【インタビュー】モンストに没入できる秘訣は“音楽”にアリ。モンスト初の単独オーケストラコンサートの魅力も徹底解明
■ 自転車に乗っているときに思い浮かんだのが9割ぐらい(笑)
■ 疾走感がある状態で浮かんだもののほうがいい
── ゲーム音楽ならではの意識と言いますか、気をつけている部分は何かありますか?
桑原:ゲームにもよりますが、モンストの場合はRPGのような明確なストーリーがあるわけではないので、曲のメロディーによってプレイするユーザーの方々が思いを馳せるような、気持ちのジャンプ台になるようなモノとして機能するようにとは考えています。作曲家としては、つい色々なところにギミックを仕込みたくなったりもするんですけど、聴き手としてはそういうものって曲の中にひとつあれば良かったりします。何十回何百回聴いても飽きずに、ふと口ずさんでもらえるようなしっかりしたメロディーを作ることで、ゲームへの没入の助けになればいいなと思います。僕の場合、作曲する時はピアノはあまり使わなかったりもして。作ってきた曲の9割ぐらいは自転車に乗っているときに思い浮かんだモノだったりするんですよ(笑)。
── そうなんですか!? 自然と沸き上がってくるモノを大事にされているんですね。
桑原:頭の中ではオーケストラ全体が鳴ってるんですけど、その骨格となるメロディーやコードをその場で五線紙のメモに残すんです。で、その溜まったメモから数日経っても自分が思い出せるものを抽出するようにしています。自分が忘れたものは他の人も忘れちゃうかなと。
── となると、締め切り間近は自転車に乗ることが多かったりも?
桑原:先日、2曲を仕上げるのに24時間しか猶予がないときがありまして。すぐ自転車で飛び出しました(笑)。
── ハハハハ(笑)。作曲家はピアノやPCの前で唸ってるようなイメージがありますけど、桑原さんはそうではないんですね。
桑原:やっぱり、血流が良くなるのか、体を動かしているときの方がいろんなことが思い浮かびやすいんですよね。あと、モンストはバトル曲が多いので、疾走感がある状態で浮かんだもののほうがいいと言いますか、止まってるとゆっくりした曲を作りたくなっちゃうし(笑)。
── やはり、たいへんなスケジュールで制作することもありますよね。
桑原:そうですね。ただ、私のほうから新曲の制作を提案させて頂くこともあるんです。例えば、爆絶クエストの曲なんですが、最初はストックしてあった曲からより緊張感があるモノを使うというお話だったんです。ただ、爆絶は今までにないステージであり、そこに出てくるアヴァロンというキャラクターに凄くイメージをかき立てられるものがあって、やはりそこに合わせた曲が必要だなと強く感じました。それで、リリースまであと2日しかなかったんですけど、ダメ元で作らせて欲しいとお願いをしました。
── 迫ってくる緊張感があり、ユーザー人気も高い曲だと思いますが、そんなことがあったんですね。
桑原:印象的なステージとキャラクターでしたし、オペラで言えば“劇的”なものが合うかなとその場で感じました。そのインスピレーションを元に緊張感のある感じで作らせていただきました。
── 曲のイメージの発端はそういったところからスタートするんですか?
桑原:今お話しましたように、ステージの絵や出てくるキャラクターがどういった内容かがとても重要で、そこから始まります。作曲する際、最初の打ち合わせは凄く大事なんです。モンストであれば、木村さんを初め曲を発注する方からいかにイメージを引き出せるかがポイントになります。そこで浮かんだファーストインプレッションから作り出すのがいちばん上手くいくことも多くて。作曲家にはそういったコミュニケーション能力が必要なのかもしれません。
── 実際に自分で自分の曲を演奏するミュージシャンですと、ライヴの現場で感じたお客さんの反応であったり、たくさんの人がCDを手にとってくれたりと、喜びのポイントがいくつかあると思うんですが、ゲーム音楽を制作してる中で、そういったことはどこで感じますか?
桑原:作るときに大切にしているのは、何よりゲームに合うかどうか。私自身もプレイするんですけど、遊んでくれる方がいかに没入できるかがすべてだと思うんです。ですから、評価というよりも「何か違うな」と言われなければ成功と言えるかなと思います。
── ゲームの世界観に引きずり込んでくれるスイッチみたいな存在になればと。
桑原:そうですね。明確なストーリーがないゲームですと、音楽が持つ役割は相対的に大きくなる場合があります。開発チームが凄く頑張って、楽しく遊べるモノを作っているのに、音楽が合わないものだったら台無しになってしまいますよね。音楽自体を素晴らしいと言っていただけるのはもちろん嬉しいんですが、やはりゲームを楽しめたと言っていただけることがゲーム音楽として何よりの成功でもありますし、ありがたいことだなと思っています。
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