演奏するユニークな製品も登場。デジタル、アナログ、アコースティックとも多彩かつおもしろい楽器やガジェット、関連商品を見ることができた。


▲Aerodrums(エアロドラム)はエアドラムの要領でスティックや足を動かすと、実際にドラムの音が鳴るというシステム。反射ボール付スティックと足に取り付けたマーカーの動きをカメラで認識してドラムを演奏。面倒な設置・片付けを気にせず家庭でも気軽にドラムが楽しめる。写真下の画面ではカメラの映像とCGのドラムが合成されており、シンバルを叩くとちゃんと揺れる。価格は26,000円前後。アウトレットモールの荒井貿易ブースでは販売も行われた。

▲Pearlからはコルグとの共同開発による電子ドラム「e/MERGE」が登場。パッドはメッシュヘッドの下にさまざまな形状と硬度の素材を最大6層重ね、最良の打感を実現。トリガーにはコルグWAVEDRUMの技術も使われている。音色はPearlの幅広いラインナップのドラムから贅沢に採用、エレクトロニックとワールドパーカッションはコルグのライブラリから。キック・パッドが異なる2種のコンフィギュレーションで2019年春発売予定。写真はe/HYBIDコンフィギュレーション。

▲同じくe/MERGE。こちらは標準的なキック・パッドを採用したe/TRADITIONALコンフィギュレーション。14インチのスネア・パッド、10、12、14インチのタム・パッド、14インチのハイハット、15インチのクラッシュ・シンバル、18インチのライド・シンバル、コンパクトな音源モジュールは共通。

▲malletSTATIONは、PearlとKeith McMillenの共同開発による、マリンバのようなUSB-MIDIコントローラー。USB接続でスマホやタブレット、PCと接続して使用する(電源はUSBバスパワー)。奥の列にあるグレーのカバーを剥がせば、ここもパッドとして使用可能。最低音を変更した時に黒鍵にあたるパッドの位置を替えられる仕組みだ。右にはボタンやフェーダーも備える。音源としてiPhoneとKORG Gadgetを使用して展示が行われていた。11月発売予定。

▲ヤマハのフラッグシップシンセMONTAGEのサウンドと操作性を継承した最新モデルMODXが登場。AWM2とFM-Xのハイブリッド音源を搭載し、MONTAGE同様のスーパーノブやタッチパネルディスプレイを搭載。61鍵、76鍵、88鍵の3モデルをラインナップ。

▲ヤマハのブース内ステージではボーカロイドキーボードVKB-100のデモが人気。スマホアプリによる歌詞入力とデータ送信から演奏時の操作方法まで解説、多彩な歌声を聴かせた。

▲子供から大人まで試奏が絶えなかったヤマハのエントリー電子ドラムDTX402シリーズは、5万円台からの低価格でトレーニング機能も充実。Stage Customはじめアコースティックドラムも多数用意。

▲コルグはブース内にさまざまなシチュエーションを想定した部屋を個別に用意。プライベートスタジオを模した部屋には、MIDIコントローラーnanoシリーズのカラフルな10周年記念限定カラーモデルとをKORG Gadget for Mac、ARTURIAのオーディオインターフェイスAudioFuseとともに用意。

▲高品位な音源と自動伴奏機能を備えたコルグのEK-50は「エンターテイナーキーボード」と名付けられた新製品。280種以上のスタイル(伴奏パターン)で多彩なジャンルをカバー。複雑なメニューにもぐることなくレイヤーやスプリットなどもカンタンに設定可能。音色も720種と豊富に用意、スピーカー内蔵、ACアダプター付属、そして5万円以下で買える低価格で、初めてのシンセにもぴったり。

▲コンパクトなシンセvolcaシリーズはミキサーも含めフルラインナップ。ELECTRIBE WaveはじめiOSアプリやコントローラーも多数。volca&nanoシリーズ用のカラフルなケースやオリジナルマンガ「ガジェ太」の冊子も。

▲楽器フェア恒例、壁一面のコルグ・チューナーは数・面積ともに一段とパワーアップ(左)。今回はコルグ歴代シンセも壁一面に展示(右)。

▲ローランドの新製品で一番人気は、ステージ・キーボーディスト向けのサウンドを搭載したショルダー型キーボード「AX-Edge」はブラックとホワイトをラインナップ。エッジの効いたステージで映えるデザインで、エッジ・ブレード交換によるカスタマイズも可能。デモ演奏はアネモネ・モーニアン。

