【インタビュー】ドン・エイリー、英ハードロックを牽引してきた芳醇なキャリア

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ドン・エイリーが新作ソロ・アルバム『ワン・オブ・ア・カインド』を発表した。

◆ドン・エイリー映像&画像

現在ディープ・パープルのキーボード奏者であるドンは、これまでレインボー/オジー・オズボーン/ゲイリー・ムーアなどと活動し、ブリティッシュ・ハード・ロックを代表する名手として知られてきた。本作ではそんな豊潤なキャリアに裏打ちされた、円熟の英国ロック・サウンドを堪能することができる。

ニュー・アルバムとディープ・パープルでの活動、そして過去の秘話を、ドンに訊いてみよう。


──ディープ・パープルの<ザ・ロング・グッドバイ>ワールド・ツアーは順調ですか?

ドン・エイリー:うん、すごく盛り上がっているよ。ディープ・パープルは長年、世界中ですごい人気を誇ってきたけど、今やっているツアーは特にファンが熱狂的だ。やはり“これが最後のツアーだ”と感慨深いものがあるんだろうね。むしろ私の方が“解散”といわれてもピンと来なかったりする。毎晩ショーをやっているし、まだゴールが決まっていないからね。ラスト・ショーの日程が決まって、それまでのカウントダウンが始まれば、実感が湧くんだろうけど...私にとっては、ディープ・パープルでプレイできたのは素晴らしい経験だった。まだ私がアマチュアだった頃から、彼らはトップ・バンドだったからね。その後、リッチー・ブラックモア、そしてロジャー・グローヴァーとレインボーで一緒にやったんだ。ジョン・ロードがケガをして代役を頼まれたとき、友人のジョンのことは心配だったけど、彼がパープルを脱退することになって、バトンを渡されたのは誇りに思える瞬間だった。そのときは、このバンドにいるのは長くても10年ぐらいだと思っていた。既に16年が経って、あとしばらくはツアーを続けるだろうけどね。でも彼らと世界中を何度もツアーして、4枚のアルバムを作ることができたのは、夢のような経験だった。

──近年ドン・エイリー&フレンズとしての活動が活発になっているのは、“ディープ・パープル以後”を意識しているのでしょうか?

ドン・エイリー:いや、まったく意識していない。ディープ・パープルは相変わらずツアーを行っているし、パープルが終わったらどうするか、考える余裕はないよ。ただ、気の合う“フレンズ”とライヴをやるのは楽しいし、これから“フレンズ”の輪を拡げていくのも面白いと思う。これまでツアーで忙しくて出来なかったセッションやチャリティ・ライヴなどへの参加も増えるかもね。東日本大震災のベネフィット・シングル(『Help! For Japan』)に貢献できたのは、ずっと応援してくれた日本のファンに少しでもお返しできて光栄だった。まあ、パープルのツアーはまだしばらく続くし、ジャパン・ツアーも決まっている。人生の今という瞬間を楽しむようにするよ。

──アルバム『ワン・オブ・ア・カインド』の音楽性はどんなものですか?

ドン・エイリー:イングリッシュ・ロック・キーボードをフィーチュアしたクラシック・ロック・アルバムだよ。ここ数年“ドン・エイリー&フレンズ”名義でライヴをやってきた仲間たちと作ったんだ。カール・センタンス(Vo)やサイモン・マクブライド(G)、ローレンス・コトル(B)、ジョン・フィネガン(Dr)はいずれも気心知れたミュージシャン仲間で友達だ。

──「リスペクト」や「オール・アウト・オブ・ライン」「ロスト・ボーイズ」など、ディープ・パープルを思わせる楽曲がありますが、どの程度意識してそういうアプローチを取ったのですか?

ドン・エイリー:現在私はディープ・パープルのキーボード奏者だから、ロック・アルバムを作ったら、どこか似通ってしまうのは避けられないだろうね。現在の“フレンズ”のラインアップからしても、パープルらしさを消し去ることはできないよ。

──“フレンズ”のメンバーを教えて下さい。

ドン・エイリー:カール・センタンスは私のソロ・キャリアにおいて重要な位置を占めるシンガーだ。彼は1980年代からさまざまなバンドで活動していて、現在はナザレスのヴォーカリストなんだ。トラディショナルなロック・シンガーであるのと同時に強烈な個性があって、イアン・ギランみたいにシャウトもできるし、良い友達でもある。

──ギタリストのサイモン・マクブライドは?

ドン・エイリー:サイモンは北アイルランドのスウィート・サヴェイジにいたんだ。ディオやデフ・レパードのギタリスト、ヴィヴィアン・キャンベルが昔いたバンドだよ。彼はソロ・アーティストとしてもブルースをプレイしている。アイリッシュのブルース・ギタリストということでゲイリー・ムーアと共通するフィーリングがあるし、ライヴでゲイリーの曲をプレイするときにその才能を発揮しているよ。

──ベーシストのローレンス・コトルは?

ドン・エイリー:ローレンスは1980年代にジャズ・バンドをやっているときに知り合ったんだ。とても多彩な才能を持った人で、ブラック・サバスやゲイリー・ムーアのアルバムにも参加している。今年(2018年)のソロ・ツアーに参加したドラマーのジョン・フィネガンもそうだけど、柔軟性と独自の個性を兼ね備えたプレイヤーだよ。

──『ワン・オブ・ア・カインド』の初回限定盤CDにはディープ・パープルの「ピクチャーズ・オブ・ホーム」、レインボーの「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」「アイ・サレンダー」、ゲイリー・ムーアの「スティル・ゴット・ザ・ブルース」のライヴ・ヴァージョンが収録されていますが、他にどんな過去の曲をプレイしていますか?カヴァー曲を選ぶ基準はありますか?

