スティーヴ・ルカサー、個性派プレイヤーたちと魅せた圧巻の東京公演

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スティーヴ・ルカサーが率いるプロジェクト“Nerve Bundle”の単独公演が、12月19日(火)、東京・ビルボードライブ東京にて開催された。

◆12月19日東京公演 画像

毎年12月にだけ活動する“12月限定バンド”だというNerve Bundleは、ジェフ・バブコ(Key)、ヨルゲン・カールソン(B)、トス・パノス(Dr)ら、ルカサー肝煎りのメンバーが集結したジャム・バンドだ。TOTOのデビュー40周年ツアーも目前に控える中で実現した今回の来日公演では、名古屋、東京、大阪の3都市で5夜にわたってライブを行なう予定となっている。

以下、東京初日となった19日(火)公演のオフィシャルレポートをお届けする。

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今、最も多忙を極めるギタリスト、スティーヴ・ルカサー(ルーク)が“毎年12月にだけ活動するバンド”、Nerve Bundleを引き連れビルボードライブ東京に登場した。チケットは発売と同時にほとんどが売り切れ、変わらぬ人気の高さを証明してくれたが、TOTOのデビュー40周年が目の前に迫り、今改めて大きな注目を集める彼だけにそれも当然と言えば当然か。

「(今回のバンド名)Nerve Bundle(神経の束)は“男性自身”の先端を表す卑猥な言葉なんだ」、少し前の電話インタヴューでルークはそう説明してくれたが、そこでは「今回のバンドは殺人級ジャム・バンドで、いろんな音楽が渾然一体となったクレイジーなフュージョン・バンドだ。ビルボードライブのような会場にはもってこいのバンドだと思う」とも語っている。ルークとラリー・カールトンとの共演ライブにも参加していたジェフ・バブコはキーボードをおもちゃのように操る曲者的存在で、彼はルークが2005年に発表したクリスマス・アルバム『Santamental』でもアレンジ&キーボードでユニークな音楽性をアピールしていた。そしてドラムスのトス・パノスもカールトンのグループでよくプレイし、他にもマイケル・ランドウ、ロベン・フォードなどスーパー・ギタリストとよく共演しているL.A.のトップ・ミュージシャン。彼も非常に個性的なプレイをする。そしてベースのヨルゲン・カールソンは人気ジャム・バンド、ガヴァメント・ミュールのメンバーで、まさにルークがこのバンドに求めるものを120%打ち出せるプレイヤーだ。


そんなメンバーと繰り広げる今回のギグ。オープニングはTOTOのライブでもルークがソロ・コーナーでよく披露するロビン・トロワーの曲、「Bridge Of Sighs」だった。結果的にこの夜、唯一となるヴォーカル・チューンだったが、2台のマーシャル・アンプでエッジの効いたサウンドをかき鳴らすルークに、ヨルゲンの唸るベースが絡み、しなやかにビートするトス、その融合で早くもルークの目指すサウンドが見えてきた感じがする。そして、「ビルボードライブのような会場にもってこいのバンド」というルークの言葉に大きく共感してしまった。そう、これは、ノース・ハリウッドの有名なライブ・ハウス、The Baked Potatoでやるようなインティメイトなギグの拡大版であり、ポップな曲でオーディエンスとの時間を共有するのではなく、あくまでもプレイヤーの個性、音楽性を自由奔放的に解放した時間、まさにそれなのである。しかし、では、ステージに立つミュージシャンたちの自己満足のプレイかと言うと決してそんなことはない。続く2曲目はお馴染みの「Christmas Song」で、ライティングにも雪の結晶を施し、その雰囲気を盛り立てている。ここではBセクションで“ハウス・パンク風(!?)”のビートを取り入れ、またまたジャム・バンドとしての本領を発揮。


かと思うと3曲目はジェフ・ポーカロに捧げたバラード、「Song For Jeff」で会場に静なる叫びがこだまする。バブコのキーボードとのデュオ的な演奏で始まるこの曲ははまさに息を飲む瞬間だ。左手と右手、そしてハートが三位一体となり、エモーショナルに歌いまくるギター。この曲を聴くとルークのライブに来ているという実感が何倍にも膨れ上がる。また、この曲でのバブコのソロも実にジャジーで良かった。本当に奥の深い、いや、深すぎるプレイヤーで、何をやらせても完璧にこなす天才、しかも自分のスタイルで。こういうプレイヤーはロックの世界ではなかなか巡り会えない。

