【インタビュー】鹿乃「ネットの世界に居た私がメジャーシーンに飛び出して行くイメージ」

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2010年から動画共有サイトで歌い手として活動を始め、2015年、テレビアニメ『放課後のプレアデス』のオープニングテーマ「Stella-rium」で待望のメジャーデビューを果たした鹿乃。翌年の2016年の5月11日に待望の1stアルバム『nowhere』をリリースした彼女は、“まだまだメジャーというシーンに慣れない”と語っていた。そこから約1年半。鹿乃は『アルストロメリア』というタイトルのアルバムを作り上げた。メジャーシーンで活動するようになって2年。彼女が新たに作り上げたアルバム『アルストロメリア』には、いったいどんな鹿乃が詰め込まれているのだろう?

◆鹿乃~画像&映像~

■「RERE」の歌詞はファミレスでずっと夜中まで考えていて
■“そうだ!社畜の歌にしよう”って思い立ったんです


──前回のアルバム『nowhere』から約1年半が経つわけですが。1枚目だった前作を作ったときは、まだいろんなことへの戸惑いがあったって、話してくれたよね。

鹿乃:そうなんです。『nowhere』のときは、まだ全然慣れていなかったというか。それまでずっとネットの中から一人で発信してきていたので、いろんなスタッフさんが関わってくださってのレコーディングというものにも慣れていなかったし、スタジオ録音というものも初めてだった。やっと今回のアルバムを作って、ふわふわと浮いていた足がようやく地に着きそうかな? という感じになってきました(笑)。昔は、10人か20人くらいが聴いてくれていたらいいなっていう気持ちで歌ってきていたんですけど、今は、もっと広いところに発信していけるようになったことで、すごく歌うことへの責任感が生まれてきたのもあって。このアルバムを作り終えた今、それを面白く感じていたりするので、この先、またいろんな楽しみや面白さを発見していけるんじゃないかな? って思っています。

──意識的な変化もあったんだね。

鹿乃:そうですね。すごく変化があったと思います。

──今作にはどんな想いを持って向き合っていった感じ?

鹿乃:カッコイイ曲を歌いたいというところから、幅広く多くの人に届けたいという想いに変化したことで、ポピュラーな楽曲を意識するようになりましたね。


▲『アルストロメリア』<初回生産限定盤>


▲『アルストロメリア』<通常盤>

──3rdシングルのカップリングでもあった「RERE」は、まさに、“カッコイイ鹿乃”だったもんね。でも、そこに鹿乃ちゃんの真髄を感じたりもするんだけどね。

鹿乃:あははは。そうなんですよね(笑)。内面はそっち寄りなんですけどね。「RERE」は、完全に自分の中の膿を出し切る感じで歌っていますから。

──あははは。

鹿乃:でも、思い返せば「RERE」の歌詞も、すごく苦労したんです。締め切りを過ぎてるのは分かってたんですけど、本当に書けなくて書けなくて。一人でファミレスでずっと考えてて夜中になっちゃって。ふと外を見たら、働いている人達が目に入って。まだこんな時間なのに働いている人がいるんだな……って思って、そこから、“そうだ! 社畜の歌にしよう!”って思い立ったんです。

──これ、社畜の歌だったんだ!

鹿乃:そうなんです(笑)。社畜ってすごい言葉ですよね! 「RERE」っていうタイトルは、どんなに働いても、どんなに頑張っても、ずっとずっとその繰り返しっていう意味なんです。

──なるほどね。『アルストロメリア』のために書き下ろされた曲たちは、最初どのあたりから着手されていったの?

鹿乃:まず、「Ivy」から取りかかっていきました。シングルは別なんですけど、「Ivy」を始めとする今回のアルバム用に書き下ろしてもらった楽曲たちは、全部が花言葉にちなんでいて、すべてのタイトルに花の名前がついているんです。「Daisy Blue」はデイジー、「Melodic Aster*」はアスター、「Linaria Girl」のリナリアも「Haruzion」もお花の名前で、「Sharry Baby」だけは品種名なんです。「Ivy」は、そんなお花たちを繋いでいく葉っぱなんです。聴いてくれる方たちが、すごくいろいろと深読みして下さったりするので、今回は、そんな人達に向けて、タイトルもちょっと凝ったものにしようかなと思って、意識して付けてみました。

──歌詞もそことリンクしているの?