▲ローランドAIRAシリーズの最新モデルVT-4はボーカルの音程補正から投稿動画や生放送向けのボイスチェンジャーとしても活躍するボイス・トランスフォーマー。ツマミやスライダー、専用ボタンで素早く効果を調整可能。USBオーディオインターフェイス機能も備える。デモ機にはAstonのコンデンサーマイクも用意され、多彩なサウンドと手軽さ・楽しさをチェックできた。

▲デジタル管楽器エアロフォンに低価格&軽量・コンパクトなAerophone GO(左)が仲間入り。4種のサックスを含む11種の音色を搭載、Bluetooth接続によるiOSアプリで50種の音色で演奏可能。演奏動画作成に活躍するGO:MIXERには、コンデンサーマイク対応、電池ボックス内蔵で単独ミキサーとしても使用できるGO:MIXER PRO(右)が登場。ピンマイクを含むマイクや楽器など6系統の入力を用意。映像演出にうれしいアプリVirtual Stage Cameraは本機使用でロックが解除、フル機能が使える。

▲電子ドラムのVドラムには、効果的な練習サポート機能とメッシュ素材のパッドでアコースティックドラム同様の自然な感覚で演奏スキルが身につけれられる新機種TD-1DMKほか、多彩なラインナップを用意。体験イベントには女性や子供も含め多くの来場者が集まった。

▲ローランドブースにはアーティストのライヴ使用機材を再現した展示も。土橋安騎夫(レベッカ)は、SYSTEM-8、FA-07、JU-06、TR-8SなどをMX-1でまとめて使用(左)。山木秀夫のアコースティックとVドラムのハイブリッド・セットもまるごと展示(右)。

▲カシオからはアコースティック楽器の魅力も表現する新開発のAiX音源を採用したキーボードCT-X5000が登場。自動伴奏機能やMIDIシーケンサーを備え、15W+15Wの大出力アンプと低音を増強する新設計バスレフ型エンクロージャーによるスピーカーも搭載。

▲IK Multimediaの完全アナログ回路のポータブルなモノフォニック・シンセUNO Synth(左)は、エディターアプリとiPad miniとともに展示。初のFL Studio専用コントローラーとして話題のAKAI Fireも非常にコンパクト(右)。自照式パッドでシーケンス入力だけでなくフィンガードラムも。

▲アナログ&デジタルのハイブリッド・シンセサイザーWaldorf Quantumは、ウェーブテーブル、グラニュラーモードを備えたサンプラーなど4種のアルゴリズムを含む3基のオシレーターを用意。マルチタッチディスプレイ搭載、豊富に用意されたコントロールノブは設定が一目でわかるようすべてマルチカラーLEDを備えるなど贅沢な作り。

▲イタリアの鍵盤メーカーFATARが手がけるstudiologicのNuma Compactは88鍵で約7kgの持ち運べるステージ・ピアノ。スピーカーに加え、接続したPC/タブレットの音も出力できるUSBオーディオ機能も搭載し、これ1台持ち歩くだけで各種シチュエーションに対応可能。写真のNuma Compact 2xは新サウンドエンジンとドローバー搭載の上位機種。

▲手前のNuma Compactは同じく約7kg、クラス最軽量&コンパクトサイズの88鍵ステージピアノ。ディリゲントは、Waldorfエンジン搭載のイエローカラーのアナログ・モデリング・シンセSledge 2.0はじめ多数のstudiologic製品、ReloopのDJコントローラーなどを用意。

▲Behringerは日本初公開となるボコーダーVC340(右)をはじめ、話題のシンセMODEL DやNEUTRON(左)といったシンセやコントローラーなどを多数用意。

▲Behringerの電子ドラムXDシリーズは3万円台からの低価格が魅力(左)。ブランド初となるアナログ12ボイスのポリフォニック・シンセサイザーDEEPMIND 12(右)はキーボードとデスクトップタイプを用意。

▲ZOOMのH3-VRは「音のVR」が楽しめるマイク内蔵レコーダー。従来の左右方向だけでな上下・奥行きも含む全方位の音を収録するアンビソニックス方式のマイクを搭載、360°の音をまるごと捉える。再生時の音の向きは専用アプリでコントロールできるほか、モーションセンサー搭載の本体を動かすことでも可能。

▲20チャンネルのライブミキサーにマルチトラック・レコーダー機能、22イン/4アウトのUSBオーディオインターフェイス機能を統合したZOOM LIVETRAK L-20。全チャンネルに3バンドEQ、ローカット、フェイズ、2系統のセンドエフェクトを装備。スリーピースから大編成バンドまでサポート。

