【インタビュー】DIR EN GREY、10thアルバム完成「今、行くべきところ」
DIR EN GREYが9月26日、3年9ヵ月ぶりとなる10thオリジナルアルバム『The Insulated World』をリリースした。同アルバムにはシングル「詩踏み」「人間を被る」に加え、新曲11曲を含む全13曲を収録。完全生産限定盤の特典CDには過去のアルバム収録曲の再構築バージョン3曲ほか、2018年6月30日の新木場STUDIO COAST公演よりライブ音源3曲の全6曲が付属。さらに、特典DVD映像に全国ツアー<TOUR18 真世界>より全8曲のライブ映像を収めた特大ボリュームの作品として届けられる。
◆DIR EN GREY 画像
そのサウンドはタイトでソリッドだ。贅肉をそぎ落とした構成やサウンドメイクが楽曲の核を明確に浮かび上がらせて1曲1曲が個性的。結果、集合体としてのアルバムはそれらが強烈な色彩を放ちながら全13曲を一気に駆け抜ける。また、細部にまで注目すれば、新たな発見も多い。“ハードコア”や“効果音”などのキーワードはここ数年のDIR EN GREYにはなかったものだ。前作『ARCHE』からの進化、『The Insulated World』を象徴するナンバー、個々のサウンド&プレイについて、薫(G)とToshiya(B)に訊いたロングインタビューをお届けしたい。
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■今のDIR EN GREYにハマるのかというと
■そうじゃない、と自分に言い聞かせながら
──どんなアルバムが届けられるのか、まったく予想もつかなかったのですが、刺激的かつ衝撃的なオープニングトラック「軽蔑と始まり」をはじめとして、意表をついた作品が仕上がったなという第一印象でした。だからこそ気になるのが、前作『ARCHE』でもあるんです。この新作が出来上がった今、あのアルバムについてはどのように捉えているのでしょう?
Toshiya:原点回帰みたいなことを謳っていたアルバムでもあったと思うんですけど、結構、自分たち的にもそこら辺は意識していた部分はやっぱりあったんですよね。自分たちがバンドを結成した当時だとか、最初のミニアルバム『MISSA』とか『GAUZE』とか『MACABRE』とかをリリースした頃、どんなことを思って、どんなことを夢見てやってたかなぁって。だから……気持ち的な部分ですよね。たとえば、リハーサルとかも、昔は小さいハコで5人ですし詰め状態のような中で向かい合ってやってた。そういった5人で向き合ったアルバムにしたいなという思いで、『ARCHE』を作っていたなと自分は思ってますね。
▲薫(G) |
Toshiya:そう。科学の進歩というか文明の進歩というか、面と向かってやるよりも、モニター越しにやっていく作業が増えていったんですよね。もちろん、その便利さは利用する意味があるんですよ。でも、『ARCHE』のときは、そのうえで最終的に5人でまたスタジオで音を出して、曲の雰囲気だとか、ディテールを確認しながら仕上げていく。そこからレコーディングに入っていったんですよね。だから、そういう思いは余計に強かったのかなと思います。
──そういう作り方、臨み方をした理由は何だったんでしょうね?
Toshiya:そうですね……一概にこれというのは言いづらいんですが、コンピュータ上でやっていくと、正直、制限なくできる部分がすごくあるんですよ。振り幅も大きい。言い換えれば、それは可能性も大きいということなんですね。それはとてもいいことだと思うんですけど、その代わりに、単純に言うと、個々ではできることでも、5人で合わせたときにはなかなか思うような形にはならないこともある。そこら辺を改善したかったのかなと思いますけどね。そういう意味で、5人で音を出してやってみたらわかるんじゃないかと。
──曲そのものをより研ぎ澄ませるということですか?
Toshiya:ということにもなると思うし……音源としては、コンピュータ上で楽曲を完成させても、それで正解だと思うんですよ。ただ、そこで終わりじゃない。その後に僕らはそれを実際に演奏して、それを聴いて、いいと思ってくれた人たちの前でライヴをする。そのときに、コンピュータ上ではできたけど、ステージではできないというのでは、ちょっと本末転倒なんじゃないかなという思いも個人的にはあったので。だから、そこら辺をつなぎ合わせる、埋めていく作業ということですよね。
薫:『ARCHE』を作る前にメンバーで話をして、ライヴでもっと気持ちよく演奏したいというか、楽曲に支配されて演奏するのではなく、もっと自分で感じたものを楽曲に入れながらプレイしたいみたいな意見をもらったんですよ。だから、わりと気持ちよいリズム感とかフレージングとか、そういうのを心掛けて作りましたかね。結果、自分たちにすごくフィットする、そのときの自分の好きなリズム/テンポ感、フレージングだったりが多く入ってたアルバムじゃないかな。何か全体的にメロディックで、わりと聴かせる感じの曲が多くなってたのかなという気はしますね。作り的にもすごくキレイなアルバムだったかなと思います。
▲2018.08.24@東京国際フォーラム/薫(G) |
Toshiya:認識したのはホントにもう最後ですね。曲が出揃ってから、かな。
──今、どんな手応えを感じてます?
Toshiya:すごく面白いという言い方はおかしいかもしれないけど……DIR EN GREYというバンドが、10枚目のアルバムというのを発表することができた、完成させることができたという、自分の中での喜びみたいなものはすごく感じてますね。10枚もアルバムを作るって、ホントに凄いことだなと思ってますし、メンバーチェンジもなく、5人で最初から一緒にやってこれたというのも凄いなぁと素直に思ってますし。
──ただ、10枚目ということを意識して作ったところはないでしょう?
Toshiya:僕個人としては、意識はしましたよ。でも、だからこうしようといった考えはなかったけど、すべてのアルバムに関して、そのとき一番いいなと思えるものをやってこれたとは思っているんですよ。だから、その気持ちで10枚目も完走したいなとは思ってました。
薫:さっきも言ったように、『ARCHE』がキレイなアルバムというイメージだったので、わりと序盤のうちに、激しいアルバムにしたいという話もあったんですよ。でも、自分の今の気持ちいい感覚とかは、どちらかと言えば、テンポ感が速いものよりも、ゆったりしたものに寄りがちになっちゃうんですね。だから、そこをなるべく自分に頼らずというか……変な言い方ですけど。
──薫くん個人の今のモードではなく、と。
薫:そう。今、DIR EN GREYが行くべきところに進んだ感じですね。自分の思っている感覚に進むと、多分、つまらないものになると思ったんで。まぁ、つまらないかどうかわからないですけど、それはただ単に今お前が好きなだけで、今のDIR EN GREYにハマるのかというとそうじゃない、そう自分に言い聞かせながら曲作りをやってましたね。だからすごく悩みました。
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