【『WE ARE X』インタビュー】YOSHIKI「そういう意味では、自分を褒め称えてあげたい(笑)」
X JAPANの知られざる歴史を描くハリウッド映画『WE ARE X』が、ついに3月3日(金)に日本公開となる。X JAPAN及びYOSHIKIのことをよく知る人も、もちろん知らない人も、釘付けになるシーン続出のドキュメンタリー作品だ。
◆YOSHIKI画像
その映画が生まれる経緯や内容などは、これまでもYOSHIKIの口から断片的に語られてきたが、全国封切りをまえにYOSHIKIへの直撃インタビューを決行、映画誕生から完成に至るまでの心模様に迫ってみた。
──ついに映画『WE ARE X』が公開となりますが、今改めてどのような心境ですか?
YOSHIKI:どんな脚本作家でもここまでの脚本は書かないと思いますね。もう何回も観ていますけど、見るたびに発見があるんです。「ああ、こういうことだったんだ」「やっぱり、本当にこの物語は起こったんだ」ってね。
──あまりにドラマティックすぎる?
YOSHIKI:ドラマティックすぎる。自分でもどこかで「本当は起きていないんじゃないか」「朝起きたら全部夢だったんじゃないか」みたいな感覚もありましたから。もちろん、HIDEのお葬式とか部分部分では覚えていますけど、それらがまとめて来るととてつもないインパクトがあって、自分でも消化しきれなかった。最初の2~3回は途中から涙が出て観られなくなったのは、あまりに衝撃的すぎたからですよね。
──監督はスティーヴン・キジャックという外国人なわけですが、X~X JAPANをよく知る人ではないという点が、どう作用したと思いますか?
YOSHIKI:ラストライブ<THE LAST LIVE~最後の夜~>(1997年末に東京ドームで開催された解散ライブ)の映像すら最初の5分で涙が出てしまって観られないのに、X JAPANの全体のヒストリーなんかとても無理。だから、アメリカのエージェントから映画製作のオファーを頂いたとき、最初は「できない」と言ったんです。でも、この映画自体が「音楽ファンに限らず、心に傷を負った人たちに希望を与えることができるんじゃないか」「人を救える事ができるんじゃないか」ということで、作ろうと決心した。だから僕らは、その中で題材に徹しようと思ったんです。
──単なる素材として?
YOSHIKI:そう。そうじゃなければ、無理。ただ、条件として「X JAPANを知らない人に撮ってほしい」と思ったので、監督とプロデューサーは選ばせてもらった。それで『シュガーマン 奇跡に愛された男』というアカデミー賞も受賞しているプロデューサーのジョン・バトセックを紹介され、そこから一緒にディレクターを探して、ザ・ローリング・ストーンズの『ストーンズ・イン・エクザイル~「メインストリートのならず者」の真実』を撮ったスティーヴン・キジャックと出会った。
──ほお。
YOSHIKI:監督候補には50から100もの一流監督のリストがあったんですけど、そのなかにはX JAPANをとてもよく知っているという人も何人かいたんですけど、今回は残念ながら…。
──普通に考えると、そういう監督の方がいい映画が撮れると思いませんか?
YOSHIKI:そうですね。でもね、やはり僕らって、いろんな人がいろんな先入観を持っていると思うんですよ…いい意味でも悪い意味でも。それをいったん取っ払って、ゼロからのスタートにしたかった。
──とにかく冷静に、フラットな目線で描いてほしいと?
YOSHIKI:日本だと、誰かしら知っているでしょうから、そういう意味でもハリウッドチームに作って欲しいと思いました。海外からの目線も含めて「いったい、X JAPANって何?」というところから始まる。スティーヴンと最初にあったのは、マディソン・スクエア・ガーデンの前にその前哨戦として行った横浜アリーナ2daysの数日前だったんで、僕は彼に多くは語らず「X JAPANのライブを観に来てくれ」「自分でX JAPANというものをリサーチして欲しい」と言ったんです。そこから始まっているんですね。
──自分自身が監督を務めるという発想はなかったですか?
YOSHIKI:無理ですね。涙が出てしまう。映像を観れないし語れない。最初、映画の話があっても断っていたくらいだから。そもそもプロモーションになるようなものを作ろうとも思っていなかったし。
──実際映画『WE ARE X』でも、大げさな脚色はないですよね。淡々と事実がつながっている。
YOSHIKI:極端に言うと、自分では嫌なシーンもいくつかありますよ。でも監督に委ねた以上…ね。「これは嫌だな」と思っても監督は譲らないし、「ま、いいか」みたいな(笑)。「これも全部含めてアートなんだろうな」と。
──まさしく題材に徹したわけだ。
YOSHIKI:でも凄く勇気のいることでしたよ。これまでX JAPANでいろんなものを作り上げてきて、音楽を制作する時は完全にプロデューサーですから、“そういう自分が題材に徹することができた”というのは、それはそれで自分を褒め称えてあげたい(笑)。
──よく耐えた、と?