▲河合楽器製作所はX JAPANのYOSHIKIでおなじみのクリスタルグランドピアノを用意。展示されていたモデルは19日に発表された1億円のモデルよりも一回り小さいCR-40A(それでも640万円)で、誰でも試奏可能。多くの来場者がその弾き心地を味わっていた。

▲カワイの木製鍵盤搭載ステージピアノMP11SEは、SK-EX、SK-5のピアノ音色を新たに搭載、外観もよりピアノライクなデザインにアップデート。88鍵を個別に調整できる機能も備える。木製に近いタッチのプラスチック鍵盤搭載のMP11SEもラインナップ。

▲カワイのハイブリッドピアノAURES(左)は、4基の各音域専用の加振機を響板に取り付け、内蔵音源使用時でもナチュラルな立体音像を実現。夜間は小さな音で演奏が楽しめる。弾かない時はBlueoothスピーカーとしても使用可能。iPadで手書きで楽譜作成できるタッチノーテーション(右)もデモ。

▲「弦楽器・管楽器」エリアで絶大な人気を集めていたのがヤマハのカジュアル管楽器Venova(ヴェノーヴァ)。独自の分岐管構造と蛇行した管によりコンパクトなボディでサクソフォンのような音色を実現。リコーダーのような指使いでカンタンに覚えられるとあって多くの試奏者が集まった。この冬だけの限定色イエローは11月発売予定。

▲シックなカラーリングが魅力のヤマハの大人のピアニカ。低音から高音までバランスの良いまろやかな響きが特徴。ブラックとブラウンの2色展開で、持ち運びに便利なソフトケースが付属。

▲MIDI制御のオルゴールでおなじみのスリックは、ヤマハとの共同開発による鍵盤オルゴールの最新モデルを展示。鍵盤もボディも木製だが、内部には鍵盤ひとつひとつにオルゴールの発音機構が入っているため見た目以上に重い。実際に試用している坂本龍一からの意見も取り入れ改良を重ねているとのこと。商品化を目指しているが、現時点ではかなり高額になりそうとも。

▲iOS用のスマートデジタル楽譜リーダーPiascoreでは、表情のジェスチャーや視線で譜めくりできる、開発中のバージョンをデモ。iPhone XのTrue Depthカメラを使用することで顔の動きを検出し、ウィンクや舌を出す、眉毛を動かすといったさまざまな動作に対応する。検出精度はかなり高い。会場ではどのジェスチャーがいいかアンケートを実施していた。デモではiPadに譜面を表示、iPhone Xで譜めくり操作していたが、次期iPadに同様のカメラ機能が搭載さればiPhone併用は不要になるとのこと。

▲左がPiascoreのジェスチャー譜めくりのアンケートの途中経過。初日の時点では吹奏楽でウィンクで譜めくりしたいという人が多い。右の2つは開発中の楽器奏者向けSNSアプリPiascore Players Club。練習時間の自動記録機能も備え、Piascoreとの連動も予定している。

▲鈴木楽器製作所からはサイレンサー付きハーモニカ、忍SHINOBIX(シノビックス)が登場。カンタンに着脱できるサイレンサー(消音器)は、内部がらせん構造になっており、小型ながらも高い消音性能を発揮。その効果は抜群で、家庭内でも音の大きさを気にせずに演奏が楽しめる。

▲鈴木楽器製作所からレスリースピーカー122をモチーフにしたBluetoothスピーカー(左)が登場。レスリーの効果は得られないが、上部の隙間から漏れるLEDの光が回転して雰囲気を盛り上げる。木製鍵盤ハーモニカやアンデスの新色ナチュラルカラー(上段右)も。

▲鍵盤エリアの奥には、子供といっしょに楽しめる手作り楽器エリアが設けられた。ウクレレやタンブリン、カリンバなどにカラーマーカーでペイント。カンタンにオリジナル楽器が作れる。

■国内外のシンセ・DAWが集結した「シンセフェスタ 18」

「SYNTHE FEST(シンセフェスタ) 18」は、「コンピューター・デジタル」エリアの一角に設けられたシンセサイザーをはじめとする音楽制作関連商品を一挙に展示するイベントブース。今回は「TFoM(東京モジュラーフェスティバル)」を併催、モジュラーシンセと最新デジタルの融合を体感することができる。


▲シンセフェスタのエリア中央にはローランド、コルグ、ヤマハの最新シンセがずらり並び、自由に試奏が可能。MOOG、ARTURIA、Nordなど海外製シンセもスタンバイ。このセットを囲むように各社ブースが並び、奥にはステージが設けられている。

