【ライブレポート】イエローモンキー、17年を経て迎えた「JAM」の完成形
▲THE YELLOW MONKEY(撮影:KEIKO TANABE)
イエローモンキーが、12月9日、10日の2日間、東京ドーム公演を開催した。今回の公演には「イエローモンキーが東京ドームでライブをやるらしい」という事実だけを認識し、まっさらな状態で楽しんだ人と、過去の記憶と複雑な感情を胸に会場へと足を運んだ人と、2通りの観方があったように思う。特に後者にとっては大きな意味のあるライブであったことだろう。
そうしたことも踏まえ、今回は、2日目となる12月10日の2時間半に及んだライブの模様を過去の記憶とシンクロさせながら綴っていくことにする。
◆イエローモンキー LIVE画像
◆ ◆ ◆
カウントダウンで迎えた開演定刻の17時、スクリーンには2001年1月8日のイエローモンキーの東京ドーム初公演の映像が映し出された。そして一羽の鷲が東京ドームを視界に捕らえてその上空へとたどり着くと、メンバーが楽器を抱え持つ姿が映し出された。そのままてっきりメインステージにメンバーが現れると思いきや、アリーナ席エリア中央に据えられていた白くて大きな卵がハッチしたのと同時に「WELCOME TO MY DOGHOUSE」が始まった。オープニングは、ビッグエッグなだけに卵の中からメンバーが登場するというベタな演出で東京ドーム公演の幕は開けた。
メンバーの装いに目を向けると、吉井は黒地に虎柄の刺繍が施されたジャケットに革パン、EMMAはピンクの大きな花と蔦の這うシャツに黒いパンツ、そしておしゃれ番長のHEESEYは紫のシャツにスパンコールがあしらわれた黒いジャケットとラメのボトム、ANNIEはやっぱりシルバーのタンクトップに紫のパンツという出で立ちで、ルックスの良さが相変わらず際立つバンドである。
▲吉井和哉(撮影:森島興一)
▲菊地英昭(撮影:有賀幹夫)
▲廣瀬洋一(撮影:森島興一)
▲菊地英二(撮影:山本倫子)
ドッグハウスの勢いのまま「パール」へと続いた後は、センターステージとメインステージを繋ぐ円形状に延びた花道を悠然と歩いて進み、巨大なスクリーンだけが据えられたシンプルなメインステージへ移動して「ロザーナ」を、そして間髪入れずに、再集結後の初演奏となった「嘆くなり我が夜のFantasy」が、実に17年ぶりに奏でられ、EMMAのギターでイントロが告げられた途端に客席からは悲鳴にも似た歓声が響いた。こうした往年の楽曲を耳にすると、まるで時代が音を立てて引き戻ってくるような奇妙な感覚を体が得る。それはおそらく“もう聴けない”と一度諦めた曲を20年近く経って再びライブで聴けることでしか味わえない貴重なものなのだろう。
ここでようやく吉井が「会いたかったです。元気でしたか、TOKYO!」と口を開いた。そして「最高の夜にしないか?」と呼びかけた後、「TVのシンガー」「サイキックNo.9」「SPARK」が立て続けに放たれ、曲を終える毎に場内のボルテージはじりじりと上がっていった。
少しの間を置き、スクリーン上には砂嵐が広がった。吉井のかき鳴らすギターの音と姿がそこに混ざり合い、「天国旅行」が始まった。レーザーで彩られた赤と緑のどす黒い世界では、顔を晒すことなく音を聴かせることに徹し、その1音1音に、演奏力、キャリア、休止期間で得たものなどのバンドの持ちうるすべての力をまざまざと見せつけた。これぞ、イエローモンキーの真骨頂、彼らにしか出せない世界観だろう。ただ圧倒されるばかりだった。
そして、静けさが一瞬訪れたその先には、メンバーの頭上に碧い銀河がロマンティックに揺らめき、背後ではストリングスがドラマティックに奏でる「真珠色の革命時代〜Pearl Light Of Revolution〜」が待っていた。大スクリーンすべてを使った、さざめく大海原と沈みゆく黄金に輝く夕陽の映像と、艶やかなストリングスから成る演出は、壮大で、どこか懐かしくもあった。たった6分の音楽が、こうも簡単に人をすべてのことから解放させるのかという驚きと、ひとつの映画を観ているような美しい光景に息をのんだ。
そして太陽は沈み、ストリングスのクラシカルな音と対極する電子音がピコピコと場内に鳴り響きはじめた。やがてピンクのネオンも点り、最新配信曲「Stars」が会場全体の雰囲気をガラリと一変させた。さらに管楽器とコーラスが音に厚みと迫力を加え、渋いロックを醸し出す。そして、センターステージにEMMAとHEESEYが立ち並び、「SUCK OF LIFE」へとなだれ込んだ。
