【インタビュー】DIR EN GREY、10thアルバム完成「今、行くべきところ」

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■「詩踏み」が完成したときに
■いいアルバムができそうな気がした

──自分から自然に何となく出てくるものは、テンポ的にはそんなに速いものではなく……。

薫:いや、仮にテンポ的に速くても、結局、アレンジでそういう部分も入れたりして……だから、収めようとするんですよね、いつものDIR EN GREYに。それでは面白くない。だから、自分の感覚を信用する部分もあったり、信用しないようにしている部分もあったり、そういうわかんない感じでやってましたね。何かね、自分から出てくるものが、全然おもろいことにならへんなぁって感じになってくると、ちょっとそれが他のメンバーに伝染していくような感覚があるんですよ。そういう場合、思いっきり曲のアレンジを変えようとかっていうのが、今まではよくあったんですね。でも、今回はあまりそういうことはしたくなかったんです。この曲に価値がないならやめよう、新しく曲を作ったほうが早い、みたいな。だから、なるべく曲をいじり倒すとか、構成をいっぱい作るとかっていうことはせずに、「この曲はこれでいくならこの感覚で」「でも、違うならやめよう」ってやり方なんですよ。だからこそ、1曲1曲にすごく個性があると思うんですね。あまり無駄な要素を入れずに、1曲1曲がそれぞれの色を持っている。そこで全体で1枚ですよみたいなものが見えて。

▲Toshiya(B)

──もちろん曲にはよりますが、確かに構成はすごくシンプルですし、曲も3分台が中心で、コンパクトにまとめられているのは、このアルバムの特徴の一つではありますよね。今の話からすれば、なるほどなと頷かされる部分でもありますが、そのやり方のよさを見出すキッカケになったような曲もあったんですか?

薫:いや、その1つの曲というのがないんですよ。だからずっと最後まで、この形で正解なのかどうか……だからいまだにわかってないです。その意味では、ちょっと自分の中で不安な部分も……もちろんいつもありますけど、どういう反応が返ってくるのかなというのはありますね。やっぱさっき言ったように、自分の感覚を信用せずにやっている部分もあるので。でも、今のDIR EN GREYには、これが一番いいと思ってやってる。いつもならもっとギシギシにしちゃうところを、ちょっと余白を空けてるんですよね。そこが俺が思っている感じに上手く伝わればいいなとは思ってますね。

Toshiya:もちろん、個性というか、それぞれの曲が持っているものはすごくあると思うし、でも、最終的には、アルバムを通してのストーリーなのかなと思いますね。長い曲もありますけど、大半はそんなに長くはない、コンパクトな仕上がりだと思うんですけど、それもDIR EN GREYがDIR EN GREYなりに悩んだ末の答えなのかなと思いながら。

──数ある楽曲の中で、このアルバムを象徴しそうだなと思う曲を挙げるとしたら?

Toshiya:うーん……象徴しているのは、やっぱり、シングルの2曲なのかなっていう感じは、ちょっとしたりもしてますね。あの2曲ができて、アルバムの全体像をどのようにパズルで組み合わせていくかというのを、何となくみんな考えた気がするんですよね。その意味では、今のバンドの雰囲気だとかアレンジだとか、この2曲がちょっとしたところで道標的なものになってた部分があったんじゃないかなと。まぁ、あくまでも目安ですけどね。

──「詩踏み」「人間を被る」の2曲は、アルバムの中では、また際立って聞こえるんですよね。ところが、シングルとして発表した時点では、他の曲はほとんどできていなかった。そう考えると、この全体像におけるバランスは、その“道標的”という見方からもよくわかる気がします。

Toshiya:そうですね。確かに全体を通したときに、バランスがいいって感じる部分はありますね。薫くんが、これっていうものがなかったって言ってましたけど、自分的には、「詩踏み」ができたときに、すごくいいアルバムができそうな気がした。何の根拠もないんだけどね(笑)。

薫:アルバムを作るうえで、シングルの2曲はすでに発表されているものなので、それはいじりようがないという前提で進めるじゃないですか。だから、確かにアルバムのパーツ的には、一応、目印にはなりましたね。要は、ああいう曲はもういらない、他の曲でもっと展開していこうってことになるわけじゃないですか。

▲2018.08.24@東京国際フォーラム/Toshiya(B)

──他の曲は、シングルを意識して書いたものではないのでしょうけれど……。

薫:いや、「絶縁体」とか「Values of Madness」とかはシングルを意識してました。実際に「絶縁体」は「詩踏み」のときに、「Values of Madness」は「人間を被る」のときに一緒に作ってた曲です。でも、もう2曲のシングルが出た後なので、アルバムに向けては、そういう印象じゃない感じで作り上げてましたけどね。

──この「絶縁体」は7分を超える、このアルバムの中では唯一の長編ですよね。だから、当初はシングルを意識して曲作りを進めていた事実は興味深いですよ。それが結果的に、「VINUSHKA」の続編とは言いませんが、同じようにドラマを感じさせる構成で聴かせる、DIR EN GREYの特性がまた堪能できますね。

薫:そう。この曲だけ他の曲と違って、ちょっと歪んでいるというか、今までのうちらの感じが結構入ってくる曲なので、そこが異質な感じがしますね。

──でも、あえてそういう作りにもしてるんでしょう?

薫:そういう曲が欲しいっていうメンバーからのオーダーがあったんですね。さっきも言ったように、そういうものを作ることは、自分の頭の中には一切なかったんですよ。

──むしろ排除してたんですもんね。

薫:そうそう。でも、そういうものがあったらいいかなぁって感じだったので、「絶縁体」の原型となるものをバッと持ってきて、いじった感じですね。でも、「VINUSHKA」と同じようになっても面白くない。ただ、最初のアルペジオのギターのイメージみたいなものは、以前から、こういう感じのものをやってみたいなぁと思って、アイディアだけはあったんですよ。でも、ハマる感じがなかったし、上手く形にもできなかったんですけど、この曲でチャレンジしてみようかなと思って。

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