【インタビュー】SUSHIBOYS、「自分達が思うヤバイ曲をアルバムって形でいっぱい出していきたい。そのスタートがこの『WASABI』です」
ジャンルを超えて注目を集めはじめるSUSHIBOYSが、『NIGIRI』に続くミニ・アルバム『WASABI』で晴れて全国デビュー。彼らがPVで何度となく映し出してきた、田園風景広がる埼玉の地元に根を張るその音楽は、本作でもヒップホップのハードなイメージを覆し、人懐っこく広がっている。兄弟2人と幼なじみの気心知れた関係を今も続ける彼らの、普段着ぶりが垣間見えるインタビューをどうぞ。
◆SUSHIBOYS~画像&映像~
■SUSHIBOYSの名刺として一番おいしいところを配れればなって
■アヒルボートをジャケットにしている人もいないと思うんで
――ヒップホップのコアなイメージから外れるというか、それを裏返すような打ち出しは、そもそもグループの初期設定として考えてたものなんですか?
ファームハウス:どうなんすかね。外れつつ、さらに自分達の普段の生活の一部にあるものというか、日常的なところ切り取ってくっていうのは結構意識してるところではありますね。
――そういえば、プロフィールにはグループの結成当初は“スーパーギャングスタスタイル”だったともありますよね。それってどういう……?
サンテナ:いや、もうスーパーギャングスタっすよ。スーパーなんで。相当ハードっすよ(笑)。
――じゃあそうさせるハードな境遇に育ったとか?
ファームハウス:(それは)ないです(笑)。憧れてたのがあって。ワナビー(wanna be)ですよね、いわゆる。
――それがどうして今の感じになったんですか?
ファームハウス:ライヴでやったんですよ、スーパーギャングスタスタイルを。そしたら思ってたのと違うな、盛り上がんねえなみたいになって。で、他の演者の人達を見ていても自分らと同じこと歌っていて、「うわぁダセえ」って思って。もっと嘘をつかないで等身大のものを作ろうってなってこうなりました。
――つまり他と違うことをやろうっていうより、むしろありのままを表現したらこうなったっていう。
ファームハウス:そうっすね。違うことやろうって感じじゃなかった。自分達の本当の部分、あるものを使って頑張ろうみたいな。結果的に狙っちゃってる感じにもなっていますけどね。
エビデンス:たしかにそうだな。武器を増やすより、自分たちの武器を強くしていこうってなってこうなったから。でもギャングスタスタイルもやりたいですけどね、俺。
サンテナ:俺もギャングスタになりてえ。
――はは。今となっては、そういう姿を想像できませんけど。
エビデンス:いや、最終的には俺、ギャングスタになろうと思っていますから。
ファームハウス:だから次のアルバムはわかんないすよ。
――急にギラついたギャングスタになってるかもと(笑)。ともあれ、今回リリースの『WASABI』はグループ初の全国流通盤ということで。
ファームハウス:そうですね。結構ここまであっという間だったし、全部地元で作った音楽が全国流通するっていうのはうれしいです。やっと届いたって感じもあるし。
――地元は埼玉の越生町(入間郡)でしたね。
ファームハウス:自分達で一軒家を借りてマイクを買ってスピーカーを置いたSUSHIHOUSEっていう自分達のスタジオがあるんですけど、この作品も相変わらずそこでレコーディングして完結しています。
――スタジオの周りの環境はどんな感じなんですか?
ファームハウス:なんもないです。田んぼと山と川と。
――じゃあ一連のPVで見るような感じの。
ファームハウス:そうですね。
サンテナ:人間はいないですね。どっちかって言ったら獣が多いっす。
▲ファームハウス
――メンバー以外で周りに音楽を共有するような仲間はいたりするんですか?
サンテナ:お父さんとかお母さんだよね(笑)。
ファームハウス:(両親には)毎回聴かせていますね、「どう?」って。友達もいないんで。
サンテナ:あとは基本、獣っすねやっぱり。生えてる木とか。
――そうなんですか(真顔で)。音楽を鳴らすと、獣や自然が応えてくれるとか?
サンテナ:うん、やっぱりずっと住んでいるんで、ある程度わかりますよね、気持ちとか。その日の木の具合とかで。
ファームハウス:木目の感じでね。
サンテナ:でも、これ結構ホントで、田舎の人特有の、今日はちょっと森が荒ぶってんぞみたいの感じたりするんですよ。
――じゃあそういうことが曲に反映するようなこともあったりして?
