【対談】AK-69×Toshl(X JAPAN)、衝撃コラボの顛末
■素晴らしい曲に巡り合えた(Toshl)
──Toshlさんはこれまでにヒップホップ、ラップには親しんできたわけですか。
Toshl:親しむというほどではないですけど、20歳か21歳の時に、一人でニューヨークへ旅に出たんです。その頃のニューヨークはラップ一色で、夜の公園とかに行くと、ラジカセを抱えた奴らが「Yeah, Man!」ってやっているんですよ。これが今流行ってるラップかと思った、それが32〜33年前ですね。カルチャーショックを受けて、それが始まりです。そのあと僕はロサンジェルスに住んでいたんですけど、その頃にMTVでRUN DMC×エアロスミスの「Walk This Way」が大ヒットしていて、ロックとラップのコラボレーションは30年前からあるわけですよね。そういった意味では、あの頃に感じた衝撃を今この年になってできるという、チャレンジできるという喜びがあって、桜が満開みたいな気持ちです。
AK-69:そもそもコラボレーションって、若いラッパーと話題のロックバンドとか、そういうものはあったと思うんですけど、今言ってたRUN DMCとエアロスミスとか、JAY-Zとリンキンパークとか……自分は日本に生まれてヒップホップを始めて、日本人のラッパーとして誰もやったことのないことを成し遂げて、その前にロック代表として、誰もやったことのないことを成し遂げたToshlさんと一緒にやるという、これって日本で今までなかったことだと思うんですね。日本はヒップホップの歴史が浅くて、でもこうやって歴史上の大きな、ジャンルを超えた、かっこいいコラボレーションなんじゃないかなって思いますね。
──両者の良さが見事に溶け合った曲だと思います。トラックはAKさんが用意したんですか。
AK-69:そうです、Toshlさんをイメージして。LAで作ってきたので、初めはもっと前衛的というか、洋楽寄りのものを作ってみたりもしたんですけど、そうじゃねえなと。レーベルのみんなとも話し合って、やっぱりヴァースはザ・AK-69で、フックはザ・Toshlというものをやるべきなんじゃないかということになって。自分たちが一番聴きたいものを作るべきだということで、あの曲ができたのも、すべて運命だったのかなと思いますね。歌詞も初めは全英詞で、それを日本語に直していって、さらに数か所修正して今の歌詞にたどりついたんですけど、結果それが一番ハマったし、本当にこの曲は二人で歌うために神様が与えてくれたんじゃないかというぐらい、ガシッとハマるものがありました。ただの話題で終わらない、結局残るものは素晴らしい楽曲と素晴らしいメッセージなんだという、そういうコラボレーションになったと確信しています。
──Toshlさんの、この曲の第一印象というと。
Toshl:曲ができた段階でデモテープをいただいたんですけど、最初からぶっ飛びましたね。これをとにかく早く歌いたいと思って、最初にお会いする日に、スタジオでミーティングするということで行ったんですが、10分も話さないうちにブースに入って歌っていましたね。とにかく歌いたかったんです。
AK-69:ワンツーパンチを食らったみたいなもんですよ。Toshlさんに会うこと自体がすごいことで、でも自分もアーティストだから、「ファンです」とも言えずに(笑)。凛としていなきゃいけないと思いながらも、偉大なアーティストなんで、まずToshlさんの姿が視界に飛び込んできた時点で「うおお!」という衝撃がありました。しかも挨拶もそこそこにブースに入られて、第一声を発した時の衝撃は、本当に鳥肌がすごかったですね。ワンツーパンチで昇天しました。言い方は悪いけど「これはもらった」と思いました。これは本当にヤバい楽曲になるって、Toshlさんが歌い始めた瞬間に確信しましたね。
──僕が感じたのは、AKさんが地上でもがいている人間で、Toshlさんが天から降り注ぐ神の声。そんなふうに強烈なコントラストを感じました。
AK-69:そうですね、まさに。生きているからこそ生まれる苦悩や葛藤の部分を俺が描写していて、Toshlさんがそこに光を差し込むという、そういう展開を自然に作ることができたなと思います。
▲「BRAVE feat. Toshl(X JAPAN)」配信用ジャケット |
AK-69:「自分の人生を思わせるようなリリックをありがとう」って、Toshlさんにも言っていただけたんですけど、自分はそこを狙って書いたわけではないんです。Toshlさんの人生を描こうなんて、そんなおこがましい思いで書いたのではなく、自分もこうやって生きてきたんですよ。才能があったといえばあったのかもしれないですけど、音楽だけで人を魅了できるような才能があったわけでもなくて、自分の名前を地道に売っていくしかないと、地べたを這いずりながらやってきました。ただ、本気で生きれば生きるほど、それに比例してネガティブも襲いかかってくるんですね。友達や仲間を何人も失って、去年親父を失って、こんなこと言ったらいけないんですけど、俺も死んで伝説になっちまいたいと思うことも、正直何度かあったんです。それでも、俺が生きている今日は、あの人たちが死ぬほど生きたかった明日なんじゃねえかと思った時に、たとえ夢が叶わなかったとしても、生かされてることに意味があるんじゃねえかと思うし、この命尽きるまで前に進むことに意味があるという、それを歌にできたことが、今回一番大きかったことだと思いますね。
──Toshlさんはそのリリックを、自分のこととして受け止めたわけですか。
Toshl:いや、もう、ドカーンとハートを撃ち抜かれちゃいましたね。AKさんは僕の人生を全部見てきたんじゃないか?と思うぐらい、深くグラブされたので、よくぞここまで書いてくれたと。ラップですからちゃんと韻を踏んで、言葉もかっこいいんですけど、その後ろ側にあるすごいパワーがぐいぐい迫ってきて、最後にバン!と背中を叩かれて、蹴りを入れられて、「前へ向かって行くぞ」と。僕も人生いろいろあったけど、もうひと踏ん張りやってやろうと思っていた矢先だったので、この歌をいただいて、自分に向けて旗を振ってくれているような気持ちになりました。AKさんは応援歌という言葉は使いたくないとおっしゃっていますけど、僕にとっては本当に力をくれる、背中を押してくれる、素晴らしい曲に巡り合えたと思っています。それを自分が歌わせてもらっているということに対して、ありがたい気持ちでいっぱいですね。
AK-69:これがたとえ同じ歌詞で同じメロディであったとして、ほかの人が歌っても、こういうふうにはならなかったと思うんですね。やっぱり音楽には生きざまがプラスされるというか、その人の人生やいろんなものが乗っかって、その人にしか出せないものになるので。まさにそれが今回、Toshlさんの人生と歌詞のメッセージがかみ合ったからこそ、この楽曲ができたのかなってあらためて思いますね。
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