【インタビュー】秀吉、アルバム『ロックンロール』は「覚悟の作品」
■ 自主になってからは、「とにかくやらなきゃ」という気持ち。
■ 今までだったら、編集部に電話するなんて絶対できない人でしたから
── 歌詞も言い切ってるものが多いですね。
柿澤:確かにそうですね。でも、歌詞に関してもそこまで意識はしてなかったです。むしろ、ラストラム時代の後半のほうが、「もっと言っちゃいなよ」ってアドバイスされて、「今でも結構言ってるつもりなんだけどな」って葛藤があったくらいで。当時は尖ろうって意識してたと思います。でも、自主になってからは自然と……全部が自分発信になったからなのかな。
── 誰に何を言われる筋合いもないから、解き放たれて表現が鋭くなったんでしょうか。
柿澤:どうなんだろう……たぶん、自由にやるぞ!っていうより、自由にやるしかないっていう感じかもしれないです(笑)。
── 何よりも音楽の中で言いたいことを言って、自分達の姿を鳴らしていかないと、他の誰かが上手に宣伝してくれるわけでもないですもんね。
柿澤:そうですね。特に「明日はない」は、自分でオシリを叩く意味もあるんですよね。今までの自分の性格的には「明日でいっかな」っていう感じで、あとで「あの時あれ出来なかったな……」って後悔することがよくあって。それって凄く無駄だなって思ってたんです。自主になってからはそういう無駄なことは極力なくしたいというか、思いついたすべてのことをやってみる。ダメならダメでいいし。そういう「とにかくやらなきゃ」っていう気持ちの表れなのかもしれないです。だって今までだったら、編集部に自分から(アルバムのプロモーションのために)電話するなんて絶対できない人でしたから。
── はい、正直びっくりしました(笑)。アーティストによっては、初対面でもヨロシク!って手差し出してくださるような威勢のいい方もいるけど、秀吉さんは真逆のタイプですからね。前にインタビューさせていただいた時も、ふたりでひっそりと少しずつ話していく感じでしたよね(笑)。だいぶイメージ変わりました。
秀吉:たぶん、変わったんだと思います。こないだSUPER BEAVERとG-FREAK FACTORYの鴨居さんのあいだで、“俺ら(秀吉のこと)は第一印象が怖かった”っていう話になったくらい、前は口数が少なかったみたいです(笑)。まぁ今は、やるしかないですからね。ビビりながらですけど(笑)。でも、こうして自分達で全部やってみると、音楽が人に届くまでには本当にいろんな人が関わってるっていうことがわかったんですよね。そういう意味でも、12年経ってやっとここからスタートっていう実感があるんです。
── 充実していますね。今回のアルバムでは、たとえば「叫び」の<優しい歌が今日もうるさいな>とか、本音をストレートに吐露している表現が印象に残ります。
柿澤:その曲に関しては、全部否定しちゃってますもんね。優しい歌も、明るい歌も、悲しい歌も。
── アルバム通して、結構否定的ですよね?
柿澤:確かに(笑)。それは普通に性格から来てるものですね。
── 序盤で否定してるけど大サビで希望が見えてくるのかなと思いきや、最後まで否定し続けて、むしろ最後にはっきり否定するという(笑)。
柿澤:ダメ押しで(笑)。曲に無理やり希望を持ってくるのは苦手というか、それこそ取ってつけた感じになっちゃうから。このバンドを始めたばかりの頃はそういう曲が多かったんですけどね。バンプみたいに、肯定してくれるような曲書けたらいいなと思ってたんですけど、でも自分がやるとなぜか上手く行かなくて。なんでだろう?って考えてたら、自分が否定的な人間だったっていう。だったらもう振り切っちゃったほうが自分らしい曲が生まれる気がして。
── “否定的な人間”っていうのは、ネガティブ思考っていうことですか? それとも、社会とかに対して「違うんだよな」って感じることが多いのか。
柿澤:社会に対しての考え方は年を経て変わってきていますね。ハタチくらいの頃は世の中で何が起こっていても関係ないと思ってたのが、最近はたまにメンバーと移動の車の中とか楽屋で政治の話してますからね(笑)。でも昔から変わらないのは、僕、基本的にJポップのいわゆる”良い歌”を聴いてると、すぐ否定に変換しちゃうところがあって。「かなわないゆめ」(『テルハノイバラ』収録)はまさにそうで、“君の夢は絶対叶うよ〜”みたいな歌を聴いて、“なんで!? オレのことわかんないでしょ?”って感じたことがきっかけだったんですよね。こじらせてんなぁと思うんですけど(笑)。そういう歌を欲してる人は聴けばいいと思うんですけど、自分はそうじゃなくて、そうじゃない人がいることにも気づいて欲しくて書いています。
── 歌で意見している感覚なんでしょうね。
柿澤:そうですね。だから思考的には、ネガティブっちゃネガティブなんですけど、そこから音楽が生まれたり、自分の主張が生まれたりするので自分的にはそんなにネガティブに捉えてないんです。僕の場合、歌詞に関しては日本のフォークの影響が強いのかなと思っていて。(吉田)拓郎とか、(井上)陽水とか。それと、昔からよく言ってるんですけど自分にとって神様みたいな存在が早川義夫さんなんです。8年位前に、前橋のちっちゃいライブバーで、佐久間(正英)さんがギター弾いておふたりでライブをやられてるのを見に行って、泣くのはこらえたんですけどね。大人なので(笑)。でもそれくらい震えるものがあって。思ったことを全部さらけ出すあの人の歌が本当に好きで、自分はそんなに出せてるかわからないけど、あのくらい自分自身をそのまま音楽にしてしまう人になりたいなと強く思いますね。あと僕はこの風貌から程遠いと思うんですけど、ヴィジュアル系の曲の歌詞はすごく読みます(笑)。ディル・アン・グレイとか、凄く刺さるんですよ。好きすぎて知らない人に広めまくってますもん(笑)。でもどんなジャンルでも、言いたいことの本質ってそんなに変わらないと思ってるんですよね。
── 柿澤さんの歌詞とも変わらない?
柿澤:はい。それは、いろんなアーティストに言えることだと思うんですけどね。たとえば孤独感とか。自分が歌詞を書く時って、だいたい自分の頭のなかには”孤独”があるんです。極端かもしれないけどディル・アン・グレイの歌詞にも感じるし、陽水にもeastern youthにも宇多田ヒカルにも感じるものだなと思ってます。勝手に(笑)。
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