サンテナ:あります、あります。
ファームハウス:カエルとかセミの音からラップのグルーヴとかフロウ、メロディを作ったりとかはありましたね、やっぱり。
▲サンテナ
――へえ、そんなことが。
エビデンス:でもやっぱあの環境でやれてることは自分達の自信にもつながってるっていうか、あの状況でやっているからこそああいう曲も作れるし、それが糧になっていくじゃないかな。これからまたもっと上を目指してクルーでやっていこうと思っているんで、どんどん環境も作品もレベルアップして先につなげられたらいいなと思っていますけど。
――なるほど。今回のミニ・アルバムの話に戻りますけど、そもそも制作自体はいつ頃どのように始まったんですか?
ファームハウス:前回の『NIGIRI』が(2017年の)10月に出て、その後すぐでしたね。結構すぐ次のを出そうってなって。そっからひたすら曲を作って、その中でいくつか曲がたまってきて、いい曲を6曲選んで入れたっていう。
――具体的にどんな作品にしようと?
ファームハウス:ストーリーとかは特に考えてなくて、いわゆる衝撃ですよね。『WASABI』っていうぐらいなんでスパイスっていうか、オッ! みたいなインパクトを残そうっていう。やっぱ初めて全国流通だったんで、SUSHIBOYSの名刺として一番おいしいところ、わかりやすさと他のアーティスト達にないものを配れればなっていうのもあったし、アヒルボートをジャケットにしている人もいないと思うんですよ。
――たしかに。アーティストってカッコつけてなんぼみたいなところもありますからね。
ファームハウス:まず第一にラップが上手いんですよ、自分ら結構。
――それ自分で言っちゃいますか。
ファームハウス:はい。ホントに第三者から見てもそこそこ上手いと思うんで。このアルバムのタイトルと、このトピックスでちゃんと聴かせられるラッパーってほとんどいないと思う。「アヒルボート」って歌ってたらダサくなっちゃうんですよ、基本的には。でもやっぱ自分達ラップが上手いんで……。
――ダサくはならない、と。
サンテナ:そこは間違いないです。
――最初の方で日常を切り取るって話ありましたけど、今回曲にしたようなトピックの数々も、やっぱり日常の中から出てきたものなんですよね。それぞれの曲のアイディアはどのように生まれたんですか?
ファームハウス:やっぱ普段の会話の中と、あとは見てる景色ですかね。結構軽自動車で走ってる時に出てくることが多い。「アヒルボート」だったら、自分らの住んでいるところの近くに鎌北湖っていう湖があるんですけど、そこにアヒルボートがあって、それを見てたらなんか面白いなって。それでアヒルボートを自分達に例えて、湖から抜け出して海まで行こうみたいな。その海が自分達の目指してる、例えば武道館だったりそういう夢の目的地みたいな感じで、ストーリーを作って書いていくみたいなのが、アヒルボートを見た瞬間に浮かんだんですよ。これだ! みたいに。
▲エビデンス
――それが、ここからどこかへというマインドを曲にしたものだとすると、「旅に出よう」も近い内容にも見えますが。
ファームハウス:「旅に出よう」は結構ストレートで。自分の周りもそうなんですけど、今みんなあんまり外に出たがらないというか、海外にあんま行っていないのかなと思って。自分はフィリピンに行ったり、インドに行ったり、海外に結構行っていて、それが自分の人生にとってすごい重要な部分になっているんで、みんなも新しい自分を見つけるためにも、もっといろんなところへ行ったらいいっていうメッセージですね。
エビデンス:俺もフィリピン行った時にカルチャーショックを受けて、自分がデカくなったのがわかることがあったんですよ。そこから結構スイッチが切り替わったんで、みんなも海外に行ったら今までにない経験もすげえできると思うし。
――その経験が引いては音楽活動にもプラスになったと。
ファームハウス:自分は特にそうでしたね。2年前になるんですけど、フィリピンには10カ月ぐらい行っていて。フィリピンって治安もあんまりよくないし、生活も豊かじゃないんですよ、ホント自分の友達も日銭を稼いで暮らしてるみたいな感じで。そういう人達としゃべっている間に、自分の環境がどれだけ恵まれてるかに気付いて、挑戦できる環境があるなら挑戦したほうがいい、ホントにやりたいことやろうって思わせてくれたんです。
エビデンス:たしかに。向こうの人達って家がそういう家だから、生まれたら親の仕事を継ぐしかないみたいな人達が多くて。だけど日本人って裕福な家庭が多くて、いろいろ挑戦できる立場に生まれたのに挑戦しない人が多いし、やりたいことやれる環境に生まれたんだったらやるべきですよね。
――つまり、そこで言う“挑戦”が、みなさんにとっては音楽だったというわけですね。
ファームハウス:そうですね。自分の親は厳しいってわけじゃないんですけど、サラリーマンになってしっかり家庭を持たせたかったと思う。でも、自分の中の幸せはそれじゃないなって。日本で生まれた時点で、インターネットもあって、すぐに全国の人に聴いてもらえてっていう状況もあって、世界的に見たらだいぶ恵まれてますし、今は両親も応援してくれているんで。
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