その後はジェフ・ベックの「Brush With The Blues」も登場し、ルークが彼から如何に影響されたか、彼がどれだけベックに憧れているかを再確認することができた。そしてインタヴュー時に「TOTOの曲もやるよ! “I'll Be Over You”ではないけれど(笑)」と語ってくれたが、本編ラストでそれが登場した。1992年の『King Of Desire』に収められていたインスト「Jake To The Bone」だ。ロックなテーマ(リフ)とフュージョン的コードの対比が堪らないこの曲でのソロが一番ルークらしさを輝かせていた。歪んでもナチュラルなトーンを満喫出来る1曲だった。


そしてアンコールはバブコがアレンジした「Silent Night」。前述の『Santamental』にも収められていたこの定番曲で幕を閉じる構成もやはり12月限定バンドならでは、といったところか。ここでは原曲が3拍子であることを再認識させるビート感でまたまた彼らだけの世界を醸し出していた。そうして見終えた感想、結論はやはりどんな編成でどんな曲を演奏しようと、スティーヴ・ルカサーはスティーヴ・ルカサー以外の何物でもない、という部分だ。それでいて、ではTOTOと同じか、というとそれが全く別物、という一種の矛盾が生じるところがまた面白い。表のルークと裏のルーク、その表裏一体の彼を満喫した、という感じだ。そして、7曲で約75分という尺はまさにThe Baked Potatoでのギグの延長だ。しかし、ノリ一発でやるプレイではなくもの凄く真摯に取り組む様がひしひしと伝わってくる、そんな真面目なバンドだった。アルコールをやめる前のルークだったら同じ曲、同じアレンジでもまた世界がガラッと変わっていたのだろうな、そう思わずにはいられなかった。アンコールを終えた最後、オーディエンスに向かって深くお辞儀をする姿勢にもそれを感じずにはいられなかった。インタヴューでは相変わらず早口で豪快に喋りまくるロックン・ローラーそのものだが、ステージではスピリットこそロックそのものながら、しかし、音楽に対する取り組み方は実にジェントルマン。少し前に還暦を迎えたから、ではないが、心情的な変化はいろいろなところに溢れている感じがした。まぁ、それはともかく、TOTOでのライブは常に武道館クラスというルークがこの規模の箱で観られるというのは本当に貴重だ。是非これからもTOTOとは違ったプロジェクトでも頻繁に日本に戻ってきてほしい、12月限定と言わず何月、どの季節でも……。

TOTOのデビューから間もなく40年となる今も、日本のギター・キッズにとっては貴方は”神”のような存在なのだから。


Text by 中田利樹
Photos by Masanori Naruse

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ツアーは本日12月20日(水)の東京公演を経て、12月21日(木)、22日(金)の大阪・ビルボードライブ大阪公演へと続く。

■ライブ情報

<スティーヴ・ルカサー ‘Nerve Bundle’>
2017年
12月18日(月) 愛知・Bottom Line 名古屋
公演詳細: http://www.bottomline.co.jp/pickup/p1712/#171218

12月19日(火)、20日(水) 東京・ビルボードライブ東京
公演詳細: http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=10595&shop=1

12月21日(木)、22日(金) 大阪・ビルボードライブ大阪
公演詳細: http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=10596&shop=2

メンバー
スティーヴ・ルカサー / Steve Lukather(G,Vo)
ジェフ・バブコ / Jeff Babko(Key)
ヨルゲン・カールソン / Jorgen Carlsson(B)
トス・パノス / Toss Panos(Dr)

■リリース情報

スティーヴ・ルカサー『セッション・ワークスII』
2017年11月22日(水)発売
SICP31101 ¥2,000+税
※スティーヴ・ルカサー本人による全収録曲解説付
※選曲監修・解説:中田利樹
※歌詞・対訳付
※高品質Blu-specCD2仕様
1.「ホワイト・シスター」TOTO
2.「ラニング・ウィズ・ザ・ナイト」ライオネル・リッチー
3.「アイム・フリー」ケニー・ロギンス
4.「ヒズ・ワールド」ジミー・ウェッブ
5.「シーズ・ア・ビューティ」ザ・チューブス
6.「リーヴ・ミー・アローン」エアプレイ
7.「悲しみを越える道」アース・ウィンド&ファイアー
8.「ロンリー・ビート・オブ・マイ・ハート」スティーヴ・ルカサー
9.「スクール・ガール」フィニス・ヘンダーソン
10.「ユー・アー・ザ・フラワー」TOTO
11.「ミドル・マン」ボズ・スキャッグス
12.「トップ・オブ・ザ・ワールド」ジョン・アンダーソン
13.「エクスティンクション・ブルース」スティーヴ・ルカサー
14.「イッツ・オンリー・マイ・ハート」マイケル・ボルトン
15.「愛は果てしなく」デニース・ウィリアムス
16.「サムバディ・ライク・ユー」ロニー・ミルサップ

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