【ライブレポート】80~90年代ミリオンアーティスト集結<男祭り>、「タイムマシンを楽しんで」

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9月27日、東京国際フォーラム ホールCで<BACK TO THE GOOD DAYS【男祭り】>が開催された。“音楽はタイムマシン”というコンセプトのもと、森友嵐士(T-BOLAN)の呼びかけに応えて集まったのは、80~90年代に大ヒットを持ち、今も第一線で活躍中のビッグネームたち。昼と夜の2回公演に訪れた多くの観客と共に、懐かしい思い出に浸りつつも未来への新たな決意を示す画期的なイベントの、夜公演の模様をレポートする。

◆<BACK TO THE GOOD DAYS【男祭り】> 画像

18時30分、開演時刻ぴったりに爆音で流れ出したTレックス「20th century boy」に乗せて、全アーティストがステージに登場して顔見世をする華やかなオープニング。最後に、司会進行をつとめるタレントのGENKINGとフリーアナウンサーの海保千里の「チャーリー森友!」という紹介を受け、ジョニー・デップが演じたあの映画の主役に扮した森友嵐士が姿を現すと、場内は大歓声に包まれた。

「みなさんようこそ! 今夜はそれぞれの思いを胸に、タイムマシンを楽しんでください。魂を呼び覚ませ!」


トップを飾るのは、シルバーグレーのスーツでばっちり決めた小野正利。芯の太い伸びやかなハイトーンで「You’re the Only…」「キレイだね」の2曲を、観客席に降りて歩きながら歌う姿に、座っていた観客も思わず立ち上がって大拍手。トップバッターが小野正利、そしていきなりバラード2連発というセットリストに触れ、「なんで、と思ったでしょ?よく考えたら50音順なんですね(笑)」と、観客をなごませる話術も軽快だ。パワフルな声質も声量も、90年代とほとんど変わらない。トップの重責を果たす見事なステージングだ。



このイベントの特徴は、歌→トーク→歌と、昔ながらのテレビの歌番組を彷彿させる構成にある。ステージ後方の階段の上に作られたスペースにソファーが置かれ、まずは司会進行の二人と森友嵐士、山根康広が90年代をテーマにトークを繰り広げる。名曲「Get Along Together~愛を贈りたいから~」の制作エピソードなど、短い時間ながらアーティストの個性が見える、楽しい構成だ。


続いて青いスーツにサングラスのKATSUMIが登場し、ファンキーなビートに乗せて「危険な女神」を歌い出すと、場内の空気が一変した。明るく楽しくリズミックに、カメリアダイアモンドCMソングだった「危険な女神」、そして花王製品のCMソングだった2曲目「Just Time Girl」と、大ヒットにまつわるエピソードを語りつつ、「当時のCM、覚えてる方? 嘘でも手を挙げてもらえれば(笑)」と、明るいキャラで大いに盛り上げる。最後は観客を総立ちにさせる、ライブ巧者ぶりは健在だった。




その後の森友×小野正利のトークでは、お互いに大学時代に教職員免許を取るために勉強していたという、意外な共通点が発覚。アーティスト同士のざっくばらんな関係が伝わって、会場の熱気は徐々に上昇。そこへ飛びこんできたサンプラザ中野くんと、盟友のギタリスト・パッパラー河合が、爆風スランプの大ヒット・バラード「大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い」、アッパーなロック・チューン「旅人よ~The Longest Journey」を立て続けにぶちかますと、またも場内の空気が変わる。「この曲は小学校に入ると体育祭で強制的に聴かされるので、知ってる人がどんどん増える」と笑わせつつ、とどめは「Runner」。河合のスキンヘッドをネタにしたギャグも入れつつ、笑いながらも感動させるロックという個性を遺憾なく発揮し、このメンバーの中での“飛び道具”の役割をしっかりとこなした。




同じレコード会社の1年違いでデビューした、KATSUMIと中西圭三の気心知れたトークのあとに登場した杉山清貴は、この日唯一のアコースティック・ギター弾き語りで勝負する。曲は30年前のソロデビュー・ヒット「さよならのオーシャン」、杉山清貴&オメガトライブの大ヒット「君のハートはマリンブルー」、さらに新曲「あの夏の君と」。爽やかな透明感と、情緒をたたえた歌声の魅力はあの頃と同じ、どころかさらにつややかさを増して聴こえる。「今日の出演者のみなさんは90年代ですけど、僕は80年代です。90年代は仕事をさぼってハワイでフラフラしてました(笑)」と、ユーモラスな語り口で観客を惹きつけるのもお手のもの。自ら“旅芸人”と称するほど毎年多くのライブを続けている、自信と経験に裏打ちされた圧巻の3曲だった。




