【インタビュー】DJ KRUSH「持っているものを下の世代に与えるのは惜しまない、逆に彼らから刺激を受けて先に進める」

■今回はあくまでもラップのオケ
■打ち込み方や間で自分を出せたとは思う

──参加したラッパーの話を訊かせてください。まずOMSBから。

DJ KRUSH　彼の作品を聴いたときに、音も他とは違う感じで、ラップも独特のものがあったから、いつか絶対一緒にやりたいなと何年も前から思ってた。一つのところに拘ってない冒険性があったし、それが音にも出ているなと感じたね。

──ア・トライブ・コールド・クエストのネタが入っているのが遊びがあって、いつものKRUSHさんと、また違う面白さを感じました。

DJ KRUSH　あのネタを彼が入れてきたから、DJ心が疼いたというか（笑）、それに応える形で同じベースラインを弾き直したりしてね。

──いきなりこの暗さで入って凄いな、と思ったらあのネタが来る意外性が良かったです。

DJ KRUSH　キーも合ってないしね。無理矢理入ってきて、それもヒップホップだよね（笑）。それを言うと、RINOをフィーチャーした曲（「Dust Stream」）は聴いてもらえればわかるネタなんだけど、あれはDJ YASに連絡する前に勝手に使っちゃったんだけどね（笑）。

──そういう意味では、ヒップホップマナーのサンプリングがあるのも今回の特徴ですね。

DJ KRUSH　弾いている曲もあるけどね。

──KRUSHさんはもろにネタをサンプリングすることを意識的に避けてきましたよね。今回そうした要素も入っているのはやはりラップに向き合ったことが大きかったのでしょうか？

DJ KRUSH　そうだね。俺はネタものも嫌いじゃないですよ。それ聴いて育ってきているから。でも、今回は本当にヒップホップDJとして、そう来るならこうネタあるよ、ってやりたかった。

──逆にインストだと、そこはやらないという線引きはありますよね。

DJ KRUSH　うん、そこは拡がらないというか、自分がつまらないから。勿論いいネタはたくさんあるよ。ドラムだけループさせてたらそれで良くて、もう何も足さなくていい、っていうのはありますよね。でも、それじゃあつまらない。だけど、今回はラップのオケやろう、というところで、打ち込み方や間で自分を出せたとは思います。

──今回、セッション感があると言うか、ラッパーの人たちと実のあるやり取りから生まれた作品だなというのはとても感じます。

DJ KRUSH　彼らも真剣に意見もくれて向き合ってくれたから、そこの部分は作品にも出てくるものだと思いますね。


──では、ラッパーの話に戻って、チプルソは？

DJ KRUSH　聴いてみたら、ヒップホップフォーマットじゃないところで動いていて、面白かったからお願いしたんだけど、この曲（「バック to ザ フューチャー」）で彼がラップにしているけど、2004年に出した『寂 〜jaku〜』を聴いて刺激されて、ということが判明してね。この曲は俺が渡したビートを、彼がラップを乗せやすく自分で抜いたり、構成し直したりしたんだけど、それが格好良くて、それをそのまま活かしたんです。

──R-指定の参加も意外な感じですが、曲がまた意外ですね。

DJ KRUSH　彼がCreepy Nutsでやってる曲とはまるっきり違う曲だよね。Creepy Nutsに合わせたような曲も送ったんだけど、あえて彼はこのトラックを選んでくれた。

──彼からすれば違う顔を見せることができた、というわけですね。

DJ KRUSH　そこがポイントで、5lackとの曲（「誰も知らない」）もそうなんだけど、そこに自らが乗ってきてくれているんで、自分も違うことをしたいし、そこに向かってきてくれたんですね。

──ハワイでも活動しているバイリンガルのMeisoについては？

DJ KRUSH　日本人ではない血も入っているので、彼独特の目線にも興味があったし、純粋に彼のラップは好きだったから、前から一緒にやりたかった。彼はトラックで悩んでいたみたい。彼は気合い入れてさあ行くぞ、って感じだったのが、割と緩いメロウなのが来たんで（笑）。でもそこはしっかり乗せてきましたね。

──この参加も非常に興味深いですが、呂布カルマは？

DJ KRUSH　彼とやるときは、まずEPMDのファースト『Strictly Business』みたいにしたいなと（笑）。あのドロッと、ねちっこい、引っ張られるような感じが絶対に合うなと思ってね。彼のラップを聴いてるとイメージが沸くし、詞の世界も独特で、馴れないとなかなか口に入っていかない。いきなり出だしが、“重度の花粉症”（笑）。でもちゃんと裏があって、なかなか切れるラップをすると思いますよ。

◆インタビュー（3）
◆インタビュー（1）に戻る