【インタビュー】DJ KRUSH、「<MARINA SUNSETʼ23>はロケーションがとても良くて今からとても楽しみ。想像力を広げて選曲を考えたい」
8月に逗子で行われる<MARINA SUNSETʼ23>に出演するDJ KRUSH。また盟友であり、Mo' Wax率いるジェームス・ラヴェルとのツアーも東阪で予定されており、各地で話題を振り撒きそうだ。目前に迫った<MARINA SUNSETʼ23>に向け、DJ KRUSHに話を聞いた。
◆DJ KRUSH 関連画像
■俺のDJスタイルは、都会のマンホールの下から這い上がって
■世間を眺めてるようなダークな音世界なんだけど
──2年目を迎える<MARINA SUNSETʼ23>の意気込みなどお聞かせください。
DJ KRUSH ロケーションがとても良くて今からとても楽しみだよ。想像力を広げて選曲を考えたいね。
──最近のプレイで新たに取り入れている機材などあれば、その活用方法やプレイスタイルなど教えてください。
DJ KRUSH 現在はSerato DJ ProとVestax PMC20SL(DJミキサー)。特に重要なのはVestax PMC20SLだね。DJ KRUSHスタイルを吐き出すためにはこの20SLが音質、サンプラー操作、エフェクターなどを含めてすごく重要。いまでも海外ツアーにはサブと合わせて必ず2台持ち込んでるよ。
──今回のフェスティバルの印象はどんなイメージをお持ちですか? 場所はホテルのプールサイドで、共演はジェームス・ラヴェルです。
DJ KRUSH どちらかというと俺のDJスタイルは、プールサイドというよりは、都会のマンホールの下から這い上がって世間を眺めてるようなダークな音世界なんだけどね。でも今回はホテルのプールサイド、ゴキゲンな日差しに素晴らしい景色と……真逆。どうしましょう(笑)。
──今後どんなプロジェクトを披露できそうですか?
DJ KRUSH 今年はニューアルバムがリリースできるよう精進するよ。
──今後のアーティストとしての目的地は?
DJ KRUSH 目的地と終点はない。今まで通り走り歩き続けていくよ。
──まだツアーで世界中で回っていない大陸や街はありますか? 直近で海外を回る予定はありますか?
DJ KRUSH これまで回ったのは55カ国以上になる。でもまだ行けてない国もたくさんある。俺の音楽が必要であれば何処にでも届けに行きたいよ。直近では中国ツアーが動き出しそうだね。
──DJ KRUSHさんは80年代に原宿の歩行者天国でのパフォーマンス、MUROさんとのヒップホップ・ユニットのKRUSH POSSEなどがいまや伝説になっています。そのときはラッパー、DJ、ダンサー、グラフィティ、そしてファッションなどはいまの時代のように結束/融合されていたのでしょうか?
DJ KRUSH あの当時は無我夢中でストリートで表現してたよ。ストリートで経験を重ねて、自分の本当にやりたいことを見つけ出す道筋になっていた。現にストリートからさまざまな奴らが生れてたしね。ラッパー、ブレイクダンサー、グラフィティアーティストなどなど。KRUSH POSSEでもダンサーありのライブが多かったよ。
──今回久々に共演するジェームス・ラヴェルとの出会いを中心にお話を聞かせてください。
DJ KRUSH KRUSH POSSEは87年に結成して92年ごろに解散したんだけど、そのころ(91年)に『TVO』サントラのリミックスをやっていて、それが最初のリリースだった。それがイギリスに渡って、向こうで知ってもらうきっかけになったんだ。イギリスの雑誌『Straight No Chaser』の編集長のポール・ブラッドショウが誌面でこのレコードを紹介してくれてね。そこからMo' Waxのジェームス・ラヴェルやTalkin' Loudのジャイルス・ピーターソンの耳にも届いたという流れ。さらにそのころに送ったデモテープもチャートに入って、それで彼らが「DJ KRUSHって誰だ?」って騒ぎ出したんたよね。ジャイルスからも誘われたけど、ジェームスは若かったのもあってとにかく熱心に声を掛けてくれたんだよね。
その後、94年に1stアルバム『KRUSH』を出したんだけど、当時まわりの状況はアシッドジャズが全盛のころで、このアルバムも生楽器をフィーチャーしたトラック多かった。その後ジェームスと会って1stに収録されてる短いトラックを作り込む形のインスト曲ばかりで1枚Mo' Waxで作らないか?とオファーを受けたんだよ。俺的にも1stがジャズ寄りで多くのゲストをフィーチャーしたアルバムだったから、サンプリングオンリーの原点回帰的なショートトラックを散りばめてたんだ。実験的な意味合いもあったし、生楽器漬けだったから良い意味での反動もあった。