サンプラザ中野くんとパッパラー河合を迎えたトークは、“カオスな90年代”をテーマに当時の過激なライブ・スタイルやテレビの裏側を暴露して、観客は爆笑の連続。この次に歌うのは大変だろうな…と思いきや、フォーマルな黒スーツに黒ソフト帽で決めた中西圭三の底抜けの明るさと、芸人ばりのノリの良さはまさに脱帽もの。相棒のキーボーディスト・小西貴雄を紹介しつつ、自ら歌う「Woman」、小西との共作でブラック・ビスケッツが歌った「タイミング~Timing~」、そしてZOOからEXILEへと歌い継がれた「Choo Choo TRAIN」と、作曲家としての大ヒットをまじえて一気に盛り上げる。「Choo Choo TRAIN」では“ひとり時間差ダンス”を見せるなど、お茶目なノリに観客も大喜びだ。





杉山清貴とサンプラザ中野くんは、同時期に体験した80年代初頭のバンド・コンテストでのエピソードを、裏話をまじえてユーモラスに披露。ゆったりとなごんだ空気が流れる中に、ジーンズと黒いシャツのラフな格好で、鋭い緊張感を持って登場したのは山根康広だ。まずは彼の代名詞「Get Along Together~愛を贈りたいから~」を、バラードながらもロックの激しさを持って熱く歌い上げると、「ここでもう一丁、みなさんと一緒に盛り上がりたいと思います!」と叫ぶと、ステージいっぱいに全力疾走。アクティブな「少年」、バラード調の「栄光の季節」と立て続けに、激しいシャウトをまじえて歌う姿は、永遠のロック少年そのものだ。その熱気にあおられ、総立ちの波が1階席から2階席へと広がってゆくさまは、実に壮観だった。





杉山清貴と中西圭三、大人の余裕と少年のやんちゃぶりを併せ持つふたりの軽快なトークのあとは、いよいよこのイベントのきっかけを作った男、森友嵐士の登場だ。いきなり「離したくはない」のサビを口ずさむと、間髪入れずにT-BOLANのヒット・チューン「Bye For Now」へ。渋く枯れた声に熱いシャウト、これが一時期まったく声を出せなかった男の歌とは信じられない、豊かな色彩を帯びた声。さらに「懐かしいメロディをぎゅっと詰め込んだメドレーを作ってきました」と紹介し、「傷だらけを抱きしめて」「マリア」「SHAKE IT」「刹那さを消せやしない」「わがままに抱き合えたなら」の豪華メドレーに続き、「離したくはない」をフルコーラス。そして最後は「愛のために 愛の中で」。MCでは、このイベントを思いついたきっかけについて語り、もう一度同世代に元気を与えたいという動機を熱く語る。この声、この熱さ、このオーラ。森友嵐士は健在だ。

「ありがとう。心から感謝します。この気持ちを熱い魂に変えて、今日よりも明日をもっと熱く生きていきましょう」





アンコールはそのまま、森友が出演者全員をステージに呼び込んで始まった。曲は「タイムマシンにおねがい」。全員がボーカルをとり、笑顔でマイクを回しあう。森友が中央でポーズを決めれば、山根がステージ前に走り出てエアギターを弾きまくる。中西がステップを踏み、中野が両手を突き上げる。まるでアフター・パーティーのような明るいノリに、観客も総立ちで拍手を送る。「最高の夜をありがとう。また会おうぜ!」と、森友が叫ぶ。80~90年代を共有した同志たちの、ラブ&ピースを体現する素晴らしいエンディングだ。




終わってみれば、なんと3時間。しかし長さは感じず、それぞれのアーティストの変わらぬ個性と、本物のヒット曲の凄みをたっぷりと味わえる充実の時間だった。この日会場に訪れた観客はきっと、懐かしい歌から新しい情熱を得て、熱く生きてゆくきっかけを得ただろう。そしてきっと、またこの場所へ来たいと思っただろう。過去を目指したタイムマシンは、今度は未来へ向かって進む番だ。「また会おうぜ!」という言葉を信じて、森友の次のアクションに注目していきたい。

取材・文◎宮本英夫

■<BACK TO THE GOOD DAYS【男祭り】>
2016年9月27日(火)@東京国際フォーラムホールCセットリスト

【小野正利】
1.You’re the Only…
2.キレイだね
【KATSUMI】
1.危険な女神
2.Just Time Girl
【サンプラザ中野くん】
1.大きな玉ねぎの下で~はるかな想い~
2.旅人よ
3.Runner
【杉山清貴】
1.さよならのオーシャン
2.君のハートはマリンブルー
3.あの夏の君と
【中西圭三】
1.Woman
2.タイミング~Timing~
3.Choo Choo Train
【山根康広】
1.Get Along Together
2.観覧車(昼公演)/少年(夜公演)
3.栄光の季節
【森友嵐士】
1.Bye For Now
2.スペシャルメドレー (傷だらけを抱きしめて~マリア~SHAKE IT~刹那さを消せやしない~わがままに抱き合えたなら~傷だらけを抱きしめて+離したくはない)
3.愛のために 愛の中で
【All Session】
1.タイムマシンにお願い

【昼公演】開場12:45/開演13:30
【夜公演】開場17:45/開演18:30
▼出演
森友嵐士(T-BOLAN)、小野正利、KATSUMI、サンプラザ中野くん、杉山清貴、中西圭三、山根康広
司会:GENKING
進行:海保知里
スペシャルサポーター:道端アンジェリカ

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