ここで再び、吉井が語り始めた。
その内容は、東京ドームでライブを観たのは1990年のデヴィッド・ボウイが最初であったことや、当時、イエローモンキーがこのメンバーになったばかりで、こんなでっかいところは絶対無理だと思っていたこと、しかしその後にはイエローモンキーとしてデビューでき、17年経った今、こうして復活ライブを開けたことなどを吐露した。そして、メンバーを代表してオーディエンスに対して礼を述べると、未来に希望を持って突き進むことを提唱し、ロックンロールをし続けたいと笑顔をみせて「バラ色の日々」を歌い、場内は大合唱となった。
そのままたたみかけるように「太陽が燃えている」「ROCK STAR」へと続き、明らかに燃えすぎている映像や花道にはANNIE以外の3人が出てくるなど、メンバーもオーディエンスもとにかく楽しそうだった。そんな中で、さらにオーディエンスを熱くさせたのは「MY WINDING ROAD」だった。
こちらも再集結後初披露で、ジョン・トラボルタばりに映画『Saturday Night Fever』のポーズを決めたEMMAが、光るフライングVを持って花道を練り歩きながらセクシービームを投げつけ、巨大ディスコ空間はまさにEMMAの独壇場であった。その後暗転し、ステージの両サイドには赤いハイヒールを履いた女性の足を象った巨大バルーンが出現し、卑猥さ全開で「LOVE LOVE SHOW」に突入した。花道にズラリと現れた世界のお姉さんたち一人一人に絡みながら、吉井が颯爽と練り歩いてオーディエンスを盛り上げる。
続いて、イエローモンキーの第2幕の最初のライブであった代々木公演をスタートしたことで特別な楽曲になった感のある「プライマル。」では、スクリーンに映し出された超満員のオーディエンスに代々木の時のような泣き笑いも悲鳴もなく、皆がとてもいい顔をしていた。さらに、「Tokyo! Tokyo! Tokyo! 準備?」と叫ぶ吉井にオーディエンスは「ALRIGHT!」と叫び返し、再集結を告げた曲「ALRIGHT」に続いた。花道には吉井とEMMAの2ショットが観られ、ボウイとミック・ロンソンを彷彿とさせるこの二人がひとつの画に収まると、胸にぐっとこみ上げてくるものがある。
盛り上がりがピークを迎えたところで、吉井が多くを語りはじめた。
「幸せという言葉しかない2年間でした。そして、この東京ドームもミッションのひとつでした」
再集結宣言後からの2年間におけるイエローモンキーの活動を振り返ってみると、いくつかの因縁めいたものを丁寧に紐解いてきたようにも映る。たとえば、横浜アリーナや真夏の福島での公演などがいい例だ。解散前のイエローモンキー第1期に、バンドが、とかく吉井和哉が強い念を残した場所でのライブは他の同ツアー公演と比べ、一際力が入っていたように見受けられたし、実際、ひと味違う内容だった。
そうして彼らは、最後の難所となる東京ドーム公演を迎えた。
イエローモンキーと東京ドームと言えば、過去に2度、そのステージに立っている。一度目は解散前のラストライブ、そして二度目は解散発表後の、最後のお披露目的なイベントだった。これまで観た彼らのライブのほとんどは、実に素晴らしいショーだった。しかし、そうではないライブもいくつかあった。バンドは生きものだから当然といえばそうなのだが、その中のひとつが2001年の東京ドーム公演だった。
あの日のライブはちぐはぐしたような、まるでイエローモンキーらしくないスッキリしないものだった。その後には休止宣言がなされ、解散となり、結果的にあの日の公演が第1期のラストライブとなってしまった。さらには解散が決まって、またしても東京ドームで解散イベントを行い、そこでは「JAM」だけが歌われた。しかしその歌はどこか投げやりで、ひどく空虚なものに感じ、曲が可哀想に思えて仕方がなかった。その引っかかりはずっと消えずに残ったまま、17年が経過した。
こうした経緯から、今回の東京ドーム公演開催を知った時には“果たして彼らは因縁を浄化できるだろうか”という想いがまず頭を過った。そして過去の記憶のせいで再集結後もうまく飲み込めずにいた「JAM」という名曲が今公演の最大の山場となるだろうと予想して会場へ足を運んだ。
この日、真っ赤に染まったステージで始まった「JAM」は、一体感という言葉が相応しい5万人の大合唱と、スクリーンに映し出された泣き笑いのような吉井の顔が印象的だった。それはひどく綺麗で、JAMを完全に歌いきった吉井和哉を初めて観たように思った。