当時の俺は決まりきったフォーマット以外に何か他に方法があるんじゃないかと自分流ヒップホップを模索していた時期だった。そしたら同じ思いで音を模索している奴らは俺以外にも世界中にいたんだ。当時のMo' Waxはそこから生まれる新たな音をジェームス・ラヴェルを筆頭に受け入れてひとつの新たな世界をアートを含めて吐き出していた。ヒップホップの「完成度をとるか、自由をとるか」、どちらも素晴らしいけど俺は「自由」選んだ。アシッドジャズ全盛のころ、俺たちはすでにそこには居なく次の創造へ向かい始めていたんだ! そして「KEMURI」を含めた2ndアルバム『STRICTLY TURNTABLIZED』が産み落とされたというわけだ。
▲『STRICTLY TURNTABLIZED』(1994) |
DJ KRUSH レコーディングは94年夏にMo' Waxのパッケージツアーでドイツを10箇所回った後すぐにロンドンに行ってやったんだ。このツアーでかなりの刺激を得たから日本から持ち込んだトラックを全て作り直して1週間で作品に仕上げた。ツアーからアイデアが生まれたんだ。色合いや質感が明確に視えてきたんだね。だから『STRICTLY TURNTABLIZED』には、あの時の空気感が宿っている。そう言えば「KEMURI」を作り終えた翌日、スタジオに入るとエンジニアが目を真っ赤にして開口一番「昨日の曲を勝手にミックス違い作ってみたんだけど、どうかな」って言ってきて……あまりにも曲が気に入ったから徹夜でリミックスしたらしい(笑)。
──シングルカットされた「KEMURI」はその当時のアシッドジャズ・シーンから新たにトリップホップと言うムーヴメントが起こりました。その後、ジェームス・ラヴェルは「俺たちがやっていることはトリップホップでなく、アブストラクト・ヒップホップだと表現しました。意見はジェームス・ラヴェルと一緒でしたでしょうか?
DJ KRUSH あの当時はどんなジャンルかなんて考えてもいなかったし、純粋に俺なりのヒップホップを模索した結果でひとつのスタイルだった。ジャンルという枠は気にしてなかったかな。これもヒップホップだと思って吐き出してたから。でもラップは入ってないし、当時、周りはそう思わなかった人が多かったのかもね。だからあなたの音楽のジャンルは?と聞かれるといつも“DJ KRUSH”と答えてるよ。独自の音楽性と雰囲気により、聴衆に異なる感情や想像力を呼び起こす音楽と解釈している。
■見えない枠を取り払うことは中々難しいけど
■その先にある物に向かって行く志は大切なことだ
──ところでDJシャドウとの出会いはいつぐらいですか? まずは作品でA面、B面でフューチャラのアートワークでリリースしたり、DJシャドウがDJ KRUSHさんのリミックスを手掛けたり、イベントも東京やEUで共演していますが何かエピソードはありますか?
DJ KRUSH 94年秋の2回目のMo' Waxパッケージツアーでシャドウと初めて一緒にツアーしたんだ。そのときのブリストル公演が強烈だった。客がスシ詰め状態で換気扇もないハコだったからその熱気で壁が結露してて、壁を指でなぞると水滴でビショビショになるぐらい。レコード盤まで水滴だらけになってスクラッチができなかったくらい(笑)。だからシャドウも俺もただスピンするだけのプレーンなDJスタイルになっちゃってたな。水滴で感電しつつ、指から煙が出るほどのスクラッチをかましたるう!!は無理だったね(笑)。
あとアルバム『迷走』の「Duality」での彼のドラムの打ち込みはすごかったな。MPCを知り尽くしている手さばきで打ち込んでた。ほとんど言葉が通じなくても「これはどうかな」みたいな感じで音を実際に出しながらお互いのアイデアを積み重ねて仕上げていった。とてもスムーズで楽しくお互い制作できたと思う。吐き出す音はお互い違うけど、何かこうヒップホップを軸として考え解釈して独自のスタイルを築き上げていたんだね。ごく自然に当たり前のように。
──DJ KRUSHさんとDJシャドウ、ジェームス・ラヴェル、そしてフューチャラ2000とで回られた伝説的なMo' Waxツアーについての思い出を教えてください。
DJ KRUSH みんなで連日、ヨーロッパを車で回ってた。時にはイギリス各地を10日間回って、ホテルで寝られたのはたったの2日……といった過酷なものもあったよ。ギャラも考えられないくらいに安かった。でも最高に楽しかったし刺激満載だった!
