【ライブレポート】Hilcrhyme、復活ライブでファンと約束「もうバッドニュースは届けない」

ポスト

TOCのソロ・プロジェクトとして再始動した、Hilcrhymeの9ヶ月ぶりとなるライブ<Hilcrhyme LIVE 2018「One Man」>が9月2日、東京・日比谷野外音楽堂で行われた。

◆ライブ画像

昨夜から降り続いていた土砂降りの雨も上がり、曇天模様ではあるものの、気温も下がり心地よい風が吹く野音には、開場前から入場を待ちわびるファンや、グッズを求めるファンの長蛇の列ができ、そこからは久々のライブを行う、そして新たな一歩を踏み出すHilcrhymeへの強い期待を感じさせる。そして開場すると、ソールド・アウトとなっていた野音には、超満員のファンが集い、同時に全国20箇所の映画館と連携したライブ・ビューイングと、WOWOWでの生中継を楽しむ視聴者が、Hilcrhymeの登場を待つ。

17時05分、オープニングSEと共に、ステージにゆっくりと登場するHilcrhyme。黒の衣装に身を包んだ彼の姿が見えると、客席からは大きな歓声と拍手が湧き上がる。その声援を噛みしめるかのように、そしてファンとの久々の再会を味わうかのように、ステージ中央で直立し、オーディエンスに向き合うTOCに、更に期待と歓声は高まっていく。

「Hilcrhyme、comeback!」。TOCのシャウトと同時に、ライブは「トラヴェルマシン」でスタート。勢いのある楽曲のテンションに乗って、この9ヶ月の鬱屈を晴らすかのように、TOCもオーディエンスも、一気にヒートアップしていく。


世界で活躍中の墨絵/陶墨画アーティスト・西元祐貴がこの公演の為に描き下ろした「一人でステージに立ち向かうTOC=侍」と「それを守る龍神」という絵柄が背後に掲げられたステージの中央で、イヤー・モニターを外し、直接観客の歓声を聞きながら、「9ヶ月ぶりに挨拶しなきゃね。Hilcrhymeです。今日は特別なライブになると思います。久しぶりのライブを楽しんでください」と呼びかけ、そのまま「パーソナルCOLOR」になだれ込む。そしてオーディエンスにクラップを求め、そのクラップにラップとトラックを連動させて「ジグソーパズル」を披露。DJの不在によって、サウンド的に「ライブ感」が足りなくなるのではないか、という不安をライブを通して払拭していくTOCの姿は、パフォーマーとしての力量の確かさを、改めてしっかりと感じさせてくれた。

雨の心配が無くなった野音に、「野外ライブ 52連勝中、晴の神です」と、自らの晴れ男ぶりをアピール。そしてモードを夏に切り替え、「ヒルクライマーの夏がくるぞ!」と、「Summer Up」を披露し、会場にはファンの回すタオルの花が咲く。また「一人になった分、動きが早くなった俺についてこい!俺が新しい時代を作る。乗っかれ!」と宣言しての「New Era」など、決意感の強いメッセージと楽曲が、印象強くリスナーに響いていく。

そして「My Place」や、TOCが客席後方に作られたステージに登壇し、客席の中で披露した「春夏秋冬」など、オーディエンスとの合唱によって彩られた楽曲も、Hilcrhymeとファンとの絆の深さを感じさせられるような、非常に美しい光景であり、温かな空気が会場全体を包んでいく。


「9月2日、この日を待っていました。だからこそ、ちゃんと伝えさせて下さい」という言葉から、今年3月に脱退したDJ KATSUの不祥事と、活動休止について語り、深々と頭を下げるTOC。そして「自分の人生を賭けてHilcrhymeを全うする。もうバッドニュースは届けないと約束する」と宣言し、7月4日にリリースしたEP「One Man」収録の「アタリマエ」を披露。Hilcrhymeとファンとの「当たり前の関係性」が崩れてしまったことを修復し、これからまた新しく構築される関係性を「当たり前」とするという、確かな決意を提示するリリックが、オーディエンスの胸を打つ。そして「Your Smile」、「想送歌」、「愛更新」と、メロウなラップで「愛」を歌う楽曲が、連続して披露されていった。

そういった柔らかなメロディや優しさと同時に、畳み掛けるようなハードなラップもTOCの武器である。その意味でも、メロウ・ゾーンのカウンターを打つように「No.109」、「臆病な狼」、「押韻見聞録」、「続・押韻見聞録-未踏-」と、バチバチのラップ曲を披露。彼のラッパーとしての手腕の幅広さを証明する。そしてリスナーを励まし、同時に自らも励まされるという、リスナーとの深い関係性も想起させられる「Side By Side」を、膝をついて祈るように歌い上げる。その姿からは、リスナーに自分の音楽を届けたいという、TOCの真摯な気持ちが感じられた。


