【ライブレポート】T-BOLAN、シングルベストツアーの千秋楽で「“できるかできないか”ではなく“やりたいかやりたくないか”」

ポスト
no_ad_aritcle

T-BOLANが7月10日、東京・日本青年館にてツアー<T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 “SINGLES” ~波紋~>のファイナル公演を開催した。2023年8月の埼玉・三郷市文化会館から38公演、約1年におよぶロングツアーは、“タイムリープ”をテーマに掲げ、これまでの全シングルをライブ披露。どの会場でも会場全体が歌う“シングル祭”となった。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆T-BOLAN 画像

シングル全曲を披露する“最初で最後”のシングルベストツアー<T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 "SINGLES" 〜波紋〜>のツアーファイナルは、デビュー記念日である7月10日、思い出の地・日本青年館で開催された。会場に入るとステージは剥き出しの状態。さらに開演前には、T-BOLANメンバーによるトークがラジオのように会場内に流れ、ライブの様々な楽しみ方を案内してくれる。「会場を訪れてくれたみんなにとって、強力に魅力的で、今できる限りのアイディアを詰め込んだかたちを届けたい」と森友嵐士(Vo)がそのトーク内で語っていたが、その言葉通り、開演前のロビーではメンバーの等身大フォトパネルスポットをはじめ、ファンクラブブースでは参加型SNS企画の実施、ツアーグッズ販売はペンライトを野球場のビール売りのように客席を回遊して販売するなど、ライブ開演前からたくさんの楽しいが届けられた。

開演定刻を過ぎると場内が暗転、時計の秒針が時を刻みはじめた。「離したくはない」「Bye For Now」「マリア」「じれったい愛」など全シングル曲の断片が流れ、'90年代にタイムリープ。そして、白いライトで照らされたステージに、森友嵐士、五味孝氏(G)、上野博文(B)、そしてサポートメンバーの人時(B / 黒夢)、坪倉唯子(Cho / B.B.クィーンズ)、小島良喜(Key)、永井利光(Dr)が姿を現した。一気にヒートアップした会場から、大きな歓声と拍手が上がる。オープニングナンバーは33年前の1991年7月10日にリリースされたデビュー曲「悲しみが痛いよ」だ。


2015年3月にくも膜下出血で倒れた上野は、必死のリハビリでステージに戻ってきた。前回のツアーまではライブの途中から登場していたが、今回はオープニングから森友の隣でT-BOLANサウンドの土台を支える。その上野の姿を見て笑みを浮かべるメンバー。

「オーライ、帰ってきたぜ!東京! <T-BOLAN LIVE TOUR "SINGLES" 〜波紋〜>ファイナルにようこそ! ようこそ!ようこそ!」と森友もいつも以上にテンションが高い。「去年の8月、三郷からスタートしたツアー38本目。今夜のこの会場、俺たちにとっても'90年代思い出の地です。日本青年館、そして(デビュー日の)7月10日だぜ。この特別な日に、特別な場所にみんな今日は集まってくれてどうもありがとう。最後までよろしく!」──森友嵐士

「Bye For Now」「じれったい愛」「わがままに抱き合えたなら」など、誰もが歌えるシングル曲をたたみかける中、キーボードの小島が弾く優しいピアノが、T-BOLAN初のシングルチャート1位獲得曲「おさえきれないこの気持ち」を奏でた。ライブでしか聴くことができないアレンジだ。続く「マリア」もアコースティックバージョンで始まり、途中からバンドバージョンでの演奏というパフォーマンスはこのツアーならではのもの。余談だが、1994年9月に12thシングルとしてリリースされた「マリア」は、アコースティックアルバム『夏の終わりに II』でオリジナルアレンジが発表されていた。その後、ロック調にリメイクされたのがシングルバージョンだった。この2曲は「'90年代を様々な角度で楽しんでもらいたい」というメンバーの思いが込められていたという。

「2枚目のアルバム『BABY BLUE』。初のホールツアーのファイナルがここ日本青年館でした」と1992年7月2日、初めてこの日本青年館のステージに立ったことを森友は口にした。上野は当時の日本青年館を「ステージが小さく感じた」を話し、「それは奢りですね(笑)」と五味にツッコまれていた。また、MCではT-BOLANのファン層が「何歳なのか?」と年齢を聞いていく。「50代? だんだん体がキツくなってきただろ? 俺たちも同じ」と森友は笑いながら問いかけ、10代以下のファンが結構多いことに森友や会場は驚き、「結構いるんだ!? 学校楽しいか? 楽しいこといっぱいやれ! もうすぐ夏休みだ」とメッセージを送った。


