【レポート】<GBGB2018>DAY2、「先輩後輩なんて生易しい関係じゃなく、負けたくないライバル」

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▲LOOP CHILD

バリアフリーの実現と拡充を目的にしたライブイベント<GBGB2018>が、5月3日(木)、5月4日(金)の2日間にわたり高崎アリーナにて開催。2日目は初日と趣を変え、エンターテインメント性溢れる内容となった。

◆<GBGB2018>DAY 2 5月4日(金) 高崎アリーナ 出演者画像

トップバッターを務めるLOOP CHILDは、女性ヴォーカリスト、しばのまりこのエモーショナルな歌声が男臭いフェスに華を添えた。前日のブログで自らの音楽を「馬鹿がつくほど真っ直ぐ」と形容していたが、その真っ直ぐさゆえにラストで奏でられた「手をつなごう」の如く、演者と観客は心の部分で繋がっていたのは、ステージと客席に咲いた笑顔が物語っていた。

▲モーモールルギャバン

3ピースの内リズム隊2人が群馬県出身のモーモールルギャバンは持ち時間すべてを使ってメドレーで完奏。パンイチがトレードマークのドラム&ヴォーカル、ゲイリー・ビッチェ、サウンドのポップ&サイケな部分を担うキーボード&ヴォーカルのユコ=カティが織りなす極彩色のサウンドは、今回のイベントで最もカオスな瞬間を演出した。MCで「(出身高校の)新島学園フォーエバー!」と叫んだのは、この日登場する布袋寅泰、香川誠といった偉大なる先輩に向けて最大の敬意と言えよう。

▲氣志團

敬意という話ではCOMPLEXの「BE MY BABY」を登場曲に持ってきた氣志團は、群馬のフェスに初登場ということもあり綾小路翔が思わず「(BOØWYのサウンドを表す)ビートの聖地、高崎に氣志團が来たぜ!」と叫ぶなど、地元のヒーロー、布袋寅泰に対するリスペクトに溢れるパフォーマンスを展開。「One Night Carnival」ではお馴染みの振りに客席全体が同じ動きで応え、ブレイクタイムでは会場全体が合唱状態。その感動的な光景に「俺らひとつになったんじゃねえ!」と綾小路も感きわまる様子だったのだが「17、8年前のプチヒット曲をドヤ顔でまくし立てて、ブレイクタイムで皆に無理やり歌わせて、皆が歌詞を知らないのを見て慌てて自分が歌い出す始末」と、なぜか反省の弁が繋げられた。しかも「ビートの聖地に来て気づきました。氣志團は生まれ変わります。『One Night Carnival』はもう二度とやりません。」と衝撃発言が!と思いきや続けて披露されたのは「One Night Carnival 2018」。壮大なフリと共にまくし立てられた新装バージョンは、ダンスも含めて星野源の「恋」を思わせるものだったが、完璧なフュージョン状態には、氣志團のセンスの高さを感じずにはいられなかった。

そんなエンターテインメント性に満ちたステージのラストはBOØWYの「DREAMIN’」のカバー。氷室京介が憑依したかのような綾小路のパフォーマンスは、正に“ビートの聖地”に宿るロックの磁場が起こした夢の瞬間のように映った。退場時には氣志團のライブでお馴染み「Love Balladeは歌えない」(清水宏次朗)が流れたが、『ビー・バップ・ハイスクール』のロケ地が高崎だったことを考えられると、彼らにとって高崎は自らの血肉となっている「ビートの聖地」であると同時に「『ビー・バップ〜』の聖地」という意味、地元の木更津と並ぶくらい大切な街なのかもしれない。

▲FLYING KIDS

高崎に場所を移したせいか、今回のラインナップは初登場組が多かった中、5年連続となるFLYING KIDSは<GBGB>には欠かせない存在として今年も登場。若い世代のメンバーを加えたバンドは史上最多の9人となった現在の布陣は、結成30周年を迎えてもみずみずしいパワーを漲らせており、デビューアルバム収録楽曲の新装バージョン「新・我想うゆえに我あり」も、オリジナルよりも音楽の芯の部分で彼らのシグネチャーでもあるファンクの破壊力が増している印象も残した。「新・我想うゆえに〜」も含み、この日は2月に発売された約6年半ぶりのアルバム『みんなあれについて考えている』からの楽曲が多く披露され、アルバムの制作時にリーダーの伏島和雄が「自分が思い描いていている音がやっと100%アウトプットできるようになった」と以前語っていたように、バンドの状態のよさはライブにも反映されており、30周年の貫禄と、今なお更新され続ける新鮮さは、世代を超えて客席の隅々まで魅了していた。ラストでは代表曲のひとつ「風が吹き抜ける場所」が披露され、会場全体がメンバーの動きに合わせて手を振り、サビを合唱する様子にはGBGBならではピースフルな空気が流れていた。

▲ORIGINAL LOVE

続くORIGINAL LOVEもまた大人の貫禄とみずみずしさが両立されたステージを披露。長身にブラックスーツをまとった田島貴男は、スウィング、ブルース、ファンクといったブラックミュージックを艶やかな歌声で翻訳しながら、日本固有のソウルパワーへ昇華し、広い会場をダンスフロアへ変えてしまった。代表曲のひとつ「接吻」では、オリジナル比100%増量された心地よいグルーヴが生み出され、その心地よさに身を任せながら客席全体が両手を上げて応戦。また田島貴男がほぼひとりで制作したアルバム『白熱』収録の「フリーライド」では、大所帯のバンドと、客席の男性チーム、女性チームの合唱を得ることで、新たなソウルパワーを楽曲に吹き込んだ印象があり、会場全体でライブを作り上げている光景を見ることができた。その客席側からのレスポンスに田島のプレイの熱も上がるばかりで、ラストで披露された「The ROVER」の後奏のジャムセッションは、いつ終わるとも分からないくらいに熱を上げ続けていた。

