ザ・ローリング・ストーンズ映画『ハバナ・ムーン』、歴史的瞬間を捉えた名場面の数々
9月23日、ザ・ローリング・ストーンズによるキューバの首都ハバナでの歴史的な巨大コンサート(2016年3月25日)の模様を収めた映画『ハバナ・ムーン』を観てきた。これは世界同時、日本でも全国18県の21スクリーンで「一夜限りのプレミア上映」として公開されたもの。
◆ザ・ローリング・ストーンズ画像
平日の夜だったのにも関わらず、全体で90パーセント近くの入りだったそうで、ぼくが実際に観た福岡市の映画館でも、到着した頃にはすでに目を凝らして探さなければいけないほど空席は少なく、館内はベロマークTシャツを着たりして思い思いの装いでストーンズ愛を表現したファンの方々の熱気に満ちていた。
映画本編の前には、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ、ロン・ウッドという4人のメンバーへのインタヴューが配され、キューバでの出来事をコミカルなやりとりと共に振り返ったり、ハバナでのコンサートが実現した意味の大きさについてわかりやすく語ってくれた。ストーンズのような西側の超大物ロック・グループがハバナでコンサートを開くことの意味合いはリアルタイムのニュースでもある程度語られていたので集まった皆さんもおおよその理解はされていたものと思うが、メンバーたちのコメントはそれをより具体的に肉付けしてくれたようで、このコンサートを迎えたキューバの人たちの心情に、映画を通して観る者がより共感しやすい態勢が出来上がったのだと思う。それで心と頭の準備も万端。さっそく、チャーリーも魅了されたというちょっと古風なハバナの街並みを映すシーンから映画『ハバナ・ムーン』はスタートした。
新しいサポート・メンバーを加えて2月から1か月以上にわたるラテン・アメリカ・ツアーで9都市を回ってきたストーンズの演奏は好調。福岡の映画館では、低音をちょっと抑え気味かな?と思われるようなサウンド・メイキングではあったが、大画面で観る、コンサート広さを意識した大胆なカメラ・ワークはやはり非常に魅力的だった。それでも、スピーカー用のPAタワーが何本建てられていたのか?とか、会場内にヴィデオ・スクリーンがいくつ用意されていたのか?といった細かい点までの把握は難しい。それくらいの広大な敷地に、ストーンズ側の発表では120万人のファンを集めてコンサートが行なわれているのに改めて驚かされる。そんな空前のスケールをカッコ良く捉えていたカットのひとつが、名前のアナウンスが響きわたっている陰で、ステージ上のドラムスの裏側にしつらえられた簡易なドレッシング・ルームみたいなスペースで120万人の観客を背にカメラ目線でミックがニヤリと微笑むシーン。そしてステージに飛び出してきたキースは美しいブルーのテレキャスターを抱えている。このギターが、照明の当たり具合によってブルーに見えたりグリーンに見えたり刻々とその「表情」を変えていく様子までも大スクリーンで味わうことができる幸せ!
メンバーどうし、特にミックとキースの関係の良好ぶりがその表情から読み取れるのも印象的だった。それは多くの方々の心にも残ったようで、上映後にインターネット上に書き込まれた感想にもそこに触れたものが多かった。しかしそれ以上にこの映画を特徴づけているのは、長く聴くことさえ禁止されていたストーンズを生で体験するキューバ人オーディエンスの何とも幸せそうな表情で、通常のライヴ映像作品以上の割合でそこに迫っていくカメラに日本のファンの皆さんたちは見事に反応、そこを感動ポイントとしている方がすごく多いのに感銘を受けた。そんな「在キューバのロック・ファン」、それも特に年輩層の人たちが長く置かれてきた厳しい状況については、ストーンズ・ファンだった故チェ・ゲバラの甥っ子さんの極めて具体的な証言なども紹介しながら詳しく触れたDVD/BDの拙文(約3万6,000文字)にもご期待いただければ幸いだ。
一方、通販のみのスーパー・プレミアム・ボックスのみに同梱される映画『オレ!オレ!オレ! ア・トリップ・アクロス・ラテン・アメリカ』も期待以上の出来ばえ。単なるツアー記録に留まってはおらず、ストーンズのメンバーたちがそれぞれの国のファンやアーティストたちとの交流も行ない、自分たちがラテン・アメリカをツアーする意味について思索しながら「旅」を続ける様子が捉えられているのだ。そこに、ツアー開始時点では実現するかどうかハッキリしていなかったキューバ公演の実現に向けてスタッフたちが議論し、悩みながらプロジェクトを進めていく様子が重ねられ(そういう意味では,『シン・ゴジラ』で話題になった会議映画としての側面もある)、キューバも含むラテン・アメリカという地域で自由を獲得するための「抵抗運動」のシンボルとしてのロックンロールとそれを届けるストーンズという大きな構図が描き出されていく。さらにそこに、未知の場所だったり慣れない街(逆から言うと自分たちが知られていない街)だったりする場所で自由を取り戻し、知らなかった人と交流することでいい刺激を受けることができる、というメンバーたちが、幼少期やバンドを始めた頃の想い出に触れながら次第に自己の内面を語り出すシーンが加えられていく、という三重構造になっている点が秀逸だ。『ハバナ・ムーン』の中で、アンコールの前のシーンにメンバーがお互いを称賛し合うような語りが挿入されるのにはやや唐突な感じも受けたが、あの部分はこの『オレ!オレ!オレ!』とつながっていたのだ!