今回の2daysによって昇華し、ようやく蘇った「JAM」も、東京ドームという全体的な意味合いも含めて、イエローモンキー的にコンプリートできたのではないだろうか。いつか「観客が手拍子しながら共に歌える歌にしたい」と吉井が発言していたとおりの「JAM」の完成形が、17年の時を経てそこにはあったように思うし、少なくとも筆者の記憶と想いはしっかりと浄化され、あるべき姿となって上書きされた。実に長いドラマであったが、完結を迎えることができて喜びを感じている人は少なくないだろう。
「JAM」問題でやきもきして精根尽きた人には、歌詞もメロディもEMMA色が色濃く出た「Horizon」が優しく心に響いたことと想像する。そして、あの日の自分があったから今の自分があると肯定してくれる「SO YOUNG」もまた、心地の好い響きだった。
そして、「砂の塔」「BURN」と重厚サウンドで踊らせた後には、「悲しきASIAN BOY」がスタートした。全力で花道へ走り出し、センターステージからその後方にあるメインステージ上の3人にアイコンタクトを送る吉井と、少年のように無邪気に笑い合って演奏しているEMMA、HEESEY、ANNIEの姿から、バンドの絆をひしひしと感じた。桜色をした紙吹雪が盛大に舞い散る中、スクリーンには往年お馴染みだった電飾風にバンド名が映し出され、時代が変わったことをそんな変化からも感じ取る。
▲(撮影:KEIKO TANABE)
全編の演奏を終了したメンバーはサポート・キーボーディストの鶴谷崇を交え、5人でゆっくりと花道を歩み、オーディエンスに向かって何度も何度も「ありがとう」と言っていた。
ストリングス有り、ホーンズ有り、コーラス有り、お焚き上げ映像有り、世界のお姉さん有りと、盛りだくさんな内容だった2時間半のスペクタクルは、様々な角度から楽しめる一見の価値が大いにあったロックンロールショーだった。それに、50代の彼らが元気に燃えまくっているのなら、若輩の自分はもっと頑張らなければと思えてくるのもいい刺激だ。
また、「この2年でイエローモンキーがやるべき音楽はこれだと見えた」というニューアルバム制作への明言と、「日本に今までなかったロックバンドになっていく」という決意表明がなされたことには大きな意味があると言える。
ロックバンドでありながら、未だ存在しない日本のポップアイコンへと躍進してゆく姿を、この先もリアルタイムで見てゆける喜びを噛みしめながら、今年は安心して年が越せそうだ。ありがとう。
▲THE YELLOW MONKEY(撮影:KEIKO TANABE)
文=早乙女‘dorami’ゆうこ
◆ ◆ ◆
<DAY2>2017年12月10日(日) OPEN 15:00 / START 17:00
【12/9(sat)】
1.WELCOME TO MY DOGHOUSE
2.パール
3.ロザーナ
4.嘆くなり我が夜のFantasy
5.I Love You Baby
6.サイキックNo.9
7.SPARK
8.天国旅行
9.真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~
10.Stars
11.SUCK OF LIFE
12.バラ色の日々
13.太陽が燃えている
14.ROCK STAR
15.MY WINDING ROAD
16.LOVE LOVE SHOW
17.プライマル。
18.ALRIGHT
19.JAM
20.SO YOUNG
21.砂の塔
22.BURN
23.悲しきASIAN BOY
【12/10(sun) 】
1.WELCOME TO MY DOGHOUSE
2.パール
3.ロザーナ
4.嘆くなり我が夜のFantasy
5.TVのシンガー
6.サイキックNo.9
7.SPARK
8.天国旅行
9.真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~
10.Stars
11.SUCK OF LIFE
12.バラ色の日々
13.太陽が燃えている
14.ROCK STAR
15.MY WINDING ROAD
16.LOVE LOVE SHOW
17.プライマル。
18.ALRIGHT
19.JAM
20.SO YOUNG
21.砂の塔
22.BURN
23.悲しきASIAN BOY
◆THE YELLOW MONKEY オフィシャルサイト