▲シンセフェスタのステージではライブやデモンストレーション、トークショーを随時実施。写真は電子楽器奏者Nori Ubukataと、ピアニストCynthia Caubisensの2名で構成される実験的音楽ユニットLunar 23.1のライヴ。左の楽器はシンセとテルミンを融合したTheresyn。

▲シンセフェスタのステージの横には、サンプリング黎明期に音楽シーンを大きく変えたFairlightの実機を展示。残念ながら触れることはできなかった。

▲国産シンセメーカーREONは、スマホサイズのステップ・シーケンサー~Loci~I、音色を操るパラメーターをリアルタイムに揺らす(スイング)機能を備えたシンセ~Loci~II(下段左)、ケーブル不要、ボタン操作で自由にパッチングできるユーロラックモジュラーシンセサイザーWizlink(上段)を展示。Wizlinkの各モジュールは約100g、厚さ3.5cmでVCO、VCF、VCA、EG、MIXERを用意。

▲Eventideの象徴的なリバーブ、コーラス、ディレイ、モジュレーション、ピッチシフト、ディストーションエフェクトを豊富に備えたH9 Hamonaizer(右)、iZOTOPEの革新的なプラグインエフェクトをチェックできたタックシステムのブース。プロのエンジニアの技をAIで実現するボーカル処理プラグインNectar 3や、不要な音を画像で見てピンポイントで取り除けるRX7(右)の凄さをデモで体感。

▲Nordのブースにはステージキーボードに求められる音色・機能を凝縮した最新モデルNord Electro 6はじめ現行モデルがずらり。写真は物理ドローバーを備えたNord Electro 6DとフラッグシップのNord Stage 3。

▲独Miditechのコンパクトな充電式GM音源モジュールpianobox mini。USB-MIDIキーボードが直接つなげる端子を備え、PCなしで演奏が可能。5ピンMIDIのケーブルも付属する。このほかMIDIインターフェイスやマージボックス、スルーボックス、ミニ32鍵キーボードもラインナップ。

▲中国チェルブのNUX(ニューエックス)からはギター用に加え、マイク用のワイヤレスシステムも展示。マイクに直接取り付けられるトランスミッター(上)と、ミキサーなどに直結できるレシーバー(下)の組み合わせで、本体にはチャンネル選択用のボタンとLEDを備える。電池寿命は5時間。

▲デバイスを自由につなげてアプリで演奏するROLIのBLOCKSは、鍵盤タイプのSeaboard Blockとともに体験可能。柔らかな表面を叩いたり触れた指を押し込んだりスライドしてさまざまな演奏表現ができる。専用ソフトでカスタマイズすればDAWのコントロールも可能。楽器フェア開催中にはBLOCKSの可能性を広げるハッカソンも行われた。

▲teenage engineeringのコンパクトなシーケンサー内蔵シンセpocket operatorシリーズを、サンプリングできる最新モデルを含む全9機種を用意したメディア・インテグレーションのブース。8ビットからFMまで多彩なエンジンを搭載したOP-1との同期も含め楽しくハンズオン。

▲インターネットはWindows用国産DAWソフトAbliity(左)、Mac対応版もラインナップするDSD対応のサウンド編集ソフトSound it!(右)を紹介。オーディオインターフェイスとマイクやキーボード、ギターを含むデモ環境を用意した。

▲人気イベント「Tokyo Festival of Modular」(TFoM)がシンセフェスタ18に出張。モジュラーシンセ独特の世界観を堪能できる展示となっていた。

▲TFoMブース入り口の巨大なモジュラーシステムを構築した福産起業は、Buchlaの伝説的シンセサイザーを復刻したMusic EaselやDave Smith Instrumentsの最新モデルSEQUENTIAL Prophet Xも展示。

▲キッコサウンドはiPadからBluetoothでシーケンサーやLFO、CVなどを制御する多機能モジュールmi.1eを展示。シーケンサーなどモジュラーシステムで面積をとりがちなモジュールをスリムな4HPサイズに収め、iPadアプリでグラフィカルに操作できる。8アウトのmi.1e 0|8(手前左)と外部クロックに同期できる2イン6アウトの新モデルmi.1e 2|6(手前右)をラインナップ。最新アプリには音を外さずにシーケンスが組めるスケール機能や波形を描けるLFOなども追加。他社製iOSアプリからの制御を可能にする開発中のアプリも見ることができた。
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