文:寺田正典
Photos by GettyImages
ザ・ローリング・ストーンズ『ハバナ・ムーン ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』
※日本語字幕付き/日本語解説書封入
【500セット通販限定スーパー・プレミアムBlu-rayボックス】 ¥28,000+税
【500セット通販限定スーパー・プレミアムDVDボックス】¥28,000+税
・キューバ・ライヴ『ハバナ・ムーン』Blu-ray or DVD
・未公開ドキュメンタリー映画『オレ!オレ!オレ! ア・トリップ・アクロス・ラテン・アメリカ』Blu-ray or DVD
・キューバ・ライヴ『ハバナ・ムーン』2枚組CD
・キューバ・ライヴ『ハバナ・ムーン』3枚組LP
・直輸入写真集
【完全生産限定DVD+2CD+Tシャツ】 ¥13,000+税
【完全生産限定Blu-ray+2CD+Tシャツ】 ¥13,000+税
【初回限定盤DVD+2CD】¥8,500+税
【初回限定盤Blu-ray+2CD】 ¥8,500+税
【通常盤DVD】¥6,500+税
【通常盤Blu-ray】 ¥6,500+税
【『ハバナ・ムーン』Blu-ray/DVD収録予定内容】
01.「イッツ・アバウト・タイム」
02.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
03.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
04.アウト・オブ・コントロール
05.悲しみのアンジー
06.黒くぬれ
07.ホンキー・トンク・ウィメン
08.バンド・イントロダクション
09.ユー・ガット・ザ・シルヴァー
10.ミッドナイト・ランブラー
11.ギミー・シェルター
12.悪魔を憐れむ歌
13.ブラウン・シュガー
14.「スティル・ゲッティング・ベター」
15.無情の世界
16.サティスファクション
《ボーナス映像》
01.ダイスをころがせ
02.オール・ダウン・ザ・ライン
03.ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ ラン
04.ミス・ユー
05.スタート・ミー・アップ
【『ハバナ・ムーン』Blu-ray仕様予定】
収録時間:本編約110分 ボーナス映像約28分
画面サイズ:16:9
音声:リニアPCMステレオ/DTS HDマスターオーディオ
【『ハバナ・ムーン』DVD仕様予定】
収録時間:本編約110分 ボーナス映像約28分
画面サイズ:16:9
音声:ドルビー・デジタル ステレオ/ドルビー・デジタル 5.1chサラウンド/DTSサラウンド・サウンド
【『オレ!オレ!オレ!』Blu-ray仕様予定】
収録時間:約100分
画面サイズ:16:9
音声:リニアPCMステレオ/DTS HDマスターオーディオ
【『オレ!オレ!オレ!』DVD仕様予定】
収録時間:約100分
画面サイズ:16:9
音声:ドルビー・デジタル ステレオ/ドルビー・デジタル 5.1chサラウンド/DTSサラウンド・サウンド
【『ハバナ・ムーン』2枚組CD収録予定曲】
[DISC1]
01.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
02.イッツ・オンリー・ロックン・ロール
03.ダイスをころがせ
04.アウト・オブ・コントロール
05.オール・ダウン・ザ・ライン
06.悲しみのアンジー
07.黒くぬれ
08.ホンキー・トンク・ウィメン
09.ユー・ガット・ザ・シルヴァー
10.ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ ラン
11.ミッドナイト・ランブラー
[DISC2]
01.ミス・ユー
02.ギミー・シェルター
03.スタート・ミー・アップ
04.悪魔を憐れむ歌
05.ブラウン・シュガー
06.無情の世界
07.サティスファクション
【ミュージシャン】
ミック・ジャガー(ヴォーカル)
キース・リチャーズ(ギター)
チャーリー・ワッツ(ドラムス)
ロニー・ウッド(ギター)
【サポート・ミュージシャン】
ダリル・ジョーンズ(ベース)
チャック・ラヴェール(キーボード)
カール・デンソン(サックス)
ティム・リーズ(サックス)
マット・クリフォード(キーボード)
バナード・ファウラー(バッキング・ヴォーカル)
サシャ・アレン(バッキング・ヴォーカル)
◆ザ・ローリング・ストーンズ『ハバナ・ムーン ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』オフィシャルページ
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