神保彰、リー・リトナーらトップアーティストによるオンライン音楽レッスン「Musician’s Creativity Lab」7月3日スタート
アマチュアからプロを目指す人まで幅広い楽器経験者を対象としたオンライン音楽レッスン「Musician’s Creativity Lab」(ミュージシャンズ クリエイティビティ ラボ)が始動。神保彰、リー・リトナー、ダニエル・ホーをオープニングアーティストとして迎え、7月3日よりスタートする。6月25日に開催された記者説明会にはゲストとして神保彰が登場、自身が手がけたレッスンへの思いを語った。
ヤマハ音楽振興会による「Musician’s Creativity Lab」(以下、MCL)は、世界の音楽シーンをリードする国内外のトップアーティストを迎え、楽器演奏技術の習得はもちろん、バンド演奏や曲作り、アレンジなど音楽活動に関する総合的なスキルを手軽に学べるオンライン音楽レッスン。サービスは以下の2つで構成される。
1. 「Video Lesson」(ビデオレッスン)
トップアーティストによるレッスン動画
2. 「Feedback Session」(フィードバック セッション)
トップアーティストが推薦し所定のプログラムを履修したミュージシャン「MCLアドバイザー」から動画を介したマンツーマンでのクリニックが受けられる
▲Musician’s Creativity Labオフィシャルサイトのトップ画面(7月3日公開)
▲アーティストが楽器の奏法をはじめ幅広い内容を独自のビデオコンテンツで提供。
オープニングアーティストとして迎えられたのは、神保彰(ドラムス)、リー・リトナー(ギター)、ダニエル・ホー(ウクレレ)の3名。サービス展開エリアは北米、および日本を含むアジア地域で、日本語(日本国内向け)と英語(日本以外の地域向け)のサイトを用意する。
▲左から神保彰、リー・リトナー、ダニエル・ホー
サービス最大の特徴は、比類のないアーティストのラインナップにある。超一流の演奏家であるだけでなく、曲作りやプロデュースなど音楽制作全般に幅広い治験を持ち、なおかつ音楽教育に対しても特別な情熱を抱いている。そんなビッグアーティストたちの技術や感性、そして「教えること」への熱意を、ヤマハ音楽振興会が永年培ってきたノウハウによりわかりやすく体系化した。
基本となるのは、月額4,500円から(税別、以下同)のリーズナブルな費用で受講できる「Video Lesson」。動画をウェブサイト経由でやりとりすることで、MCLアドバイザーからのマンツーマンでのクリニックが受けられる「Feedback Session」も必要に応じて利用可能。これは、ビデオをレッスンを見た結果、「ここがわからなかった」「こんなふうにやってみたが、これでいいのか?」という疑問を受講者が自撮りした動画で提示、それにMCLアドバイザーが動画で答えてくれるというものだ。さらに今後はアーティストと直に会えるワークショップやイベントなどの開催も予定している。
<Musician’s Creativity Lab サービスの構成>
●Video Lesson
アーティストごとに、楽器演奏技術やバンドでの演奏方法、曲作り、アレンジ、楽曲分析など多彩な内容のレッスン動画を配信。動画は各6回~36回のシリーズで構成(回数はサービス開始時点でのもので、アーティストにより異なる)。1回あたりの動画の長さは30分前後、受講料を支払っている期間中は何度でも繰り返し視聴することができる。受講料の支払いは1ヵ月(4,500円)、6ヵ月(25,650円)、12ヵ月(48,600円)の各コースから選択可能。
●Feedback Session
Video Lesson受講者が相談や質問などを動画撮影(最長5分まで)してウェブサイト経由でアップロードすると、それに対する個別のアドバイスなどを動画(最長5分まで)で直接受け取れる双方向のオプションサービス。アドバイスは、各アーティストの推薦により選ばれ、MCLのプログラム(MCL Adviser Training Session)を履修したミュージシャン「MCLアドバイザー」によって行われる。Feedback SessionはVideo Lesson受講者のみ利用でき、費用はセッション1回ごとのチケット制となっている(1回:2,500円~10回:22,500円の4種を用意)。