イエローモンキーが、12月9日、10日の2日間、東京ドーム公演を開催した。今回の公演には「イエローモンキーが東京ドームでライブをやるらしい」という事実だけを認識し、まっさらな状態で楽しんだ人と、過去の記憶と複雑な感情を胸に会場へと足を運んだ人と、2通りの観方があったように思う。特に後者にとっては大きな意味のあるライブであったことだろう。
そうしたことも踏まえ、今回は、2日目となる12月10日の2時間半に及んだライブの模様を過去の記憶とシンクロさせながら綴っていくことにする。
◆イエローモンキー LIVE画像
◆ ◆ ◆
カウントダウンで迎えた開演定刻の17時、スクリーンには2001年1月8日のイエローモンキーの東京ドーム初公演の映像が映し出された。そして一羽の鷲が東京ドームを視界に捕らえてその上空へとたどり着くと、メンバーが楽器を抱え持つ姿が映し出された。そのままてっきりメインステージにメンバーが現れると思いきや、アリーナ席エリア中央に据えられていた白くて大きな卵がハッチしたのと同時に「WELCOME TO MY DOGHOUSE」が始まった。オープニングは、ビッグエッグなだけに卵の中からメンバーが登場するというベタな演出で東京ドーム公演の幕は開けた。
メンバーの装いに目を向けると、吉井は黒地に虎柄の刺繍が施されたジャケットに革パン、EMMAはピンクの大きな花と蔦の這うシャツに黒いパンツ、そしておしゃれ番長のHEESEYは紫のシャツにスパンコールがあしらわれた黒いジャケットとラメのボトム、ANNIEはやっぱりシルバーのタンクトップに紫のパンツという出で立ちで、ルックスの良さが相変わらず際立つバンドである。
▲吉井和哉(撮影:森島興一)
▲菊地英昭(撮影:有賀幹夫)
▲廣瀬洋一(撮影:森島興一)
▲菊地英二(撮影:山本倫子)
ドッグハウスの勢いのまま「パール」へと続いた後は、センターステージとメインステージを繋ぐ円形状に延びた花道を悠然と歩いて進み、巨大なスクリーンだけが据えられたシンプルなメインステージへ移動して「ロザーナ」を、そして間髪入れずに、再集結後の初演奏となった「嘆くなり我が夜のFantasy」が、実に17年ぶりに奏でられ、EMMAのギターでイントロが告げられた途端に客席からは悲鳴にも似た歓声が響いた。こうした往年の楽曲を耳にすると、まるで時代が音を立てて引き戻ってくるような奇妙な感覚を体が得る。それはおそらく“もう聴けない”と一度諦めた曲を20年近く経って再びライブで聴けることでしか味わえない貴重なものなのだろう。
ここでようやく吉井が「会いたかったです。元気でしたか、TOKYO!」と口を開いた。そして「最高の夜にしないか?」と呼びかけた後、「TVのシンガー」「サイキックNo.9」「SPARK」が立て続けに放たれ、曲を終える毎に場内のボルテージはじりじりと上がっていった。
少しの間を置き、スクリーン上には砂嵐が広がった。吉井のかき鳴らすギターの音と姿がそこに混ざり合い、「天国旅行」が始まった。レーザーで彩られた赤と緑のどす黒い世界では、顔を晒すことなく音を聴かせることに徹し、その1音1音に、演奏力、キャリア、休止期間で得たものなどのバンドの持ちうるすべての力をまざまざと見せつけた。これぞ、イエローモンキーの真骨頂、彼らにしか出せない世界観だろう。ただ圧倒されるばかりだった。
そして、静けさが一瞬訪れたその先には、メンバーの頭上に碧い銀河がロマンティックに揺らめき、背後ではストリングスがドラマティックに奏でる「真珠色の革命時代〜Pearl Light Of Revolution〜」が待っていた。大スクリーンすべてを使った、さざめく大海原と沈みゆく黄金に輝く夕陽の映像と、艶やかなストリングスから成る演出は、壮大で、どこか懐かしくもあった。たった6分の音楽が、こうも簡単に人をすべてのことから解放させるのかという驚きと、ひとつの映画を観ているような美しい光景に息をのんだ。
そして太陽は沈み、ストリングスのクラシカルな音と対極する電子音がピコピコと場内に鳴り響きはじめた。やがてピンクのネオンも点り、最新配信曲「Stars」が会場全体の雰囲気をガラリと一変させた。さらに管楽器とコーラスが音に厚みと迫力を加え、渋いロックを醸し出す。そして、センターステージにEMMAとHEESEYが立ち並び、「SUCK OF LIFE」へとなだれ込んだ。
ここで再び、吉井が語り始めた。