ドン・エイリー:自分が過去にプレイしてきた曲から、ファンが喜びそうなものを選んでいる。かなりレアな曲のリクエストを受けるから、サプライズな曲を演ったりもしているんだ。コロシアムIIの「ジ・インクイジション」や「デスペラード」、レインボーのアルバム未収録曲「バッド・ガール」にも大きな声援が起こるよ。大きなライヴ会場だと「...はァ?」となるだろうけど、小さいクラブにマニアックなファンが集まるから、むしろレア曲の方が盛り上がるんだ。

──2018年3月のヨーロッパ・ツアーでアルバムから「ヴィクティム・オブ・ペイン」が先行披露されましたが、オリエンタルなストリングスがレインボーの「スターゲイザー」、あるいはレッド・ツェッペリンの「カシミール」を彷彿とさせますね。

ドン・エイリー:ドイツのメディアからのインタビューでも「カシミール」と似ている、と言われたよ(笑)。“エキゾチック”なストリングスを取り入れるのは、イギリスのロックの伝統なんだ。ザ・ビートルズの「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」なんかもそうだろ?レインボーも私が加入する前、「バビロンの城門」でオリエンタルなストリングスをフィーチュアしていた。そんなイングリッシュ・ロックの伝統を自分なりに表現したかったんだ。このアルバムではストリングスのパートはキーボードで弾いたり、本物のストリングスを使ったりした。ストリングス・アレンジは基本的に自分でやったけど、ディープ・パープルのオーケストラ・ツアーを指揮したスティーヴ・ベントレー=クラインの知恵も借りたよ。

──ストリングス・アレンジは専門教育を受けたのですか?

ドン・エイリー:いや、独学だよ。クラシックの教育は学校(ノッティンガム大学と王立ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージック)で受けてきたけど、ストリングス・アレンジはレインボー時代に映画音楽のオーケストラ譜を集めて、独自に研究したんだ。ジョン・ウィリアムスの『スター・ウォーズ』とか『未知との遭遇』とかね。『スター・ウォーズ』はハリウッド映画に壮大なオーケストラ音楽を復活させた。そんなビッグな音に興味があったんだ。

──あなたはレインボーやオジー・オズボーン・バンド時代のキーボード・ソロで、その映画2作品のテーマ曲を引用することがありましたね。

ドン・エイリー:うん、最近ではあまりやっていないけどね。壮大なオーケストラ・サウンドが好きなんだよ。ジェイムズ・ホーナーとか、映画音楽家ではないけどアーロン・コープランドの「庶民のためのファンファーレ」とかね。ディープ・パープルの「アンコモン・マン」のファンファーレ風のキーボードは、エマーソン・レイク&パーマー版の「庶民のためのファンファーレ」へのトリビュートだったんだ。

──あなたがゲイリー・ムーアのバンドにいた<コリドーズ・オブ・パワー>ツアー(1982~1983年)ではライヴのオープニングに、あなたの作曲した荘厳なオーケストレーションのインストゥルメンタル曲が使われましたが、どんな流れであの曲を使用することになったのでしょうか?あの曲を公式リリースする予定はないでしょうか?

ドン・エイリー:うーん、あの1曲を単独でリリースするのは難しいかもね。今更アルバムに入れるのもどうかと思うし...あの曲はタイトルも付けていなかったんだ。たまたまゲイリーに聴かせてみたら、すごく気に入ってくれて、ライヴのイントロに使ってくれたんだよ。私がゲイリーのバンドを脱退してオジー・オズボーンのバンドに戻るとき、特にあのイントロ曲の話はしなかったけど、すぐ使わなくなったみたいだね。ゲイリーはそんなところが律儀だったんだ(笑)。

取材・文:山崎智之
写真:Jim Rakete


ドン・エイリー『ワン・オブ・ア・カインド』

2018年5月25日発売
【初回限定盤CD+ボーナスライヴCD】 ¥3,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本盤限定ボーナストラック2曲収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.リスペクト
2.オール・アウト・オブ・ライン
3.ワン・オブ・ア・カインド
4.エヴリタイム・アイ・シー・ユア・フェイス
5.ヴィクティム・オブ・ペイン
6.ランニング・フリー
7.ロスト・ボーイズ
8.ウォント・ユー・ソー・バッド
9.チルドレン・オブ・ザ・サン
10.リメンバー・トゥ・コール
11.ステイ・ザ・ナイト
日本盤限定ボーナストラック〔2017年3月14日 ドイツ・ハンブルク公演〕
12.シューティング・スター(ライヴ ver.)
13.ザ・ウェイ・アイ・フィール・インサイド(ライヴ ver.)

【メンバー】
ドン・エイリー[ディープ・パープル](キーボード)
カール・センタンス[ナザレス](ヴォーカル)
ローレンス・コットル[ブラック・サバス](ベース)
ジョン・フィニガン[ギャング・オブ・フォー](ドラムス)
サイモン・マクブライド[スウィート・サヴェージ](ギター)

<DEEP PURPLE - The Long Goodbye>

2018年10月14日(日)
@東京:幕張メッセ国際展示場 9・10・11ホール
開場14:30 / 開演 16:00
2018年10月15日(月)
@名古屋:名古屋国際会議場センチュリーホール
開場18:30 / 開演 19:00
2018年10月17日(水)
@大阪:フェスティバルホール
開場18:00 / 開演 19:00
2018年10月20日(土)
@広島:広島上野学園ホール
開場17:30 / 開演 18:00
2018年10月22日(月)
@福岡:福岡サンパレス ホテル&ホール
開場18:15 / 開演 19:00
http://udo.jp/concert/DeepPurple

◆ドン・エイリー『ワン・オブ・ア・カインド』レーベルサイト
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