YOSHIKI:「こんなシーン、いやだけど…」というそれも含めて。「もっとカッコよく頼むよ」って(笑)。
──そりゃそうだ(笑)。
YOSHIKI:ま、かっこいいところもあるとは思うんだけど、全部含めてカメラの前で裸になったわけだから。
──過去の出来事の中には、映像として残っていないシーンもたくさんあったんでしょう?
YOSHIKI:でも、映像素材の量という点では、普通の部屋に入りきれないくらい大量にありますから、そうなるとやっぱり監督さんのチョイスになりますよね。90~100分という長さの中で作り上げるわけですから。
──映画用のシーンとしては、新たにインタビューも受けていますね。
YOSHIKI:インタビューも、最初はあんなに心は開けなかったな。HIDEが亡くなった時、ロサンゼルスに帰って僕は完全に壊れてしまったんです。そのときに精神科医に通って「死にたい」「生きたくない」と心の中を洗いざらい話をしていたんですけど、その時「うんうん、あなたの気持ちはよく分かる」とか言われてね、その瞬間に「分かるわけないだろ!」ってブチ切れたりして、セラピーもうまくいかなかったですよね。もう、その時の様子を思い出しちゃって(笑)。
──トラウマだ。
YOSHIKI:でも、このチームが僕の状況を理解していることがわかってから、やっと話せるようになっていったんです。
──思い出したくない/触れられたくない部分を引っ掻き回されるつらさですか?
YOSHIKI:苦しみですね。なんか、ほんとに心のなかに手を入れられてえぐり引っ掻き回されたみたいな。でもそれによってさらに前に向くことができたと思います。
──結果的には良かった。
YOSHIKI:結局、人なんて過去を背負って生きていくしかない。それを見ないようにしようとか避けようとしている間は、本当の未来には直面できないから。
──過ちや反省点も含めて、それがあるから今がある…それが人生です。
YOSHIKI:決して肯定はできないものもいっぱいあるんですけど、だけど…何ていうのかな、父親がああいう死に方をしていなかったら僕はロックミュージシャンになっていなかったかもしれないし。
──ええ。
YOSHIKI:こういうことがあったから、今ここにいるんだとは思います。もちろん「メンバーを失いたくなかった」という思いはありますけどね。
──他のメンバーは『WE ARE X』を観て、なんと言っていましたか?
YOSHIKI:ToshIは言葉を失っていました。ToshIって基本的に頭が良くて客観的に見る力を持っているから「よくできているよね」って言ってた。
──『WE ARE X』のサントラも楽しみにしています。
YOSHIKI:映画に使われた曲の中から収録されている作品です。ただ、「La Venus」に関してはアコースティック・バージョンが収録されています。「Without you」もこのためにToshIとふたりで新たにアコースティック・バージョンを収録したんですが、これは、映画のシーンが印象的だったと言われたので。サントラのリリースは、アメリカのソニーから話をもらったんですけど、日本でも古巣のソニーからリリースとなるので、なんか縁を感じますよね。ワクワクしています。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
X JAPAN『WE ARE X』オリジナル・サウンドトラック
SICP-31050~1 ¥3,000+税
日本盤のみ
※ボーナス・トラック2曲収録の2枚組
※Blu-spec CD2仕様
※日本オリジナル赤ジャケット仕様
※初回生産限定盤のみ特殊三方背BOX仕様、X JAPANロゴ・ステッカー付(3種の内1枚ランダム封入)
※2月8日よりiTunes storeにて先行予約開始。(日本は海外より14時間先行)
CD1
1.La Venus(Acoustic Version)
2.Kurenai(From The Last Live)
3.Forever Love
4.A Piano String in Es Dur
5.Dahlia
6.Crucify My Love
7.Xclamation
8.Standing Sex(From X Japan Returns)
9.Tears
10.Longing ~Setsubou no Yoru~
11.Art of Life -3rd Movement-
12.Endless Rain(From The Last Live)
13.X(From The Last Live)
14.Without You(Unplugged)
CD2 -Japan Bonus Tracks-
1.Rusty Nail(From DAHLIA TOUR FINAL ~Mubou na Yoru~)
2.Forever Love(From The Last Live)
『WE ARE X』
(C)2016 PASSION PICTURES LTD.
◆『WE ARE X』オフィシャルサイト
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