【インタビュー】SuGはいかにして10年を歩んだか? アイデンティティを凝縮したベスト盤『MIXTAPE』
■SuGの10年を作った楽曲たち
──分かりました。その武道館に向けたプロジェクトのなかで発売されるベストアルバム『MIXTAPE』は「SuGとは何か」、その答えを込めて作った作品だと聞きました。収録曲の中から“これが俺が思うSuG、その答えだ”というナンバーを1曲ピックアップして、選んだ理由を教えてもらえますか?
▲『MIXTAPE』LIMITED EDITION |
shinpei:「sweeToxic」。こういう曲調ってなかなかないなって思ってて。その後確実に武器になっていったと思います。SuGの。
──ブラック・ミュージックの要素はメンバーのみなさんルーツに持ってるんですか?
shinpei:あるのは武瑠君とyujiの2人ぐらい。俺は自分にないものだったりします。けどファンクは好きなので、そういう要素を組み合わせて。この曲は唯一無二な気がします。
──ビジュアル系の中でこういう曲をやってるバンドはSuGしかいなかったですよね?
shinpei:そこは自信ありますね。
武瑠:YouTubeの再生回数はこの曲が一番なんですよ。みんな「☆ギミギミ☆」とか想像しがちだけど、こっちの方がはるかに再生されてて。周りから見えかたとか、SuGの音楽的な評価が変わった1曲ではありますね。「SuG? ビジュアル系のバンドでしょ?」「ただポップなだけでしょ?」というのが「sweeToxic」やその前のアルバム『Lollipop Kingdom』で変わった気がします。
masato:「gr8 story」はメジャーデビュー曲なんですけど。曲はバンドの始まりを歌ってるんですけど、ライブの構成で見てみると、ライブを始めることも終わらせることもできる。
yuji:マルチプレーヤーだ。
masato:確かに。そういう意味では、SuGの軸の一つを担ってる曲なのかなと。
yuji:「KILL KILL」は歌詞をファンから公募したり、サビよりもAメロが曲の“顔”でタイトルのコーラスが入ってたり。できないと思うんですよ。こういうのは。こういう発想ができるバンドは他にはいないと思ったんで。SuGだからできたという意味で、俺は「KILL KILL」。
武瑠:「SICK’S」かな。毒があって、踊れて、メッセージ性があって闇がかってる。毒がありつつ、闇ちょいありポップというのが一番SuGの中心線かなと思うので。SuGの歴史の中でその“属性”を一番出してる最新作がこれ。
──どれも雑多な音楽がミックスされていて、ビジュアルシーンからはどれも、何かがはみ出してますよね。
武瑠:はみ出してるというところで、音楽シーンの立ち位置的なところでいうと、自分たちでは「sweeToxic」が決定的だったと思うんですよ。これ出して対バンもとりやすくなったし。ロキノン系のバンドにも「これはスゲェ!」っていわれるようになった。ビジュアル系だけじゃなくて、こういう曲は周り見渡しても本当になかったんで。
shinpei:「なんだこれ?」って思ったのかな。
武瑠:そう。だから「純粋にこれはカッコいい」っていってくれる人が多かった。
yuji:だって、前のバンドでパクったらしいから。ウチのマネージャー(笑)。
武瑠:ロックバンドだったのに(笑)。
yuji:パクって作ったのにボツになったらしい。
マネージャー:原曲とあまりにもに似すぎてるということでボツになりました(笑)。
──パクりたくなるぐらいカッコよかった。
マネージャー:ええ。カッコいいです!
武瑠:でもあれは、アレンジが秀逸すぎて真似できないと思う。コードをパクったらできるとか、そういうことじゃないから。結構いろいろ混ざった感じだと思います。ビジュアル系の中でファンク的な面白いアプローチをした原曲があって。そこにポップと毒をプラスしようという発想があって。さらにそれを形にできるアレンジャーのTom-H@ckさんがいて。でも、歌詞はマニアックにせず、ちょっと子供っぽいイタさを持ってて。そういういろんなものが合わさって奇跡的なバランスでできた曲だと思います。僕ら的にはこれがあったから、また活休から復活を目指せたというのもありました。
──この曲が復活を後押ししたということ?
武瑠:はい。こういう音楽をやれば、復活してもやれるんじゃないかって。そういう可能性を感じた曲でもありました。
──なるほど。活動的に見ると、SuGはなぜ復活以降、異端児色を強めていったんでしょうか。
武瑠:活休前、昔はゾロとかTHE KIDDIEがいたんですよ。
──でも、両バンドとも解散して。
武瑠:復活してからのほうが孤独な道を歩く時間が多かったなと思いますね。仲よかったバンドが解散しちゃったのもあって、激的に対バンとかも減ったし。復活後は。やっぱ人とぶつからないと。ワンマンツアーだけやってると、自分たちの個性が分からなくなるんですよ。それで、より自分たちは誰と対バンしていいのか分かんなくなりましたね。この3年間は。
▲『MIXTAPE』STANDARD EDITION |
武瑠:模索でしかなかったですね。「この道だ!」って思ったことはいまでもないです。だって、いないから。一緒にやる人が。いまは自分らの“仮想ライバル”みたいなバンドが見つからない。それは音楽的なこととか規模がどうのこうのというんじゃなくて。単純にやりたいことが自分らと近い人がいないってこと。だから、これからすごく孤独な道で戦うしかないなっていう覚悟を持とうとしながら、模索して進んできた3年だった。いまも全然誰とやっていいのか分かんないし、誰に相談してもそう言われた。「独自だからそれでいいんじゃない?」「個性があるんだからそのままでいいんじゃない?」っていってくれる。よくいえばそうだけど、それは“孤立”してるという意味でもあって。だから、どのフェスにも出れないのが現実ですよ。
──こんなに曲もポップでみんなが楽める親和性の高い音楽をやってて、メンバーも怖そうなお兄さんじゃなくて親しみやすくて。外に向けて扉を開いているバンドなのに。
武瑠:だからだと思います。ウチはすごく芸能寄りのバンドなんだと思います。本質が。話題とか、ものの面白さで勝負するバンドだと思うんで。その上で、ステージに上がるバンドなんですよ。ライブだけでのし上がっていくバンドではないんで。そもそも。
──あー、まあそうですね。
武瑠:ライブバンドからシーンはできていくので、当然といえば当然だと思います。ポップであったりキャッチーだとシーンはできづらいんです。コアな方が、すぐに同じような仲間が集まってきて「ライブ、一緒になろう」ってなってシーンが生まれる。そこに対して、あえて孤独な道を選んで進んでることは、すごい“勇気”だなと思います。自分たちのやりたいことがそうだから仕方ないんだけど。
──孤独すぎてコアな方に寄ってみようと心が揺れたことは?
武瑠:寄るぐらいなら辞めた方がいいですから。勝てないと思うし。コアなジャンルの人たちには。
◆インタビュー(3)へ
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