鹿乃:歌詞は、もともと書いてあったりしたものもありました。その歌詞にちなんで、こういうタイトルを付けたら、聴いてくれるみんなは、そこからどんな物語を作っていってくれるんだろう? って思ったんです。だから、歌詞を書いている段階では、花言葉は花をモチーフにした楽曲にしようってところまでは考えていなくて。でも、後からそれが不思議と繋がっていったんです。

──花とか花言葉は、普段、鹿乃ちゃんの身近にあるものだったりするの?

鹿乃:祖母がお花の大好きな人で、実家には温室もあったんです。胡蝶蘭とかもあったんですけど、胡蝶蘭って、お花が全部落ちちゃって禿鷹みたいになっても、大切に育ててあげたら、また花を付けてくれるんです。お花が付かなかったときには、祖母に、“アナタの不真面目さと愛情の足りないのが原因なのよ”って叱られてたりして。すごく厳しい祖母でした。温室にはゴーヤとかもあって、一生懸命育てたゴーヤを食べたりもしていました。ちゃんと育てて食べるということが、どれだけ大変なことなのかっていうことも、そこから学んだ気がします。だから、お花は、私にとって、すごく小さい頃から身近にあったものでもあるんです。でも、まさか、自分が花をテーマにアルバムを作ることになるとは思っていなかったですね。

──じゃあ、どこから今回のテーマが生まれてきたの?

鹿乃:まず、アルバムのテーマから決めようという話になったとき、1stアルバムのテーマが「プリマステラ」とか「Stella-rium」とかっていう星で、旅立ちとか入学がコンセプトとなっていたこともあったので、今回のキーポイントとなるものを何か決めたいなって、いろいろと考えていたんです。そんなときに、ふとお花がいいなって。そこから、テーマとなるいい花言葉はないかな? と探したところ、『アルストロメリア』を見つけたんです。アルストロメリアというお花は、今回の私のアー写に使われているお花で、贈答用のお花なんですけど、ちょっとボツボツしてるヴィジュアルで、なんとなく毒々しくもあるんです。だから、最初、どうしよう……って思ったんですけど、お花って毒々しい部分もあるから綺麗ってとこもあるし、ま、いっかと思って(笑)。

──アルストロメリアの花言葉とは?

鹿乃:【未来への憧れ】なんです。

──ファンタジックな歌詞もあるけど、すごく未来に向けたメッセージを感じる歌詞も多いもんね、今回のアルバムの歌詞。

鹿乃:そうなんです。いままでは、自分のためにというか、自分が楽しいことをしたいという衝動で歌ってきたんですけど、それが、“みんなで楽しみたい”というところに変わってきたので、そういうメッセージを詰め込めたんじゃないかなと思うんです。シングル曲を新たに書き下ろした楽曲で囲んでるイメージというか。バルーンアートみたいに、風船を花で囲んでるって感じのアルバムになったんじゃないかな? って思うんです。

──なるほど! そこまでハッキリと1曲1曲にテーマがあったら、すごく歌いやすかったんじゃない? 気持ちを込めやすかったというか。

鹿乃:そうなんですけど、なかなか表現し辛くて、“どうしてこんな歌詞を書いてしまったんだろう……”って後悔したりもした曲もあって。

──そうなの!? それはどの曲?

鹿乃:「Haruzion」です。壮大な中に懐かしさを出す感じで歌いたかったんですけど、なかなか上手くいかなくて、すごく苦戦しました。

──いやいや、すごく情景の見える歌だったよ。「Haruzion」の歌詞は、ハンカチだったり、それを渡す情景だったりが、はっきりと脳裏に浮かんできたし、そこに郷愁感もあったし。

鹿乃:ほんとですか!? 嬉しいです。なかなか納得いくテイクが取れなくて、何回も録り直したんですよ。物語を頭の中で考えながら歌っていたので、すごく大変だった。自分的に今回のアルバムですごく印象的なのは、「Linaria Girl」だったりするんです。田中秀和さんが書き下ろして下さった曲なんですけど、歌詞もいままでとは違って、女の子の内面を描いているというか。不思議なんだけど、聴きやすいし、歌いやすいしっていう魅力的な1曲なんです。

──曲調的には、ジャズとかボッサ的な要素を含んだ楽曲だよね。

鹿乃:そうですね。メロディを聴くと渋谷系っていう、なんかちょっとトリッキーな曲なんです。シングル曲だった「day by day」を作っていただいたときに、“どんな曲が好きなの?”って聞かれたことがあって。そのときに、渋谷系が好きなんですって伝えたのを、もしかしたら覚えていてくれたのかも? って思いましたね。すごく好きな曲になりました。

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