■アーティストのアイディアと経験がベースのカリキュラム
6月25日行われた記者説明会では、北米を中心に多く存在するビデオレッスンとの違いがアピールされた。既存のビデオレッスンは演奏技術に特化しているが、MCLではそれに加え作曲やアレンジ、バンドのパフォーマンスをかなり重要視したものになっている。たとえば、今回実際に見ることができたリー・リトナーのレッスンでは、指弾きとピック弾きを織り交ぜたアルペジオのエクササイズがある一方、彼の作品をテーマにしてその背景や曲作りの過程を語るシーンも盛り込まれている。さらにスケールやコードの話、楽譜はどうやったら読めるようになるのか、ギターの種類やエフェクター、アンプも含めた音作りまで、内容は多岐に渡る。演奏だけでなく、アーティスト自身のアイディアと経験がベースのカリキュラムになっているのだ。
▲リー・リトナーのレッスンのワンシーン。スタジオでギター演奏を披露。
▲随所に楽譜も盛り込まれ、映像を見ながら練習ができるようになっている。
一度見たら終わりではなく、長い期間にわたって継続することで習得できるコンテンツである点も特徴の一つ。神保彰のレッスンは全部で36レッスン。1つは約20~25分で、ベーシックなものから始まりバリエーションを含めそれぞれ10パターンを演奏。1年を通して360パターンが神保彰自身の演奏とともに解説される。複数のカメラを使ってさまざまな角度から捉えられた映像は、非常に見応えのあるもの。レッスンの最後には、レッスン中に勉強したテクニックだけを使ったドラムソロも披露。さらにこれをベースにどうやって上達していけばよいかという話のほか、姿勢やグリップについてのコメントなども収録されている。
▲こちらは神保彰のレッスン。レッスン1の基本となる8ビートのエクササイズ。
▲レッスン14、16分音符のダブルパラディドル。側面や足元など異なる角度からの映像も織り交ぜ、わかりやすい内容となっている。
生活スタイルにあわせて時間や場所などストレスなく受講できる形態もポイント。5分間や10分間といった短い時間で学習するスマートラーニング的な学び方ができ、たとえば電車の中で動画を見て、家に帰ってギターを弾くといった活用もできるようになっている。
Feedback Sessionを担当するミュージシャンは、現在のところ東京とカリフォルニアに準備。ロサンゼルスのミュージシャンも参加する。サービスは7月3日にスタートし、全世界で受講が可能になる。「東南アジアで神保彰さんのワークショップを見に行ったドラムが好きな方が、東京の神保さんのお弟子さんであるMCLアドバイザーの方にアドバイスをしていただくといったことが可能になっています」といった例も挙げられた。ヤマハ音楽振興会ではミュージシャンとともにメソッドの作成、MCLアドバイザーを育成するほか、フィードバックの内容についてもアドバイスを行う。
■「音楽教育の新たなスタンダードになる」―― 神保彰
記者説明会のラストにはゲストとして神保彰が登場。「この話を初めていただいたのは3年半前。ようやくこの日を迎えることができたというのが僕の実感なんです」とはじめ、「今ウェブ上にはさまざまな音楽教育に関するコンテンツが溢れてると思います。その多くが視聴者の興味を引くということを主体に考えられているので、本当に学びたい人をある程度長いスパンで導いていけるようなものがほとんど皆無に等しいんじゃないかなと感じております。そういう意味でこのMusician’s Creativity Labというのはウェブ教育の新しいスタンダードになりうる素晴らしいプロジェクトだなと思っておりまして、そこに参加させていただけることを本当に光栄に思っております。」と挨拶。
自身のレッスンについては、「僕がドラムを始めてかれこれ四十数年経っておりますので、その四十数年間を1年に凝縮すると言うところからスタートしました。」「全36のレッスンは4つのチャプターに分かれており、それぞれのチャプターで一つの完結するものを提示、全体を通して大きな流れも感じられるような内容に仕上がったのではないかと自負しています。」と紹介。1レッスンに提示されるテーマは1つだけで、エクササイズ1でテーマを提示、2~10まででその応用が示される。「1から順番にエクササイズをやっていけば、一つのテーマに対してどういう風にして応用していったらいいか、どうやって枝葉をつけていけばいいかというノウハウが自然に受講者に伝わる内容になっていると思います。」
