【インタビュー】みそっかす、10年かけてたどり着いた“本当の原点回帰”
■和装を脱ぎ捨て「30歳の誕生日までにメジャーデビュー」
――2013年の作品は3rdミニアルバム『三次元への回帰』ですが、はるきちさんは以前、このあたりの時期から“みそっかすらしさ”を考えるようになったとおっしゃっていて。
はるきち:そうなんですよ。でも“らしさ”って、第三者が作るものですよね。それなのになぜか僕自身が“みそっかすらしさ”を気にするようになってしまっていて――それは周りの意見や周りの目をめちゃくちゃ意識し始めた時期かなと思っていて。それが『三次元への回帰』。そんなことばっかり気にしていたし、そんな話ばっかりしてた。
ブルマン:うんうん。そうですね。
はるきち:こういうミュージックビデオを撮ったら周りからどう見られるだろうか、この曲をリードにしたらどう思われるだろうか……。そういう話し合いが、僕らは向いてなかったんですよね。ケンカになっちゃう。それでスタジオが楽しくなかった。さらに、さっき言ったみたいに練習もしないから、みんなどんどんヘタクソになるんですよ。だからライブをやると「お前のここのミスが悪い」とメンバーに対していらいらして「お前ちゃんと練習しろよ」って。
ジャンボリー:もうそういうこともまったくわかんなくなってましたよね。俺は大学をごりごりに留年していて、みそっかすを始めて休学したんですよね。おまけに家がボンボンなので、働かなくても全然平気で。ドラムの腕に関して誰もなにも言ってこないし、ただただなんとなくドラムを触っていた……ほんとゴミみたいでしたね。
マイケル:「衣装を着たバンドは行けてZeppまでだよ」と言われて。
はるきち:それを真に受けて「俺らはZeppで止まるバンドじゃねえ、ホールに行くんだ! SEKAI NO OWARIと戦うんだ!」と言って和装をやめるわけです。スーパーマネージャーはひらがなで着物のみそっかすが面白いと思って声を掛けてくれたのに、僕らは僕らで事務所との距離感をよくわかってなかった。だからがっつりした話し合いもしないままに、着物を脱ぎ捨ててカタカナにしようと。事務所に事後報告でした(笑)。
――では4thミニアルバム『統一された混沌(カオス)』は、そんな殺伐とした環境のなか作られたんですか?
はるきち:そうです、そうです。本当の意味で“混沌(カオス)”です。
マイケル:“統一”なんてまったくされてなかったですからね。地元の友達に聴かせたら「このバンドはなにがしたいの?」と言われました。曲の頭数を揃えることもいっぱいいっぱいでした。
ジャンボリー:『統一された混沌』の制作時期、ストレスフルすぎて全然記憶がないですもん。
はるきち:俺も記憶ないなあ。曲を作る元気もなかった。おまけにそれまで俺が仕切ってたぶん、事務所に所属してからほかのメンバーが反旗を翻した感があって、四面楚歌状態だった。意見が言えなかった。
ノブリル:俺はNo Big Deal Recordsと一緒にやるようになって出会ったサウンドディレクターさんから評価してもらって。認めてくれる人がいてすごくうれしかった。
はるきち:そうだね。そこからノブの曲が多くなってきたんです。
――こんなことを言うのは失礼かもしれないですけど、なぜバンドが解散せずに続いたんですか?
はるきち:2013年からぼろぼろ出てましたよ、解散の話。
ノブリル:でも「はるきさんが30になる5月までにメジャーデビューみたいな、なにかしらのターニングポイントがなかったら解散しよう」という話が出ていて。そのリミットがあったから続けてこれた気がします。
――ということはバンド間は殺伐としながらも、このバンドへの可能性や、このバンドを信じる気持ちは持っていらっしゃったということですよね。
はるきち:それはあったかもしれないですね。やっぱり、もともとみそっかすはすごく楽しかったから。「きっと元に戻れるはずだ!」とみんなどこかしら思ってたと思うんです。
ブルマン:学生の時、すごく楽しかったんですよ。
ノブリル:うん。バンドが解散したら普通に友達になるんだろうなとは思ってた。
はるきち:学生時代は「俺こんな音楽見つけたんだけど!」なんて言って聴かせて「わ、かっこいい! 俺もCD買う!」って感じだったし、初期の頃はみんなで車から流れる音楽を聴いてたよね。でもその時期はヘッドフォンで各々好きな音楽を聴いていたし、俺は音楽を嫌いになっていた時期かもしれない。
ノブリル:自分にヒットする曲がだんだんなくなってきちゃったところもありましたよね。Museみたいな衝撃を得ることがなかった。自分がバンドをやっていたから尚更かもしれないですけど。
マイケル:あ、ノブリルさん的にはロックシーンがクソだったということですか?
ノブリル:うん、そういうところは正直あったよね。
はるきち:僕らはUKロックの盛り上がりとともに成長してきた世代でもあるから。たしかにそういうパイオニアみたいな存在はいない時期でしたよね。
ノブリル:洋楽でもバンドでビビッと来るものが少なかった。だからその時期AviciiとかGabrielle Aplinとか聴いてたんだよ。バンドならImagine Dragonsくらいかな。でもはるきさんはImagine Dragonsに全然ピンときてなかったし、メンバーに紹介しようかなと思っても「きっと好きじゃないだろうな」と思って言わなかった。
――なかなか抜けだせない暗黒期。そんななか2015年6月に1st EP「ゴールデンミソアワードEP」をリリースし、同時にavex traxからのメジャーデビューを発表します。
はるきち:「30歳の誕生日までにメジャーデビュー」と言っていたら、本当に30歳になる直前にメジャーデビューのお話をいただきました。メンバーと会うのもいやだし、音楽も嫌いになってきてたし、バンド活動に生産的なことをまったく感じていなかったんですけど、それでもミソッカスが終わるのは悲しいなと思っていたんですよ。メンバーもみんなしゅんとしていることがわかっていたので、「2015年の5月でバンドが終わったらどうするの?」とちょっとずつ話をするようになってきていた時期でもあったんですよね。そんなときにメジャーの話が舞い込んで……。
ブルマン:うん。バンドが続けられる!と思った。
ジャンボリー:そうだね。「これで売れる!」とかじゃなかった。「これでなんとか続けられる!」だった(笑)。それがいちばんうれしかった。
はるきち:うん。うれしかったね。あれだけ苦しい状況でも、俺は音楽を続けたかったんだなーと思って。それにびっくりしました。
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