【インタビュー】SEELA [D’ERLANGER]、「10年前から本当の意味で始まった」
■『LAZZARO』を作っていた時から
■ミラクルの歴史が始まってます
──そこも大事ですよね。そして今回のツアーでは、訪れる先々でライヴの前夜にインストア・イベントが開催されていたりもします。こちらについてはどうです?
SEELA:えーと、お客さんと間近なところで接したりするのは楽しみではあるんですが……なにぶん俺の場合、喋りのほうが苦手なので(笑)。まあ、そんな俺らを見てください、という感じで。ずっと喋っているとグダグダになっていくだけですからね、自分の場合(笑)。
──いや、でもD’ERLANGERのトークがこなれ過ぎていたら逆に嫌かも。
SEELA:というか、こなれる以前に俺はトークに慣れることがないと思います(笑)。毎回、初めて臨むような感覚。自分の場合はそうですね。なんか、言葉とか活字を通じて伝わることもあるはずだし、そこから何かを捉えてくれる人もいっぱいいると思うんですけど、自分はそっち方面が苦手なんで、音を聴いてわかって欲しいな、という気持ちがどこかにやっぱりありますね。
──4人のトーク・イベントに臨むスタンスにもおそらく違いがあると思うんですけど、たとえばkyoさんが喋っているのを見ながら「上手いこと喋りよるな」とか思ったりもするわけですか?
SEELA:あの、めちゃくちゃ思ってますね、それは(笑)。俺以外3人ともそうだと思ってます。CIPHERもいざ喋り始めると上手いですからね。ホンマに自分の場合は“意外とよく喋る”というようなことすらもないんで(笑)。
──今、ふと思ったんですけど、D’ERLANGERの場合、集合トークのあり方にもどこかバンド・サウンドの構造に似ているところがあるというか。
SEELA:ああ、それはあるかもしれない。ホンマにちょっと似たところがある気がしますね。
──そうだとすれば、このバンドはまさに語り合うように演奏しているというか、4人の会話がそのまま音になっているようなところがあるわけですね。
SEELA:不思議なもんですね。確かにそれは言えてると思います。
──ところでSEELAさんの口癖に、ミラクルというのがあります。僕がこれまで話を聞いてきた取材対象のなかに、これほどミラクルという言葉を口にしてきた人はいません。
SEELA:ああ、そうなんですね(笑)。自分らの場合、毎回のアルバム制作が短期間で、限りある時間のなかでガーッとやるのが常なんですけど、ある意味、どうなるかまったく想像できてなかったところからレコーディングを始めていながら、終わってみるといつも“おっ!”という仕上がりになってるわけです。そのことを指して、いつもミラクルと言ってしまうわけなんですけどね。
──それをバンド・マジックと呼ぶ人もいれば、ケミストリー、化学反応と言う人もいる。
SEELA:そうですね。そこは言葉の選び方の違いであるだけで。
──ただ、すごいのはそれが毎回起こっているということなんですよ。言葉通りに捉えれば、ミラクルは奇跡。だけど奇跡というのは本来、そうそう起こるものではないわけで。
SEELA:確かに。ただ、それが起こらないことというのがないんですよ。少なくともこれまで4人でやってきたなかで、それが起きなかったことがなくて。ただ、それは“どうせ起こるだろう”というのとは違うんです。それが起きることを想定してるわけではない。常にどうなるかわからないと思いながら臨んでみるんだけど、結果的にいいものができている。だからミラクルと言っているわけなんです。
──すごい話です。今回のレコーディングでもそれは感じたわけですよね?
SEELA:うん。変な話、20数年前というのはミラクルとかそんな感覚はべつになくて、ただ、ガムシャラにやってただけやったと思うんですね、記憶を辿ってみれば。ところが再結成して、一発目の『LAZZARO』を作っていた時に“おおっ、めっちゃカッコええのできたやん!”という感覚があって。そこからミラクルの歴史が始まってますから。
──復活が決まって最初に4人で音を出した瞬間に、一気に空白の時間が埋まったという話が当時ありましたよね? そんなことが起こり得たのは、やっぱりそのブランクの間も各々が動き続けていたというのが大きかったんじゃないかと思うんです。
SEELA:それはあるでしょうね。そうじゃない流れでの再結成というのもあると思うけど、自分らの場合、各々が違う場ではあれ活動を続けていたといのが大きかったと思う。それが確実に糧になってるでしょうし、血になっているはずですからね。
──つまり、長年一緒にやっていなかったという新鮮味だけでミラクルが起きたわけではない、ということ。
SEELA:そうですね。なんかね、17年も一緒にやってなかったけども、そこで“一瞬で戻った感”というのだけじゃなく、それ以上に感じたものがあったわけです。言葉ではうまく説明できないけども、その感覚については。
──たとえば遠い昔、バンドが始まった当初というのは“俺たち以上にカッコいいバンドなんかいるわけない”というような、根拠のない自信があったはずだと思うんです。ところが長年離れていた間に、それぞれが根拠を伴う人になっていたというか。
SEELA:ああ、うん。そういうことなのかもしれない。変な自信ではなくてね。こうしてそれぞれ成長してきたうえで、お互いのことをカッコええな、と素直に思えるというか。他のメンバーたちがカッコええなと思わせてくれるから、こっちもそう思わせたくなるし。
──そこで誰かが一歩後ろに下がって引き立て役に回ろうとするような感じであったなら、こうはなっていなかったんじゃないかという気がします。たとえば一緒に音を出しているなかで、他3人のメンバーについて変化を感じているのはどんなところですか?
SEELA:音を出していての変化ということですか? いや、大きく言うとそんなに変わってないと思うんです。細かいところでは、その時々でちょっとした音の変化とか好みの変化というのが当然あるんですけど。基本的にはみんな変わってないというのを再結成した時に実感したし、今でもそこはそのままの感覚ですね。いろんなアプローチをするようになってはいても芯のところは一緒、という感覚がある。それは自分についても同じことで。
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