その内容は、東京ドームでライブを観たのは1990年のデヴィッド・ボウイが最初であったことや、当時、イエローモンキーがこのメンバーになったばかりで、こんなでっかいところは絶対無理だと思っていたこと、しかしその後にはイエローモンキーとしてデビューでき、17年経った今、こうして復活ライブを開けたことなどを吐露した。そして、メンバーを代表してオーディエンスに対して礼を述べると、未来に希望を持って突き進むことを提唱し、ロックンロールをし続けたいと笑顔をみせて「バラ色の日々」を歌い、場内は大合唱となった。
そのままたたみかけるように「太陽が燃えている」「ROCK STAR」へと続き、明らかに燃えすぎている映像や花道にはANNIE以外の3人が出てくるなど、メンバーもオーディエンスもとにかく楽しそうだった。そんな中で、さらにオーディエンスを熱くさせたのは「MY WINDING ROAD」だった。
こちらも再集結後初披露で、ジョン・トラボルタばりに映画『Saturday Night Fever』のポーズを決めたEMMAが、光るフライングVを持って花道を練り歩きながらセクシービームを投げつけ、巨大ディスコ空間はまさにEMMAの独壇場であった。その後暗転し、ステージの両サイドには赤いハイヒールを履いた女性の足を象った巨大バルーンが出現し、卑猥さ全開で「LOVE LOVE SHOW」に突入した。花道にズラリと現れた世界のお姉さんたち一人一人に絡みながら、吉井が颯爽と練り歩いてオーディエンスを盛り上げる。
続いて、イエローモンキーの第2幕の最初のライブであった代々木公演をスタートしたことで特別な楽曲になった感のある「プライマル。」では、スクリーンに映し出された超満員のオーディエンスに代々木の時のような泣き笑いも悲鳴もなく、皆がとてもいい顔をしていた。さらに、「Tokyo! Tokyo! Tokyo! 準備?」と叫ぶ吉井にオーディエンスは「ALRIGHT!」と叫び返し、再集結を告げた曲「ALRIGHT」に続いた。花道には吉井とEMMAの2ショットが観られ、ボウイとミック・ロンソンを彷彿とさせるこの二人がひとつの画に収まると、胸にぐっとこみ上げてくるものがある。
盛り上がりがピークを迎えたところで、吉井が多くを語りはじめた。
「幸せという言葉しかない2年間でした。そして、この東京ドームもミッションのひとつでした」
再集結宣言後からの2年間におけるイエローモンキーの活動を振り返ってみると、いくつかの因縁めいたものを丁寧に紐解いてきたようにも映る。たとえば、横浜アリーナや真夏の福島での公演などがいい例だ。解散前のイエローモンキー第1期に、バンドが、とかく吉井和哉が強い念を残した場所でのライブは他の同ツアー公演と比べ、一際力が入っていたように見受けられたし、実際、ひと味違う内容だった。
そうして彼らは、最後の難所となる東京ドーム公演を迎えた。
イエローモンキーと東京ドームと言えば、過去に2度、そのステージに立っている。一度目は解散前のラストライブ、そして二度目は解散発表後の、最後のお披露目的なイベントだった。これまで観た彼らのライブのほとんどは、実に素晴らしいショーだった。しかし、そうではないライブもいくつかあった。バンドは生きものだから当然といえばそうなのだが、その中のひとつが2001年の東京ドーム公演だった。
あの日のライブはちぐはぐしたような、まるでイエローモンキーらしくないスッキリしないものだった。その後には休止宣言がなされ、解散となり、結果的にあの日の公演が第1期のラストライブとなってしまった。さらには解散が決まって、またしても東京ドームで解散イベントを行い、そこでは「JAM」だけが歌われた。しかしその歌はどこか投げやりで、ひどく空虚なものに感じ、曲が可哀想に思えて仕方がなかった。その引っかかりはずっと消えずに残ったまま、17年が経過した。
こうした経緯から、今回の東京ドーム公演開催を知った時には“果たして彼らは因縁を浄化できるだろうか”という想いがまず頭を過った。そして過去の記憶のせいで再集結後もうまく飲み込めずにいた「JAM」という名曲が今公演の最大の山場となるだろうと予想して会場へ足を運んだ。
この日、真っ赤に染まったステージで始まった「JAM」は、一体感という言葉が相応しい5万人の大合唱と、スクリーンに映し出された泣き笑いのような吉井の顔が印象的だった。それはひどく綺麗で、JAMを完全に歌いきった吉井和哉を初めて観たように思った。