「今回のシングルベストツアーのテーマは、“タイムリープ”。曲のイントロや歌詞を耳にすると、その当時の自分の思い出とシンクロするところがあったりする。俺たちは30年前、なんでもできると思っていた。でも年齢を積み重ね、どこかで“これはできる”とか“これはリスク高いな”とだんだん頭が良くなってきた。“やりたいか、やりたくないか”っていうことよりも、“できるか、できないか”を選択してきた」と森友は、自分の過去の状況を語りながら、社会に揉まれて大切なことを忘れてしまった同世代の大人たちに問いかけた。「どっかで失敗しないように生きていこうとする俺たちがいて、そのために衝動やパッションみたいなものをずっと心の奥に閉じ込めて。だけど上手くいくために生きているわけじゃない。俺たち今夜、みんなの胸の奥に閉じ込めちゃった情熱ってやつを引っ張り出すために東京に帰ってきました。自分の信念を曲げた成功と曲げない失敗、どちらを選ぶ? カッコつけていこうぜ!」と語り、'90年代以降、演奏していなかった「サヨナラから始めよう」「すれ違いの純情」そして「LOVE」が披露された。

「シングルベストツアーはメンバーの声も聞きたいかな? 俺は、ちょっとクールダウンしてくるわ」とステージを去った森友。普段ステージ上でMCをすることのない五味と上野が、この後に演奏される「No.1Girl」の振り付けをコーラスの坪倉と共に会場にレクチャーした。'90年代から今もデモテープ作りで使っている森友の私物のラジカセ(通称:キュルキュル)でのレクチャー。これまでに見ることが出来なかったシーンもシングルベストツアーならではの貴重な場面だ。森友が戻ると一気にステージはヒートアップ。そして五味のギターカッティングと観客の拍手で「せつなさを消せやしない」が始まった。観客は大合唱。気持ち良さそうに体を揺らしたり、ペンライトを振ったり思い思いにライブを楽しんでいる。

本編最後は3rdアルバム『SO BAD』収録の「My life is My way」だ。上野はリハビリ中に何度もこの曲のフレーズをベースで繰り返し弾いたという。そして、復帰した時に掲げた「ライブで全曲ベースを弾く」という目標を今回のツアーで見事に達成した。


アンコールの声に促されるようにメンバーがステージに姿を見せると、森友はこう語った。

「いつまでも止まぬ馬鹿馬鹿しい争いが、今も、そして予想を超えた悲しい出来事が続いています。俺たちは何もできないかといえば、そんなこともない。俺たち一人一人が届けられるものがある。俺たち自分自身が幸せな人生を送ること、それが全てを包み込む愛となる。今日一緒にできることがある、“愛の波紋”。愛の思いや愛の気持ちを大きな声で歌えばいい」──森友嵐士

森友は昨今の情勢を嘆きつつも指針を示し、ツアーのハイライトの一つ「愛のために 愛の中で」が演奏された。今回ツアーの同曲演奏時に森友は、ステージから客席に降りて観客の中で、“争いのない暮らしの中で時を刻めたなら…”と歌い、オーディエンスと触れ合う。森友を取り囲むファンに共通した笑顔を体感するために“最初で最後”のシングルベストツアーが行われたのだろう。その笑顔は波紋のように広がっていった。

「“タイムリープ”でいろんなことを語ってきたけど、いつだって今なんだよ。いろんな奴がいる中で俺たち繋がったわけじゃん? 今回のツアーはファイナルだけど、まだまだ繋がっていくわけだ。自分の生きたい人生を生きていこうぜ。今日の日を忘れるなよ。俺たちの永遠の夢を送ります」と「Heart of Gold」が始まった。'90年代、ほとんどのツアーでアンコールの最後を飾ったナンバーだ。サビ部分で森友はファンにマイクを向けた。客電が落ち、“夢と勇気があればそれでいい。諦めはしない。感じるまま生きていくよ、胸に輝き抱きしめて”と満員の観客の声が日本青年館に響き渡る。

「また会おうぜ~」と森友が叫び、約一年に渡るシングルベストツアー<T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 "SINGLES" 〜波紋〜>ツアーファイナルは幕を閉じた。

