【ライブレポート】清春、全42曲約6時間のカウントダウン公演「日本で一番美しい夜になります」
2017年12月31日、名古屋ダイアモンドホールにて、清春のカウントダウンライヴ<『'17 FINAL』 NEW YEAR COUNTDOWN>が行われた。毎年恒例となっていた年末の大阪公演を引き継ぐ形で、今回は場所を名古屋に移しての開催である。
◆清春 画像
2017年末、トータル66公演にも及ぶ東京・渋谷マウントレーニアホールでのマンスリー・プラグレス公演<エレジー>を終えたかと思えば、クリスマス・イヴには異例の深夜公演<Xmas LIVE『MIDNIGHT BIRD』>を敢行、更には、大晦日前日のファンクラブ限定公演で3時間半にもわたるパフォーマンスを見せた清春。彼の並外れた喉の強靭さと、2017年の精力的な活動を目の当たりにしてきたファンにとっては、待ちに待った宴の時だ。
定刻の午後11時を15分ほど過ぎた頃、場内が真っ暗に。SE「receive a revelation」が鳴り響くと、フロアが一斉に沸き立つ。バンドメンバーが各々の配置につき、清春がゆっくりと姿を現すと、敬愛と憧憬が入り混じった歓声が飛び交う。そんな観客の声を浴びて、両手を大きく広げて応える清春。
煙草をくわえてギターをかき鳴らすロックスターがこの夜の1曲目に選んだのは「予感」だった。自分がどう見えればカッコいいかを知り尽くしているかのようなその所作に、思わず惚れ惚れしてしまう。「ハロー 名古屋!」と一言発した彼が続けて披露したのは「confusion」。この曲で会場の一体感が更に増すと、その後も心地よいメロディとビートが畳み掛けられてゆく。観客の表情は咲き誇る一方だ。
「よく集まってくれました。今日は名古屋で、なんなら東海地方で、中部地方で、もっと言えば、日本で一番美しい夜になります。幸せな夜を過ごしましょう」──清春
そんな宣言に導かれて「JUDIE」が投下されると、ダイアモンドホールにはますます華やいだ気分が広がってゆく。この夜のバックバンドは、中村佳嗣(G)、大橋英之(G)、三代堅(B)、GO (Dr)という編成。確かな技術と愛すべき人柄といった彼らの演奏に支えられ、清春は今夜も思う存分、歌い、舞っている。
「(カウントダウンまで)あと20分ぐらいだね。(それまでに)何曲できると思う?」と観客に語りかけ、場を和ませる清春。「EDEN」を途中からやり直すなどの微笑ましいハプニングもありつつ、次から次へと情感たっぷりの歌を響かせる彼の技に翻弄されているうちに、その時は近づいてくる。ここまでMCらしいMCを挟まずに、普段よりもややハイペースで歌ってきた清春が「garret」の演奏を序盤で中断。
「2018年、20秒前!……10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、HAPPY NEW YEAR! 名古屋、あけましておめでとう! (ここまで)予定してた曲の半分もできてないよ(笑)。あとは長いんで。手短に年が明けて良かったです」と彼独特のユーモアで場を温めると、観客たちはこの瞬間を共有した幸せを噛みしめていた。
「名古屋! 2018年1発目行きます! 飛ぼう、もっと高く!」という言葉に導かれ放たれたのは、光り輝くフロアが眩しい「SLIDER」。この曲のサビのコール&レスポンスを何度も繰り返す清春とオーディエンスの表情は幸福そのもので、涙ぐんでしまいそうになるほど素晴らしい。新年ならではの特別な趣向が着地点を迎えると、激しい毒々しさを含んだ「Tarantula」や澄み切った美しさの「星座の夜」などが続く。最後は「HAPPY」で締め括った第一部を温かい拍手が包む頃、時計の針は午前0時50分を指していた。
ここでしばしの休憩を挟み、その間にシンプルなステージが整えられてゆく。午前1時10分を回った頃に再開された舞台上には、見覚えのあるランプが設置されている。“PLUGLESS”の始まりだ。「もしかしたら」という淡い期待もあったが、東京・渋谷マウントレーニアホールでの<エレジー>公演の再現は、ここ名古屋に集ったファンにとって嬉しいサプライズとなった。
