【インタビュー】kyo [D’ERLANGER]、「これはもう向かうところ敵無しですよね」

■CIPHERのメロディに対して
■言葉を載せたいという欲求が出てくる

──そうした向上が今作の制作時にも感じられたわけですね。とはいえ、レコーディング作業はかなりスケジュール的に慌ただしかったようですが。

kyo：否定はしません（笑）。でもD’ERLANGERの場合、いざレコーディングが始まると、早いですからね。慌ただしいといえば慌ただしいけども、追い詰められてる感じはそんなにないかな。だから今は、こういった時間の流れのあり方がこのバンドにはわりと向いてるのかな、とも思います。

▲8thアルバム『J’aime La Vie』

──CIPHERさんは曲を大量生産するタイプではないし、前もって少しずつ出してくる感じでもないはず。むしろ、一気にドンと出てくるわけですよね？

kyo：そうですね。今回もそういう意味ではいつも通りでした。でも、ドンと出てくるとは言っても、5曲一度に、みたいなことではないし、ちょうどいいドンなのかな、と（笑）。たとえば3曲ずつ3回にわたって、みたいなイメージですね。今回の場合、「Vanilla」はもうすでにライヴでもやっていたし、「LOVE is GHOST」は、「Vanilla」と同じ時に新曲候補としてあったものなんです。だから厳密にいうと、本当に真新しいのは7曲ぐらいということになるのかな。新しい曲ができてくると、その場で聴いて、みんなでちょっと合わせてみて、曲の外枠というか、絵でいうとアウトラインみたいなものを重ねていって……。そうやってまず曲に触れるじゃないですか。すると何かが、もわもわもわっと出てくるわけですよ、自分のなかで。その感覚が熱いうちに言葉を綴りたいな、というのがあるんで、スタジオでのプリプロから帰ってくると、まずノートに向かうんです。そこで歌詞が形になる日もあれば、大枠だけだったりイメージだけで終わる日もあるんですけど。きっとその作業の流れが自分にとっても合ってるのかな、と。

──1曲の歌詞に集中して書いていくのではなく、例えば3曲のプリプロをしたならば、そこで得た感触をもとにどんどん言葉を書きつけていくわけですね？

kyo：そうですね。とりあえず浮かんだものをばらまくというか。そういうところから僕のなかでの制作が始まるんです。もちろん1曲に集中してそれを完成に近付けていこうとすることもあれば、3曲あった場合に、それぞれについて同時に投げていくこともあるわけです。それくらい、スタジオで感じるものが強い。CIPHERのメロディに対して言葉を載せたいという欲求が出てくるし、バンドで音を合わせてみた時に“ああ、この曲はこういう表情になるんだ？”という発見をして、そこでの面白さから書いていくこともあるし。だから時間的にはそんなに長くかけるわけではないんだけども、プリプロの場で感じたものを、まずはばらまいてみる。

──ノートPCではなく、いわゆる紙のノートに書きつけているんですか？

kyo：だいぶパソコンでの作業にはなってきましたけどね。パソコンのほうが言葉を組み替えたりする時に便利だというのはあるし。ただ、パソコンで何かを打ってる間に、浮かんでたはずのものを忘れてしまうことがあるんですよ。だから、ポッと何かが出てきた時は、まずノートにサーッと書いていく。ノートを開いたら、左のページにどんどん言葉をばらまいていくんです。浮かんできた言葉とにかく書きつけていく。それを右側のページに清書するというか、必要なものを選んで整理していく感じで。だからあとでノートを見てみると、“あ、この歌詞には手こずってたんだな”というのが自分でもわかったりします（笑）。右ページに絵を描いてたりすることもあるし。

──面白いです。僕もそのノートの使い方、真似させてもらおうかな（笑）。

kyo：しかもその作業が、自分にとっては苦ではないんですよね。だからさっきも言ったように、追い詰められてる感じはそんなにもなくて、時間の流れ方として好ましい感じなんです。だからこそ、そういう作業を自分でも楽しんでいられてるんだと思う。

取材・文◎増田勇一





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