■<T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 "SINGLES" 〜波紋〜>2024年7月10日(水)@東京・日本青年館大ホール SETLIST

01. 悲しみが痛いよ
02. JUST ILLUSION
03. Bye For Now
04. じれったい愛
05. わがままに抱き合えたなら
06. SHAKE IT
07. おさえきれないこの気持ち
08. マリア
09. サヨナラから始めよう
10. すれ違いの純情
11. LOVE
12. No.1 Girl
13. 刹那さを消せやしない
14. 傷だらけを抱きしめて
15. Be Myself
16. My Life is My Way
encore
17. 愛のために 愛の中で
18. 離したくはない
19. Re:I
20. Heart of Gold

■<T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 "SINGLES" 〜波紋〜>

▼2023年
08月19日(土) 埼玉・三郷市文化会館
open16:00 / start17:00
09月02日(土) 福島・南相馬市民文化会館
open16:00 / start17:00
09月09日(土) 愛媛・西条市総合文化会館
open16:00 / start17:00
09月10日(日) 広島・呉信用金庫ホール(呉市文化ホール)
open16:00 / start17:00
09月21日(木) 青森・弘前市民会館 大ホール
open17:30 / start18:30
09月23日(土/祝) 宮城・トークネットホール仙台(仙台市民会館) 大ホール
open16:00 / start17:00
09月29日(金) 愛知・東海市芸術劇場 大ホール
open17:30 / start18:30
10月01日(日) 富山・富山市芸術文化ホール(オーバードホール)
open16:00 / start17:00
10月08日(日) 神奈川・よこすか芸術劇場 大劇場
open16:00 / start17:00
10月28日(土) 茨城・水戸市民会館グロービスホール(大ホール)
open16:00 / start17:00
10月29日(日) 群馬・メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎(伊勢崎市民文化会館)大ホール
open16:00 / start17:00
11月04日(土) 静岡・三島市民文化会館(ゆうゆうホール)大ホール
open16:00 / start17:00
11月23日(木/祝) 佐賀・鳥栖市民文化会館
open16:00 / start17:00
11月24日(金) 熊本・熊本ウイングまつばせ
open18:00 / start19:00
11月26日(日) 鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
open16:00 / start17:00
12月09日(土) 京都・舞鶴市総合文化会館
open16:00 / start17:00
▼2024年
01月06日(土) 長野・ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)大ホール
open16:00 / start17:00
01月08日(月・祝) 新潟・新潟県民会館 大ホール ※追加公演
open17:00 / start17:30
01月12日(金) 長崎・長崎ブリックホール 大ホール
open18:00 / start19:00
01月14日(日) 宮崎・日向市文化交流センター
open16:00 / start17:00
01月20日(土) 福岡・北九州ソレイユホール
open16:00 / start17:00
01月21日(日) 山口・周南市文化会館
open16:00 / start17:00
01月27日(土) 神奈川・相模女子大学グリーンホール
open16:00 / start17:00
02月03日(土) 大阪・南海浪切ホール ※追加公演
open16:15 / start17:00
02月04日(日) 東京・ティアラこうとう
open16:00 / start17:00
02月24日(土) 鳥取・米子コンベンションセンターBiG SHiP
open16:00 / start17:00
02月25日(日) 岡山・岡山市民会館
open16:00 / start17:00
03月16日(土) 秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール ※追加公演
open16:00 / start17:00
03月17日(日) 岩手・盛岡市民文化ホール 大ホール ※追加公演
open16:00 / start17:00
04月13日(土) 香川・サンポートホール高松 大ホール ※追加公演
open16:00 / start17:00
04月14日(日) 広島・三原市芸術文化センターポポロ ※追加公演
open16:00 / start17:00
04月28日(日) 沖縄・沖縄アリーナ
※森友嵐士プロデュースイベント / 7,000名無料招待
05月26日(日) 千葉・市川市文化会館 ※追加公演
open16:00 / start17:00
06月15日(土) 滋賀・守山市民ホール ※追加公演
open16:00 / start17:00
06月16日(日) 兵庫・東リいたみホール(伊丹市立文化会館) ※追加公演
open16:00 / start17:00
06月22日(土) 福井・鯖江市文化センター ※追加公演
open16:00 / start17:00
06月23日(日) 石川・金沢歌劇座 ※追加公演
open16:00 / start17:00
07月10日(水) 東京・日本青年館大ホール ※追加公演
open18:00 / start19:00

この記事をポスト

この記事の関連情報