【インタビュー】木村カエラ「“PUNKY”って誰でも持っていて熱く絶対に変わらない自分だけの思い」
■パンクじゃなくパンキーな感じなんだよね
■なんで今までこの言葉を使ってなかったんだろうって思う
――10周年の時のインタビューで、「カエラはいつもフレッシュだね」って話をしましたが、そのフレッシュさを維持するためには、メンバーをチェンジして、細胞を入れ替えるくらいのことが必要だったんだなぁと思いました。
木村:フレッシュさが必要だったのに、経験もあるし、いろんなことが邪魔をし始めて。10代の時の気持ちのまま突っ走っていたのに、ある日突然、すごい大御所!みたいな気持ちにどこかでなってしまっていたというか。自分が生んできた「カッコイイ」の定義もあるし、いろんなことが邪魔をするっていうか。それを一回捨てました。捨てた事で、剥がれたなって思う。いい意味で。
――だからこそ『PUNKY』というタイトルでもあるし。
木村:青春、10代。尖ってる、みたいな。
――原点みたいなものも今作では感じますよね。
木村:剥がれ落ちたから。意識せずともそういうものになったかなという感じはします。
――しかも、戻ったというよりも、積み上げたものがあった上での原点なんですよね。
木村:はい。新しい道を発見してそこを歩んでいるような。
――今まで、『PUNKY』なイメージってずっとありましたよね。ヘアスタイルにしろ。だから、この言葉って今まで使ってなかったっけ?思うくらいシックリくるんですよね。
木村:実は私もすごくシックリきていて。パンクじゃなく、パンキーな感じなんです。なんで今までこの言葉を使ってなかったんだろうって思いました。やっぱり人って、自分のことをわかっていないんですね(笑)。自分のことをわかって、このアルバムを作ることができてすごく良かったなって気持ちがすごくあります。
――『PUNKY』という名前やテーマが降ってきたのはどのタイミングだったの?
木村:今作のジャケット写真を撮影した時でした。その頃は、だいたい6曲くらいできていて、あと6曲くらい作りますよってなっていたんだけど、曲作りの方向性がまだブレていた時期でもあって。打ち込みやった方がいいのか、でも生音が好きだしなぁみたいな。でも、このジャケットのアートイメージは、ガッツリ頭の中にあって。夢は追い求めていたいし、希望も持っていたいし、輝いていたいから、キラキラしたものを身につけた写真を撮りたかったんです。それはとがっているスタッズだったりスパンコールだったり、星だったり、鏡だったり。とにかくキラキラしたものをくっつけて写真を何枚も撮りたい、時間をかけて作品になるような写真にしたいっていうところから始まったんです。いくつもパターンを撮っていく中で、顔に鋲をつけた写真があったんだけど、その瞬間に、「これじゃん!?コレ、コレ、コレ!」ってなったの。そこからアルバムも進み始めて、『PUNKY』ってタイトルも決まって、自分がやりたかったことも、自分がなりたかったものも全部できて。
――まさに、この1枚は降りてきた瞬間なんですね。
木村:はい。全部、スッキリ!みたいな感じだった。最初は方向性が決まっていなかったから、スパンコールを顔にいっぱいつけたやつをジャケットにしたいって言ってたけど、これを撮った瞬間に「これジャケット!」って気持ちになりました。良かったです。
――このビジュアルには『PUNKY』というタイトルしかない……くらいの感じだよね。そこからタイトル曲の「PUNKY」もできた?
木村:ちょうど歌詞を書いていたと思います。
――「There is love」はタイトルが決まってから?
木村:これは本当にレコーディングの最後の方。
――なるほど。納得。イントロが逆回転になっていて、すごくUKなテイストですよね。やっぱりパンクと言えばUKだから、1曲目にピッタリだなぁと。
木村:はい。バグパイプを連想させるようなギターの響きも入ってるし。
――シングルの曲もあるから、まとめるのは大変だったと思うけど、この「There is love」でUKな感じで始まって、後半にシド&ナンシー(イギリスを代表するパンクバンド、セックスピストルズの2代目ベーシスト・シド・ヴィシャスとその恋人)が出てくるタイトル曲「PUNKY」があることで、アルバムのテーマが全体を貫いたという感じだよね。
木村:実は『PUNKY』ってタイトルに決まるまでは、テレビ番組の主題歌とか映画の主題歌、CMの曲とか、テーマが決まっているものを作ってから、その曲をちりばめるのがすごく難しくて。2~3曲目でアルバムの印象って決まっちゃうから、2曲目か3曲目で温かいものとパンクを混ぜられたらいいなと思って、「ぼくたちの歌」でパンクな感じを出して「EGG」につなげました。最後の方には大きなもの……愛を歌った「向日葵」も入っているからそこまで繋がってくれたらいいなぁって。納得いってないものを作ることほど辛いことはないから、今回は本当にうまくまとまったなぁと思っています。
――「EGG」のカップリングだった「オバケなんてないさ」もいい感じのポジションですよね。
木村:ちょうど「THE SIXTH SENSE」って第六感の歌だから、次に入れたらいいかもって。うまくハマるところがあったので。
――個人的には「THE SIXTH SENSE」が好きなんですよ。このいなたいギターが。いつもだと、こういう雰囲気でもオシャレ感があったけど、これは最後までいなたい。だからすごく意外性があって良かった。
木村:ははは(笑)。アイゴンさんが作った曲だけど、私がこれを選んだら、「意外なものを選んだね。これを選ぶとは思わなかった」ってアイゴンさんにも言われました。こういうギターが入っている曲は今までもあるんだけど、だいたい途中からポップになっていて。だから、ここまでのハードロックはあまりやってこなかったんです。この曲、デモのタイトルが「HR」で、「これなんの略ですか?」ってアイゴンさんに聞いたら「ハードロックだよ」って言われて。アイゴンさんのギターがすごくかっこよくて。ギターのリフがループしてる部分とか、すごい好きだから、この曲にはたまらないツボがすごい入ってて。でも歌詞を書くのは難しかったです。
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