<Red Bull Music Festival 2017>開催に寄せて
2014年に東京で<Red Bull Music Academy>(以下、RBMA)が開催された。渋谷のスクランブル交差点を取り囲むいくつかの大きな看板には、フライング・ロータスから大友良英まで、普段そこに登場するとは思えないアーティストの姿が<RBMA>のロゴと共に表れた。2013年にニューヨークで開催された<RBMA>では、観光客も多いチェルシーマーケットの近くにあるビルの壁面一杯に貼られたザ・ルーツのクエストラヴの姿があった。そして、昨年、カナダのモントリオールで開催された際には、市内を走る地下鉄の駅の構内に<RBMA>が企画するイヴェントのスケジュールを記載した巨大なポスターが貼られていた。
<RBMA>という音楽学校をレッドブルがスタートさせたのは1998年、ドイツのベルリンにおいてだった。世界中から有能な若いクリエイターを募り、第一線で活躍するアーティストを講師として招き、ユニークなシチュエーションのイヴェントも企画する。この期間限定の音楽学校を、レッドブルは20年近くも世界各国の都市で開催してきた。メーカーがスポンサードする音楽イヴェントやフェスは数多くあれど、音楽に対するクリエイティヴィティそのものを刺激し、モチヴェーションとチャンスを与え、継続して音楽カルチャーをサポートしてきた<RBMA>は、他に比較するべき例がない。
2011年にスペインのマドリードで開催された<RBMA>を取材して以来、僕はほぼ毎年、その現場を訪れてきた。世代もジャンルも異なるさまざまなアーティストが登場するレクチャーを聞き、スタジオで自由に制作する様子も見学し、期間中に毎晩、都市のあらゆる場所を使って開催されるイヴェントを楽しんだ。単に音楽学校という枠では留まらない、開催都市との協調や、参加者のみならずメディア関係者など訪れる人々に対するホスピタリティにも感心させられた。そこではいくつもの印象深い出来事があったが、中でも強く記憶に残っていることがある。マドリードでウータン・クランのRZAがレクチャーに登場した時だ。彼は同じ目線に立って、若いクリエイターを励ますように語りかけていた。それはメディアに登場するアーティストの姿とは少し異なっていて、そして実に魅力的だった。
東京での開催をきっかけに、<RBMA>のことを知った人も多いだろう。一般の人にも公開された夜のイヴェントでは、普段この街で暮らす僕らも気が付かなかった場所を発見させ、よく知る場所で思いも寄らない使い方をしてみせた。上野の東京国立博物館内にある法隆寺宝物館でのDJ Krushと和楽器奏者のセッション(The Garden Beyond)から、新宿のカラオケボックスの全フロアを使ったストリーミングライブ(Lost In Karaoke)まで、約1ヶ月の間、東京の街と音楽を新たにマッチングさせるような試みが続いた。この期間、僕は可能な限りイヴェントに足を運んだが、短期間の取材で接した海外の<RBMA>では気が付かなかった、都市の新たな発見があった。東京は本当に大きな都市で、僕が暮らす東京の西側から東側に行くのも実はかなり時間がかかる。普段、なかなか訪れる機会のない東側にもイヴェントのために足を運び、日々、音楽と共に東京を移動していくような感覚は新鮮だった。それは、ひとつの場所で見るライヴやフェスでは得られない感覚だった。冒頭で触れた看板やポスターは、単なるプロモーションというだけではなく、都市に音楽をマッチングさせた証でもあるのだろう。
間もなく、日本の音楽に”翼をさずける”をテーマにした<Red Bull Music Festival Tokyo 2017>がスタートする。フェスティヴァルと銘打たれているが、約1ヶ月に及ぶ期間といい、ラインナップといい(まだ一部しか発表されていないが)、<RBMA>のイヴェントを彷彿させる内容となっている。僕がモントリオールで見たRound Robinも開催される。このRound Robinは本当にユニークな企画で、「一発本番即興演奏」ともタイトルされているが、モントリオールで見たときは、ステージ上に入れ替わり立ち替わりミュージシャンが登場して、基本的にデュオで即興演奏を繰り広げていくというものだった。サンダーキャットやチリー・ゴンザレスも参加していた。他にもヒップホップからノイズまで、日本独自の企画がいくつもラインナップされている。今回は渋谷の街が中心になって開催されるようだが、この大きな試みによって、再び街を音楽で活性化し、新たな発見をもたらすイヴェントになることを期待している。
文:原雅明
<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017>
会場:都内各所(渋谷・恵比寿・六本木など)
チケット:https://eplus.jp/ath/word/114863
オフィシャルサイト:http://tokyo.redbullmusicfestival.com #redbullmusic
主催:レッドブル・ミュージック・フェスティバル実行委員会
後援:一般財団法人渋谷区観光協会
*未就学児は入場不可。一部イベントは 20歳未満入場不可
*SOUND JUNCTION は抽選先行予約受付
*実施内容は予告なく変更となる場合ガございます
◆<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017> オフィシャルサイト
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