「これからもHilcrhymeを見ていてくれないか、居場所にしてくれないか」というMCから、温かで、そして強いメッセージ性を感じさせる「涙の種、幸せの花」を披露し、ライブは一旦終了。会場からのアンコールに応えて再登場したTOCは、先程のかしこまった説明ではなく、「信じられないよ、ふざけるなよ」と、DJ KATSUへの感情をあらわにする。しかし、やはり12年に渡ってタッグを組んできたDJに抱く感情は、怒りだけではないのだろう。別の道を歩むことになったDJに向け、「Good Luck」でエールを送る。その割り切れない感情は、非常に人間らしく、それがTOCの描くリリックの「愛」に繋がっていくのだろうと思わされた。

「今年はファンクラブ・ツアー“桃源郷”も開催するし、デビューから10周年を迎える来年には、全国20箇所を巡る全国ツアーや、他にもいろんなプロジェクトが進んでいるから、期待してて」と、これからの活動に意欲と期待を感じさせる言葉をリスナーに届けるTOC。そして「9月2日、今日は門出の日になりました。だから改めてデビュー曲をここで披露します」と、「純也と真菜実」をパフォーム。ステージにはマッピングを盛り込んだ映像が映し出され、楽曲の世界観をビジョンとしても表現する。

「去年から今まで、弱気になったこともあった。だけどみんなのお蔭でひとりじゃないってことに気づけました。本当にありがとう。俺は今日、この言葉を届けたかったんだ」と宣言し、ライブのラストはHilcrhymeの代表曲である「大丈夫」を披露。曲の途中ではトレード・マークのサングラスを外し、観客とダイレクトに向かい合い、観客と共にサビを歌い上げる。そこに見えるのは、オーディエンスとHilcrhymeとの幸せな関係性だろう。共に信頼し、支え合い、愛し合う。そのつながりを強烈に感じさせる楽曲と展開は、本当に感動的な光景だった。そして「Hilcrhyme、comeback!」と、登場と同じ言葉で、ライブは幕を閉じた。しかしその言葉は、オープニングの「宣言」とは違い、エンディングでは「確信」に変わっていた。


3時間弱、披露した全26曲すべての曲をフルレングスで歌い上げるという、非常にタフなライブを、まさに「One Man」で成し遂げたHilcrhyme。その全てから充実の作品構成とパフォーマンス能力の確かさ、そして新体制となったHilcrhymeのネクスト・レベルが感じられる力強いライブは、希望の香りを十分に漂わせながら、幕を閉じた。

彼がステージを降りると同時に、このライブとの別れを惜しむかのような、ぽつりぽつりと涙雨が降り出した。しかし、Hilcrhymeはまた次のライブで、この雨を晴らしてくれるだろう。そう信じる事ができる、充実のライブだった。

文◎高木“JET”晋一郎
編集◎BARKS編集部

セットリスト

1.トラヴェルマシン
2.RIDERS HIGH
3.パーソナルCOLOR
4.ジグソーパズル
5.Summer Up
6.恋の炎
7.New Era
8.パラレル・ワールド
9.My Place
10.エール
11.ルーズリーフ
12.春夏秋冬
13.アタリマエ
14.Your Smile
15.想送歌
16.愛更新
17.No.109
18.臆病な狼
19.押韻見聞録
20.続・押韻見聞録-未踏-
21.Side By Side
22.涙の種、幸せの花

EN
1.Good Luck
2.FLOWER BLOOM
3.純也と真菜実
4.大丈夫

<Hilcrhyme TOUR 2019 “Hill Climb”>

2019年
2月2日(土)広島・HIROSHIMA CLUB QUATTRO
2月3日(日)岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
2月9日(土)福島・郡山 HIPSHOT JAPAN
2月11日(月・祝)神奈川・Yokohama Bay Hall
2月16日(土)千葉・柏PALOOZA
2月17日(日)静岡・浜松窓枠
2月23日(土)熊本・B.9 V1
2月24日(日)福岡・DRUM LOGOS
3月2日(土)岐阜・club-G
3月3日(日)兵庫・神戸 THE CHICKEN GEORGE
3月9日(土)長野・CLUB JUNK BOX
3月16日(土)愛媛・松山WstudioRED
3月17日(日)香川・高松オリーブホール
3月21日(木・祝)石川・金沢EIGHT HALL
3月23日(土)大阪・なんばHatch
3月30日(土)北海道・札幌 PENNY LANE24
3月31日(日)宮城・仙台Rensa
4月6日(土)愛知・名古屋 DIAMOND HALL
4月7日(日)東京・Zepp DiverCity Tokyo
4月13日(土)新潟・新潟LOTS

[先行受付]
・Hilcrhymeオフィシャルファンクラブ「4Seasons」会員先行
2018年9月3日(月)12:00~9月10日(月)23:59まで

・2018年9月2日(日)日比谷野外大音楽堂 会場先行受付
2018年9月3日(月)12:00~9月12日(水)23:59まで

・YEARBOOK「H」/Hilcrhymeモバイル先行
2018年9月11日(火)12:00~9月17日(月・祝)23:59まで

・Hilcrhyme オフィシャルサイト/SNS先行
2018年9月18日(火)12:00~9月24日(月・祝)23:59まで

この記事をポスト

この記事の関連情報