▲1年をかけて36のレッスン、360のパターンを自身が叩いた膨大な内容を自ら説明。
レッスン1は8ビートがテーマだが、「これもいわゆる普通の教則本に書かれているものとはまったく違って、実際に自分が『8ビートを叩いて』って現場で言われた時に叩くようなパターン、いろんな現場ならではの情報っていうのがこの中に盛り込まれているんですね。それはなかなか今までのスタンダードとして存在する教則本にはあまり出てこないような内容です。」とMCLならではの特徴を解説した。
制作にはまる1年が費やされた。「やり始めてみてから自分も何度も気が遠くなりそうになりました。」「やっぱり40年間自分が培ってきたことを余さず伝えたいっていう部分もあったものですから」と苦労を語る場面も。
また、楽器の上達はなだらかな線形ではなく、その途中には停滞期があり階段状に次のステップに上がっていくと自身のイメージを紹介。「必ず階段上に上がるきっかけになるエポックというのがあるんですね。あっこうだったんだ、そうだったんだ、という大きな発見。そういったエポックを(レッスンには)随所に盛り込んでいます。ですからその自分の音楽的な経験であるとか、自分のパーソナリティみたいな物が ものすごく色濃く反映されている内容になっています。」
「もちろんリトナーさんのレッスンはリトナーさんのキャラクターがものすごく強く出てますし、ダニエルさんのパーソナリティも彼のレッスンの中に盛り込まれてると思います。ですから本当にそれぞれのミュージシャンが経験した音楽的なさまざまな経験値、そしてあたかもマンツーマンでレッスンを受けているような、英語で言うとIntimateという言葉がありますけども、そういう感覚を持って楽しく興味を持って参加していただけるような内容になっていると自負しております。」と自信を見せ、再び「このMusician’s Creativity Labが、ウェブコンテンツを使った音楽教育の新たなスタンダードになると確信しております。」と締めくくった。
「Musician’s Creativity Lab」のスタートは7月3日13:00。無料会員登録、受講内容の確認、申し込みは、同日より公開される日本語・英語に対応したオフィシャルサイトで。
<オープニングアーティスト プロフィール>
●神保彰(ドラム)
日本を代表するフュージョンバンド「カシオペア」のメンバーとして1980年にプロデビューして以来、40年近くにわたり常に音楽シーンの最先端を走り続けるトップドラマー。2007年、ニューズウィーク誌の特集「世界が尊敬する日本人100人」に選出。2011年には国立音楽大学ジャズ専修客員教授に就任し、現在は「カシオペア」のサポートメンバーとしての活動に加え、神保のもうひとつの顔というべき「ワンマンオーケストラ」名義でのパフォーマンスやセミナーでも世界中に活躍の場を広げている。
●Lee Ritenour/リー・リトナー(ギター)
ジャズ、ロック、ブラジル音楽などを融合した独自のスタイルで1970年代前半から活動を続ける米国ロサンゼルス出身のギタリスト。1976年に自身のバンド「Gentle Thoughts」を結成、翌77年には初期の代表曲『Captain Fingers』でメロディメーカーとしても一躍脚光を浴びる。1986年にはDave Grusinとの共作『Harlequin』でグラミー賞を受賞、その後はBob Jamesらと結成した「Fourplay」でも活躍する。現在、若手を発掘する音楽コンクール「Six String Theory」を主催。
●Daniel Ho/ダニエル・ホー(ウクレレ)
ギターやピアノ、ドラムなどさまざまな楽器をこなすハワイ生まれのウクレレ奏者。1990年、スムースジャズバンド「キラウェア」のリーダー兼キーボード奏者としてプロデビューし、同バンドで米国ビルボード誌のトップ10にチャートインする。ソロ活動ではグラミー賞に14回もノミネートされ、特に2005年〜2010年は6年連続でハワイ音楽部門ベストアルバム賞受賞の快挙を果たす。最近では日本のロックユニット「B’z」のリーダー、松本孝弘との共作『Electric Island, Acoustic Sea』も注目を集める。
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