▲布袋寅泰

イベントの終盤は群馬が生んだロック・レジェンドの揃い踏み。登場前から「HOTEI」コールが鳴り続け、客席の期待値がMAXへ達した時、ドラムソロをきっかけにしたセッションから布袋寅泰が登場。レオパード柄のロングジャケットに身を包んだ布袋は、左足を高く上げる独特のダンス、チェック・ベリーばりのダックウォーク、ピート・タウンゼントばりの風車プレイ、弾き終えた時に天に向けて上げられる手の動きなど、弾く姿も含めて、その一挙手一投足には布袋とロックの歴史が培ってきたダンディズムが宿っていた。

「Battle Without Honor or Humanity」で幕を開けるセットリストの前半は、ソロとCOMPLEXの代表曲が繋がれる構成。「スリル」では「俺のすべては お前のものさ」のフレーズが強調されることで客席から歓声が上がり、「BE MY BABY」ではサビが合唱されるなど、地元ならではの温かなコール&レスポンスが展開。MCでも「ただいま」と布袋が第一声を上げれば「おかえり」と客席が応えるやりとりも。そんな地元に対して「同郷の太い絆で繋がっている」としながらも、ROGUEやBUCK-TICKの名前を出しながら布袋は「先輩、後輩なんて生易しい関係じゃなく、負けたくないライバル」という強い言葉と共に、「そんな仲間に出会えたことに嬉しく、誇らしく思います」と感慨深く言葉を繋いだ。そんな布袋の現在地を知らせるように披露された最新アルバム『Paradox』からの「ヒトコト」は、繰り返される「愛している」の言葉の中に自分を育ててくれた郷土への愛も含まれているように響いた。ステージの終盤にはBOØWYの「NO.NEW YORK」とソロの代表曲のひとつ「バンビーナ」が並び、セットリスト自体、布袋のキャリアを凝縮したような内容で、そこには18才で故郷を出て今も長い旅をし続ける布袋が自分を綴った手紙を直接届けに来たような趣を読み取ることができた。

▲ROGUE

2日間のイベントの大トリは初日のオープニングでも登場したROGUE。初日とはガラッとセットリストを変え、「世界で一番愛している 君のために唄を歌おう」のフレーズを嬉しそうに奥野が歌うことをきっかけにスタートする「LIKE A MOON」や「心を込めて歌います」という奥野の言葉と共に披露された「GOOD TIMES」は、2日の間にイベントに足を運んだ人や、出演アーティストも含めたイベントに関わったすべての人に向けての感謝のようにも聴こえた。セットリストは変われども、ハードなナンバーが並ぶ攻めの姿勢は変わらず、昨日、テンションの高い場所で歌い続けたにもかかわらず、丁寧に力強く言葉を紡いでいく奥野の歌に疲れの様子は一切感じられなかった。むしろ可能な限り動かせる手で煽りを入れてくるなど、内側から溢れて仕方がない思いのすべてを伝えようとするパフォーマンスは、満員の客席に初日とは違う形で強く胸打つものを残していった。

MCでは香川が8台目の福祉車両(GBGB号)の購入の報告と共に「群馬中にGBGB号が走るのが最高なので来年も続けます」と嬉しい報告もあり、冒頭のMCで奥野が「みんな何か心に残して帰れよ」と語ったとおり、あきらめることなく歌い続ける奥野の姿に励まされ、それを寡黙に支えるバンドの演奏に「自分が誰かの善意によって生かされている」ことを教えてくれるイベントは参加者それぞれの心に前向きな読後感を残していった。

1日目が“奇跡”というバトンが繋がれ、2日は “奇跡”が“夢”へバトンが繋がれていった……そんなことを感じながらイベントの余韻に浸っていると、“夢”にはまだ続きの物語が用意されていた。アンコールでバンドのメンバーが登場すると、丁度1時間程前に「また帰ってくるからね」の言葉を残して去っていった布袋が氣志團の綾小路を伴って登場。奥野を囲む形で披露されたBOØWYの「DREAMIN’」は、演者にとっても観る側にとっても夢のような時間で、プレイし終えた瞬間、布袋の口からも思わず「ROGUEとロックが大好きで、ROGUEの……いや、みんなのおかげで夢が叶いました」という感想が語られた。そのままの布陣で披露されたROGUEの「終わりのない歌」では布袋が奥野に歩み寄り抱き合うシーンも。

イベント当日の朝、日課のランニングの途中でイベントの成功を願うために神社へ立ち寄った布袋は、普段はそれほど気にしないにもかかわらず、なぜかその中に飾ってあった「今の幸せに気づかない人は幸せになれない」という言葉に惹かれたという旨を自分のステージで語っていたが、誰もが奇跡とその向こうにある夢を作る努力をしている人に支えられていることを教えてくれた<GBGB2018>は、今の幸せを気づかせるには十分な物語を残してくれた。

取材・文◎安部薫

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