中村のエレキギターと大橋のアコースティックギターを従えて、清春が歌い出したのは、甘く優しい「ストロベリー」。大胆かつ繊細に情景を彩り、観る者の魂を吸い取るかのような彼の歌唱の凄みは、ここダイアモンドホールでも変わらない。極めてスモーキーな「GENTLE DARKNESS」、深い地点にまで聴衆を引き込む「空白ノ世界」、孤独を愛する強さを歌った「アロン」などの全7曲約1時間に及ぶ至高の芸術。清春が発する声の一つひとつをスタンディング形式で見守ったオーディエンスの集中力も印象深かった。場内に万雷の拍手が響く頃、時計は午前2時を15分ほど回っていた。
約10分のセットチェンジを挟み、この祝宴もいよいよ第二部へ。圧倒的な<エレジー>の世界に浸った後は、再びバンド形式での演奏が目の前で展開される。「赤の永遠」で幕を開けると、ここからは、2018年2月末に発売予定のアルバム『夜、カルメンの詩集』の収録曲を軸とした、パッション溢れる楽曲の数々で観客を魅了。「赤」を連想させる華麗な音楽が場内を染め上げてゆくさまが刺激的だ。時にダンサブルに、時に危険な香りを漂わせるこれらのナンバーは、既存の曲との相性も抜群。「ベロニカ」や「RUBY」でワイルドかつグラマラスに聴衆を煽動すると、清春は思わせぶりにつぶやいた。
「今日はファンクラブオンリーじゃないから、余計なことをしたくないと思っていたんですけど……」と前置きしながらギターを爪弾き歌い出したのは、まさかの「NITE & DAY」だった。演奏の手を止めたバンドメンバーがじっと見守るなか、即興で弾き語りをする清春。“朝も夜も君に逢いたい 濡れた髪をなぞっていたい”のサビの一瞬一瞬を大切にしながら大合唱する観客の姿には心打たれるものがある。思いがけずほぼフルサイズで披露された名曲に対して、大絶賛の拍手が鳴りやまない。だが、この名場面から瞬時に切り替えて「Masquarade」「Wednesday」といったゴージャスなロックンロールを轟かせるのが清春のニクいところだ。絶唱と呼ぶにふさわしい「LAW’S」の余韻を味わったのが、午前4時を5分ほど過ぎた頃。この曲をもって、めくるめく第二部は幕を閉じた。
まだまだ元気なオーディエンスのアンコールに応えて、「赤裸々」が披露されると、場内の熱気はいよいよ上昇。「Feeling High & Satisfied」「ALIEN MASKED CREATURE」「COME HOME」といった烈しい楽曲が次々と放たれる光景は、まさしくクライマックスの連続だ。
「今年も清春のライヴにたくさん来てください。いろんなアーティストや音楽がその時々にあっていいと思うんですけど、他は全然関係ありません。僕はみんなが僕のことを一番カッコいいと信じてくれてると信じてます!」──清春
と自信たっぷりに語る姿が神々しい。一旦ステージ袖に退場した清春たちが再び姿を現し、二度目にして最後のアンコールが始まる。「“休憩ソング”だから、トイレに行ってもいいよ」と告げながら清春が奏で始めたのは「忘却の空」だ。近年あまり披露されることのなかったこの名曲も<エレジー>などの表現形態を経た今となっては、非常に新鮮に聴こえる。「今年デビュー25年目ということで、この曲も近いうちに録り直したいなと思ってて」と彼が述べていたのが印象的だった。
「今日はありがとう。長い時間、とっても幸せでした。今年もよろしく。貴重な一年を一緒に過ごしましょう。僕は一生懸命やりますんで、みんなは軽い気持ちで来て、いい思い出にしてください。25年もやってきて、もう話すことがないのが素晴らしいと思ってます。ありがとう。愛してます、名古屋」。そんな優しい言葉に彩られた「EMILY」を聴く時間がやって来た。いつまでもこの時間が終わってほしくないと誰もが思ったことだろう。
「名古屋! あと1曲! 笑って帰って、泣いて会いに来て!」と叫ぶ清春が最後の最後に歌ったのは「あの詩を歌って」。「この年になって、一人だとしたら絶対にこんなに長時間歌えないと思うんです。みんなのおかげで歌えてるんです。みんながいれば、何曲でも歌える自信あります。仮に今日の7時からライヴだとしても、みんながいたら声が出る自信があります。若い時よりも声が出るのは、みんなの力だと思ってます」。そう告げて、この場のすべてを抱きしめるように歌う清春。“これを奪うなんて出来ないよね”の力強い歌声が響きわたり、この日用意された全楽曲が終着点を迎える頃、時計の針は午前5時35分を示していた。バックドロップに掲げられた真っ赤なバラが金色に輝くような、彼にしかできないカウントダウンライヴだった。