今回の2daysによって昇華し、ようやく蘇った「JAM」も、東京ドームという全体的な意味合いも含めて、イエローモンキー的にコンプリートできたのではないだろうか。いつか「観客が手拍子しながら共に歌える歌にしたい」と吉井が発言していたとおりの「JAM」の完成形が、17年の時を経てそこにはあったように思うし、少なくとも筆者の記憶と想いはしっかりと浄化され、あるべき姿となって上書きされた。実に長いドラマであったが、完結を迎えることができて喜びを感じている人は少なくないだろう。
「JAM」問題でやきもきして精根尽きた人には、歌詞もメロディもEMMA色が色濃く出た「Horizon」が優しく心に響いたことと想像する。そして、あの日の自分があったから今の自分があると肯定してくれる「SO YOUNG」もまた、心地の好い響きだった。
そして、「砂の塔」「BURN」と重厚サウンドで踊らせた後には、「悲しきASIAN BOY」がスタートした。全力で花道へ走り出し、センターステージからその後方にあるメインステージ上の3人にアイコンタクトを送る吉井と、少年のように無邪気に笑い合って演奏しているEMMA、HEESEY、ANNIEの姿から、バンドの絆をひしひしと感じた。桜色をした紙吹雪が盛大に舞い散る中、スクリーンには往年お馴染みだった電飾風にバンド名が映し出され、時代が変わったことをそんな変化からも感じ取る。
▲(撮影:KEIKO TANABE)
全編の演奏を終了したメンバーはサポート・キーボーディストの鶴谷崇を交え、5人でゆっくりと花道を歩み、オーディエンスに向かって何度も何度も「ありがとう」と言っていた。
ストリングス有り、ホーンズ有り、コーラス有り、お焚き上げ映像有り、世界のお姉さん有りと、盛りだくさんな内容だった2時間半のスペクタクルは、様々な角度から楽しめる一見の価値が大いにあったロックンロールショーだった。それに、50代の彼らが元気に燃えまくっているのなら、若輩の自分はもっと頑張らなければと思えてくるのもいい刺激だ。
また、「この2年でイエローモンキーがやるべき音楽はこれだと見えた」というニューアルバム制作への明言と、「日本に今までなかったロックバンドになっていく」という決意表明がなされたことには大きな意味があると言える。
ロックバンドでありながら、未だ存在しない日本のポップアイコンへと躍進してゆく姿を、この先もリアルタイムで見てゆける喜びを噛みしめながら、今年は安心して年が越せそうだ。ありがとう。
▲THE YELLOW MONKEY(撮影:KEIKO TANABE)
文=早乙女‘dorami’ゆうこ
◆ ◆ ◆
<THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017>SET LIST
<DAY2>2017年12月10日(日) OPEN 15:00 / START 17:00
【12/9(sat)】
1.WELCOME TO MY DOGHOUSE
2.パール
3.ロザーナ
4.嘆くなり我が夜のFantasy
5.I Love You Baby
6.サイキックNo.9
7.SPARK
8.天国旅行
9.真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~
10.Stars
11.SUCK OF LIFE
12.バラ色の日々
13.太陽が燃えている
14.ROCK STAR
15.MY WINDING ROAD
16.LOVE LOVE SHOW
17.プライマル。
18.ALRIGHT
19.JAM
20.SO YOUNG
21.砂の塔
22.BURN
23.悲しきASIAN BOY
【12/10(sun) 】
1.WELCOME TO MY DOGHOUSE
2.パール
3.ロザーナ
4.嘆くなり我が夜のFantasy
5.TVのシンガー
6.サイキックNo.9
7.SPARK
8.天国旅行
9.真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~
10.Stars
11.SUCK OF LIFE
12.バラ色の日々
13.太陽が燃えている
14.ROCK STAR
15.MY WINDING ROAD
16.LOVE LOVE SHOW
17.プライマル。
18.ALRIGHT
19.JAM
20.SO YOUNG
21.砂の塔
22.BURN
23.悲しきASIAN BOY
◆THE YELLOW MONKEY オフィシャルサイト
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