──DJ KRUSHさんに影響を受けたチルドレンやヘッズがいると世界中に思います。現在2023年ですが国内外問わず弟子と思えるようなDJや気になるプロデューサーはいますか?
DJ KRUSH 従来の様式美をブチ壊し、新たな道を自分で開拓して風当たりを恐れず、自分たちのやり方で音&アートを構築し産み落とす……見えない枠を取り払うことは中々難しいけど、その先にある物に向かって行く志は大切なことだと今でも思ってる。あの当時の遺伝子はアメリカのアンダーグラウンドにも逆影響を与えて、本国イギリスでもドラムンベース、ダブステップ、2ステップなどなどさまざまな音楽スタイルに継承されていると感じるよ。
──DJ KRUSHさんのサインは貴重で素晴らしいです。一人一人に丁寧に世界中のヘッズに書いて上げて皆んな永遠に家宝にすると思います。どうやってあのグラフィティは誕生したのでしょうか?
DJ KRUSH 自分であれやこれやと考えて決めたよ。海外ツアーに行くとファンにはできるだけ書いてる。最近はアテ漢字で「DJ 九羅朱」と昭和の暴走族風(笑)。何かがあったとき、俺のサインを見て前に進む糧になれば幸いだよ。
──DJ KRUSHさんが誰か一緒にコラボレーションしたいアーティストはいますか?
DJ KRUSH いまいろいろと模索してるよ。次のアルバムにしっかり反映できればいいな。
──<MARINA SUNSETʼ23>は逗子で開催されます。そして盟友のジェームス・ラヴェルとの再会になります。何か思い出深いものや、当日披露して頂けるセットなど差し支えなければ教えてください。
DJ KRUSH ジェームスも一緒だから昔の曲も混ぜようかと考えてる。それがプールサイドにマッチするかどうかはわからないけど……(笑)。
──音楽はヒーリング効果などあると言われますが、DJ KRUSHさんは音楽に対してどうお考えでしょうか?
DJ KRUSH 俺にとっての音楽は全てにおいての最重要な扉だよ!
インタビュー:高山康志(RUSH! PRODUCTION)
<MARINA SUNSETʼ23>
リビエラ逗子マリーナ
主催:GREENROOM CO.
出演:
■8.5 Sat.
Felix B (Basement Jaxx) / Maurice Fulton Roger Bong(Aloha Got Soul)
■8.6 Sun.
JAMES LAVELLE (UNKLE/Mo' Wax) DJ KRUSH /高木 完 / Daisuke Gemma
2023年8月5日(土)・8月6日(日) リビエラ逗子マリーナでGREENROOM FESTIVALのAFTER PARTYとして 送るこの夏最高のプールサイドパーティ「MARINA SUNSET」の第三弾出演アーティストと日割り発表! 第三弾出演アーティストとして、世界のダンスミュージックシーンにおいて、ダフト・パンクやケミカル・ブラザーズ、アンダーワールドら と肩を並べるトップアーティストFelix B (Basement Jaxx)、ヒップホップDJとして最前線にて、常に実験的音楽を世に 送り出している奇才プロデューサーMaurice Fulton、の2組の出演が決定。随時発表される今後の情報にも是非、ご注目ください。
公式SNS: Instagram: https://www.instagram.com/marinasunsetjapan/
Facebook: https://www.facebook.com/marinasunsetjp
<全国ツアー情報>
JAMES LAVELLE (UNKLE / Mo' Wax) JAPAN TOUR 2023 FEATURING DJ KRUSH
2023年8月4日(金)CIRCUS TOKYO @東京
HP: https://circus-tokyo.jp
Instagram: https://www.instagram.com/circus_tokyo/
2023年8月5日(土)CIRCUS OSAKA @大阪
HP: https://circus-osaka.com
Instagram: https://www.instagram.com/circus_osaka/
2023年8月6日(日)MARINA SUNSET @逗子マリーナ
HP: https://marinasunset.jp/https://marinasunset.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/marinasunsetjapan/
◆DJ KRUSH オフィシャルサイト
◆<MARINA SUNSETʼ23> オフィシャルサイト
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