通常公演の約3本分、実に40曲を超える熱唱。トータル約6時間にわたって繰り広げられた祝宴は、その長さ以上に、1曲1曲が深く心に刻まれるライヴだった。これだけ達成感のあるパフォーマンスを経ても、清春の眼差しは遥か彼方を捉えているように思える。そんな彼と共に作り上げてきた歌と歴史があるからこそ、ファンは皆、豊かな人生を送ることができるのだろう。
2018年も、清春と彼を見守る人々には、言葉では言い表せないくらいの幸せが充満しそうだ。25回目のデビュー記念日である2月9日には、岐阜club-Gにて記念公演<KIYOHARU 25 TIMES DEBUT DAY>が開催される。また、2月末には、現在レコーディング中のアルバム『夜、カルメンの詩集』がリリースされる運びとなっている。それに伴い、2月23日の大阪BIGCATを皮切りに<TOUR天使の詩 2018「LYRIC IN SCARLET」>と銘打たれたツアーも予定されている。
「最愛」を全身で示し続ける人たちの集う場所は美しい。今年デビュー25年目、ソロとしては15年目を迎えた清春は、今後も思いがけない悦びをもたらしてくれるに違いない。忘れがたい時を重ねることの尊さに気づかせてくれる名演だった。
取材・文◎志村つくね
撮影◎森好弘
■<『'17 FINAL』 NEW YEAR COUNTDOWN>2017年12月31日@名古屋ダイアモンドホールSETLIST
予感
confusion
club『HELL』
JUDIE
EDEN
夢心地メロディー
DIARY
JUBILEE
garret
SLIDER
Tarantula
退廃ギャラリー
星座の夜
HAPPY
<PLUGLESS>
ストロベリー
すれちがい
GENTLE DARKNESS
シャレード
空白ノ世界
アロン
ゲルニカ
<第二部>
赤の永遠
夜を、想う
アモーレ
罪滅ぼし野ばら
ジプシー
眠れる天使
ベロニカ
RUBY
NITE&DAY
Masquarade
20th Century Boy
バラ色の夢
LAW’S
<ENCORE>
赤裸々
Feeling high & Satisfied
ALIEN MASKED CRETURE
COME HOME
<ENCORE>
忘却の空
SANDY
EMILY
あの詩を歌って
■アルバム『エレジー』
【完全初回生産限定 2CD+DVD】COZP-1402-1404 ¥5,000+tax
<DISC1“elegy”>
01.LAW’S
02.ゲルニカ
03.アロン
04.rally
05.GENTLE DARKNESS
06.夢
07.カーネーション
08.この孤独な景色を与えたまえ
09.輪廻
10.空白ノ世界
<DISC2“elegy”poetry reading>
1.LAW’S
2.ゲルニカ
3.アロン
4.rally
5.GENTLE DARKNESS
6.夢
7.カーネーション
8.この孤独な景色を与えたまえ
9.輪廻
10.空白ノ世界
11.YOU
<DISC3“elegy”performance(DVD)>
▼LIVE AT Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
サロメ/陽炎/瑠璃色/lyrical/rally/alice/シャレード
▼MUSIC VIDEO
「LAW’S」
■アルバム『夜、カルメンの詩集』
【完全初回生産限定盤 2CD+DVD】COZP-1411-1413 ¥5,000+tax
【通常盤 CDのみ】COCP-40251 ¥3,000+tax
■<KIYOHARU 25 TIMES DEBUT DAY>
■<KIYOHARU TOUR 天使の詩2018『LYRIC IN SCARLET』>
2/24(土) 金沢EIGHT HALL
3/02(金) 仙台Rensa
3/16(金) KYOTO MUSE
3/17(土) KYOTO MUSE
3/21(水・祝) 柏PALOOZA
3/24(土) 長野CLUB JUNK BOX
3/31(土) 札幌PENNY LANE24
4/07(土) 青森Quarter
4/08(日) 盛岡Club Change Wave
4/13(金) 名古屋 BOTTOM LINE
4/14(土) Live House 浜松窓枠
4/28(土) 鹿児島CAPARVO HALL
4/29(日) 長崎DRUM Be-7
5/03(木・祝) EX THEATER ROPPONGI
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