【インタビュー】KNOCK OUT MONKEY、崩壊危機を乗り越えて「新しいミクスチャーを自分たちがつくる」
■様々なジャンルがバックボーンに
■そこに関するバンド内の信頼がある
──と言いますと?
dEnkA:スタジオリハーサルの残り15分くらいのときに、“テンポはこれくらい”って伝えたギターリフに乗せて、w-shunがアドリブで歌ったテイクを録っておいたんです。本当にデモのデモくらいの感覚で1コーラス分くらい。そのデモをナオミチに渡して、“ドラムだけをフルコーラス打ち込んでみてほしい”とリクエストしたんですね。で、ナオミチが打ち込んできたデモは、本当にドラムだけなわけですよ(笑)。コードも、メロディーも、構成もわからない、ひたすらドラムが鳴っているだけ(笑)。
──それはそうでしょ(笑)。
dEnkA:次にそれをベースの亜太に渡して、“こういう展開だろうな”と想像したベースを乗せてもらったんだけど、どこが間奏かすらわからへんという(笑)。他の曲はみんなで構成やアレンジを練り込んでつくったんですけど、「It’s going down, No doubt」はそういう作り方。最後に高速2ビートになるじゃないですか。最初にナオミチに渡されたデモを聴いたときに、“なんだこれ!?”と思いましたから(笑)。
w-shun:こういうテンポ感でいきつつも、最後は速くしたいと思ったんだろうね(笑)。デモはいつも歌メロから入るから、この曲は真逆。歌メロ発信ではないからメロディの乗せようもなく、ラップを多用したという(笑)。でもね、そうやってこの曲が出来上がったときに、“これこそミクスチャーやな”と思ったんです。そういう意味では「It’s going down, No doubt」は大きな1曲です。
▲亜太 (B) |
w-shun:そう。姿勢として、ミクスチャーに一度立ち返るという意味です。1990年代にミクスチャーという言葉が一般化したり、ラップメタルやラップコアが流行ったりしたじゃないですか。シーンとしてはそこで一旦ストップしてしまった。それでも当時キッズだった僕らはミクスチャーの匂いがある音楽を続けていたけど、そういうシーンはなくなってしまって、“ラウド”という言葉で、ひと括りになってしまったんですよね。そういう中で、もう一度自分の原点に立ち返って、今の感覚で自由に音楽を作ったらどうなるかなと。
──当時のミクスチャーへ立ち返るというよりも、より自由にという意味で。
w-shun:前作のときに個人的にそういうことを考えていて、それを今回はバンドとしてやったというか。本当に自分たちがやりたいのはどういうものかを追求していったら、いろんな音楽の要素を組み合わせた音楽がどんどん出てきて、“それって結局ミクスチャーやね”ということになったんですよ。だから、新しいミクスチャーを自分たちがつくるために、その姿勢を示す意味合いで“BACK TO THE MIXTURE”と銘打ちます、と。2000年代のミクスチャーをもう一度リバイバルさせたいということではないです。
dEnkA:僕ら4人は元々畑が違うし、なんでもやりたがる人間が揃っているから自然とミクスチャーになっている部分もあって、今後はそこをもっと際立たせようということです。メンタル的にも、サウンド的にも、そこを色濃く打ち出していきたいというのはギタリストとしてあります。
──自分たちなりのミクスチャーをつくるためには、メンバー全員が個性を持っているうえで、幅広いスタイルに対応できるスキルもないといけない。そういう意味でもKNOCK OUT MONKEYというバンドには似合っているというか。
w-shun:ありがたいことにそういうメンバーが揃っているんですよね。たとえば、さっきも言いましたけど、“こういうことがしたい”とか“こういうイメージで”って言うと、dEnkAがすぐに対応してくれる。彼はいろんなジャンルをバックボーンとして持っていて、ハードロックも根っこまでしっかりと勉強しているから、“それっ!”と思えるものを返してくれるんです。亜太とナオミチも同じく、そこに関するバンド内の信頼関係は出来上がっています。
──それは、『BACK TO THE MIXTURE』を聴いてもわかります。たとえば「Sailing day」のサンバになるセクションで、dEnkAさんはラテンパーカッションのようなニュアンスのカッティングをされていますよね。
dEnkA:サンバ系のパーカッションが頭の中で鳴ったので、ギターで表現できないかなと思って。それができれば、打ち込みとか外部プレイヤーを使う必要はないですから。曲が呼んでいれば、ギターで打楽器的なアプローチもするんです。
w-shun:なんとかしようとしてくれるんですよ。出来る限り自分たちだけで形にしようというスタンスも、独自のミクスチャーをつくることに繋がる。
──同感です。実験的なアプローチを楽しんだという意味では「It’s going down, No doubt」も同様ですよね。話を「It’s going down, No doubt」に戻しますが、この曲の歌詞はいろいろなバンドの曲名を織り込んでいることがポイントになっています。
w-shun:リリックは僕がキッズだった頃……それこそミクスチャーを聴いていた2000年代とかに、ヘヴィロテしていた曲たちのタイトルを使っています。当時の先輩たちも、好きなバンドの名前とかをリリックに入れ込むということを結構していて、それが楽しかったんですよ。同じように、この曲を聴いた若い子たちが、“あっ、この曲知ってる!”みたいに宝探しのような感じで新しいバンドと出会ってくれたらいいなと思って。それで、1番が邦楽の先輩方から自分が好きな曲、2番は洋楽アーティストの曲という形にしました。
──リスナーは歌詞を見るだけで終わらせずに、その曲を聴いてみてほしいですね。w-shunさんも『BACK TO THE MIXTURE』の中で印象の強い曲を挙げていただけますか。
w-shun:「sunshine」のサビができたときは、すごく嬉しかったんですよ、“こういうサビが歌いたい”と思ってたものを形にできたから。今回はメロディーの面で、自分のピークの音域をあまり使っていないんです。今まではそのピークをライブで再現するために、ブレスの仕方とか、トップの音程に気を遣う必要があった。今回は、“自分が歌いやすい得意な音域を使ったメロディー”を最初からイメージしたんです。“ピッチが高いほうが一聴したときのインパクトが強いけど、そうじゃない音域で”と考えている中で、「sunshine」のサビが出てきた。声の太さ、歌ったときの力強さ、を意識したメロディーで、高音域ではないけど物足りなさを感じさせないサビになっているんじゃないかなと思います。
dEnkA:そうだね。あとこの曲は、間奏のコード進行がすごく凝っているんです。転調しているけど自然に聴こえるようにしたいというのがあって。サビも、1990年代の西海岸ポップパンク的な匂いがあるから洋楽的に大雑把なコード進行でいこうかなと思ったけど、それをイメージしつつも、ちょっとイジったというか。結果いい感じにまとまったという意味でも、「sunshine」はコードをいろいろ考えましたね。
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