【レポート】<RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017>を振り返って
10月22日から11月17日までの約1ヶ月間に、渋谷の街を中心に14の音楽イベントを開催した<Red Bull Music Festival Tokyo 2017>(以下、RBMF2017)が終了した。この企画のベースになったRed Bull Music Academy(以下、RBMA)の活動については、下記リンクのキックオフ記事で触れたが、<Lost In Karaoke>、<Round Robin>、<Diggin' In The Carts>といったRBMAでも開催されているイベントの他に、日本のオリジナル企画も実現した。各イベントの詳細はオフィシャルのレポート記事が丁寧にフォローしているので(https://www.redbull.com/jp-ja/events/red-bull-music-festival-tokyo-2017)、ぜひそちらを見ていただきたい。
◆<Red Bull Music Festival 2017>開催に寄せて
全部はとても見ることができなかったのだが、いくつかのイベントを見て歩く内に、過去のRBMAで体験した雰囲気、空気というものを確かに感じた。それはちょっと言葉で伝えづらいことなのだが、ローカルなイベントの中に外(海外)からの目線が入り込むことで作り出されるもので、そのポジティブな雰囲気、空気とでも言うべきだろうか。そのことも含めて、ここでは自分が出演者としても関わった<Lecture With DJ Krush>と、モントリオールのRBMAで一度見ている<Round Robin>のことを取り上げて、RBMF2017の自分なりの総括を伝えたいと思う。
<Lecture With DJ Krush>(https://www.redbull.com/jp-ja/lecture-with-dj-krush-report)は、廃校となり、いまは大学の施設として再活用されている小学校の図工室でおこなわれた。図工室の雰囲気をそのまま残している空間には使い古された椅子と作業机が並べられ、DJ Krush、それにゲストで参加したラッパーのMeisoとチプルソが黒板を前に座った。一角には即席のバーカウンターも作られ、ドリンクも振る舞われた。そのシチュエーションがまず緊張感を解き、コアな話も和やかにできる場が作られていた。
音楽と重ねるようにストイックなイメージがあるDJ Krushだが、過去にもRBMAのレクチャー、ワークショップに登場してキャリアや制作の背景を振り返る話を積極的におこなっている。その大半に聞き手として参加をさせてもらってきたが、通常の雑誌などのインタビューで接するのとは異なった対話が成立する。その大きな違いは、目の前にいるお客さん、特に若いクリエーターや何かを模索している人たちに伝えたいものが明確に見えてくるということだ。そのためにリラックスした場を作るということを、RBMAは他の数多のレクチャーでもおこなってきた。途中から対話に加わったMeisoとチプルソも、そうした視点に立って、自らの経験を語り、この先に繋がることを話してくれたのも素晴らしかった。
duo MUSIC EXCHANGEで開催された<Round Robin>(shibuya duo MUSIC EXCHANGE)は、1対1の即興によるリレープレイだ。多ジャンルのミュージシャンがソロで参加する。出演者の名前は明かされているが、誰が誰と演奏するのかは当人たちにも当日知らされるというルールだ。モントリオールで見たときもそうだったが、次に誰が登場するのか、どんな演奏がおこなわれるのかを待つこと自体がまず楽しい。そして実際に繰り広げられる演奏も即興ゆえに、普段のその人の音楽性とは異なったものが出てくることもあるし、相手の演奏によって予期せず変化していくこともあって、そのプロセスもスリリングである。
シンガーソングライターのSHOKOからスタートして、ピアニストのスガダイローで終わる間に、全部で16名のミュージシャンがステージに上がった。それぞれがプロのミュージシャンなので当然のことでもあるのだが、一人10分の短い時間の使い方が誰もが上手い。そして普段は即興演奏をしない人でも相手があっての演奏に柔軟に対応できることにも懐の深さを感じた。人選、全体の流れ、演奏のレベルもモントリオールで開催されたものよりも上だったと断言できる。そして、この企画が面白い最大の理由は、外からの視点が入っていることだ。この場合の外とは海外のことではなく、特定のジャンルやシーンの外から見る視点という意味である。もちろん、音楽が生まれてくるには、ジャンルの中で形成され、シーンによって育まれるものは大切なのだが、それらが時に足枷となる場合もある。外からの視点がそれをリフレッシュさせ、音楽を再活性化することは常に必要なことだと思う。そして、<Round Robin>という真剣勝負のゲームを楽しんだ16名全員が最後にステージに上がって和やかに挨拶をする光景は、なによりもポジティヴなものだった。来年も継続して、こうした場が設けられることをぜひ期待したい。
文:原雅明
◆<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017> オフィシャルサイト
◆<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017> BARKS内特設サイト
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