【対談】人間椅子 鈴木研一×BARKS編集長、ライブ盤を語る

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烏丸:それでは、僕は「これは知らないだろう」と思しきカードを出します。パット・トラヴァースの『ライヴ!』です。

鈴木:名前しか知らない。これは聴いたことないです。聴かせてください。

烏丸:これは、ラジオで聴いて一発で惚れて即買いしたアルバム。こういうちょっとファンキーで跳ねたグルーブのある音楽を聴いたことがなくて、一聴してシビレた。

鈴木:ライナー見ていいっすか?…お、ドラムがトミー・アルドリッジじゃないですか。すんげえベースも上手いっすね。いいっすね。

烏丸:スタジオ盤も持っていないのに、いきなりライブ盤を買った初めてのバンドだった。そういう買い方したのって、自分でも珍しかったなぁ。

鈴木:確かにライブ盤ってハードル高いですよね。俺はグランド・ファンク・レイルロードがいきなりライブだったですね。

烏丸:あー、確かにグランド・ファンクのライブも名盤ですからね。分かります。

鈴木:グランド・ファンクとシン・リジーはスタジオ盤よりライブ盤のほうがはるかにいい。

烏丸:スタジオ盤が良くないというよりも、ライブが抜群に良すぎるんじゃないですかね。ライブ盤から買って大失敗しちゃったという悲しい思い出のアルバムもあるんですけど…出していいですか?ジェフ・ベック『ライヴ・ワイアー』。

鈴木:えー?ジェフ・ベックだったらBB&A(ベック・ボガート&アピス)じゃないですか?

烏丸:これはね、「なんか有名な人だよな」と思って、何の知識も情報もないままいきなり買っちゃったの。当時ロックというのはハード・ロックかヘヴィメタルのことだと勝手に思っていたんで、当然これもハード・ロックだと思ってね(笑)。ワクワクして聴いたらびっくり。ボーカルもねえしワケのわからんクソおもんねー音楽と思った(笑)。これほど買ってがっかりしたアルバムもないという。当時の俺にジェフ・ベックは早すぎた。

鈴木:確かにジェフ・ベックもハード・ロックの人だと思っていましたよねぇ(笑)。ジェフ・ベックほど予想と違う人もいなかったかも。一緒に演っているのがヤン・ハマーという時点でハード・ロックにはなりえないんだけど。

烏丸:このアルバムのカッコ良さに気付くのは、それから数年後かな。

鈴木:今聴いたらこれ、凄くないですか?ドラムも凄いっすね。

烏丸:全く。でも当時は、こういう「パッションをほとばしらせて表現する音楽」というスタイルの存在自体知らなくて、聴いても意味がわからなかった。「え、どこがサビなの?」とか。

鈴木:高校生の頭では理解できなかったっすね、確かに。改めて聴くとすごい音していたんだなって分かります。高中正義のライブもそうだけど、動かないで弾いてるから“動”の要素はないんだけど、それでもすごくいいライブで演奏者もオーディエンスもものすごく興奮している名演ってあるでしょう?動きで勢いを出すハード・ロックだけが激しいわけじゃないんですよね(笑)。音で激しさを出すということもあるんだなーと。

烏丸:そうですね。勝手な勘違いをしてがっかりしたのって何枚かあったなあ。

鈴木:俺の間違いよりいいんじゃないですか?俺なんか山内テツのソロを買おうとして山下洋輔買っちゃった。全然違う(笑)。

烏丸:だははは、それはキツイ(笑)。ビデオレンタルで「トップガン」借りたつもりで観たら「オーバー・ザ・トップ」だった、ってことあったけど(笑)。トム・クルーズの戦闘機じゃなくてスタローンの腕相撲が出てきた。

鈴木:でも『ライヴ・ワイアー』はいい買い物だったんじゃないですかね。買ったときにはいいと思わなくても、そのまま持っておくべきなんだなぁ。

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