【インタビュー】秀吉、アルバム『ロックンロール』は「覚悟の作品」

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■ G-FREAK(FACTORY)なんて40歳過ぎなのに「一番今が売れてる」って本人が言ってて(笑)
■ 俺らはまだまだだな、これからだなって。だから今、死に物狂いで頑張りたいんです

▲『ロックンロール』ジャケット

── 振り切ってるという意味では、6曲目の「ヌル」は他の曲とは毛色が違ってかなりブラックミュージックの曲調ですね。素朴な質問なんですけど、このタイトルはどこから来ているんですか?

柿澤:“null”からです。コンピューターのプログラミング言語で“ここには何もありません”っていう、ドイツ語でゼロを意味するんですけど。でも誤算だったのが、群馬のゆるキャラに“なめじろう”っていうのがいるんですけど、それの口癖が“ヌル”で(笑)。LACCOのイベントにも出ててるし秀吉のお客さんにもファンが多いから、アルバムのリリース発表の時に「え、なめじろうの歌?」っていう反応がかなりあって。これはマズイなと思いました。

── この場で訂正できてよかった(笑)。この曲は、ダブ〜レゲエという曲調ですが、でもこれまでの秀吉の楽曲には意外とこういう雰囲気のものもありますよね。

柿澤:そうなんですよ。レゲエとかダブ風なアレンジは何曲かあるんですけど、でもここまでブラックなノリを出せたのは今だからかなと。神保くんは自分がボーカルのバンドもやってるんですけど、そっちのバンドがブラック寄りなんで、その感じも出てるのかもしれないですね。

──言ってしまうと、以前は秀吉さんのワンマンなバンドだったと思うんですけど、でも今日お話を聞いていたら、三角形のバランスが取れてる気がします。

柿澤:まさしくそうだと思います。だから曲作りも、凄く早くなったしストレスなく進められるようになりましたね。もう新しい曲を作ってるんですよ。クラウドファンディング上の限定楽曲と、「あなたのために曲を作ります」っていうプランのための曲なんですけど、1ヶ月弱くらいでできましたね。

── きっと今、自信があるんでしょうね。前はインタビューをしていても、「言ってる内容が伝わってるのかな?」「みんなにちゃんと曲が伝わってるかな?」って、ちょっと半信半疑な雰囲気があったから。

柿澤:あははは、そうですね(笑)。変な自信は当時からあったんですけど、それを出すのはおこがましいなって思ってたんで。けど、今は自主になったからなのか、「これいいっしょ。だから聴いて!」っていう感覚なんです。誰かに「今日のライブよかったです」って言われた時、「俺もそう思う!」って答えてるんですよ、最近。神保くんにはやめたほうがいいって言われてるんですけど(笑)。

── それは今までのイメージとぜんぜん違う(笑)。

柿澤:「いやぁ……」って謙遜するのがもう面倒くさいっていうか、つまんないじゃないですか。俺もいいと思ってやってるし、「ギターの音よかったっす!」「俺もそう思う!」っていうやりとりのほうが場の空気が明るくなりますからね。

── 確かに(笑)。『ロックンロール』っていうタイトル、このアルバムにピッタリですね。

柿澤:そうですね。このタイトル、覚悟っぽい感じがして。 “『ロックンロール』っていうアルバムを出します”って発表してから、“タイトルにしびれました”っていう声を沢山貰えたんです。秀吉のアルバムタイトルで『ロックンロール』ってなかなかイメージつかないだろうからこそ、覚悟の作品だということが伝わったんじゃないかなって。それに、純粋なジャンルとしてのロックンロールとは違くても、自分達が思うロックンロールにはなったなと思ってるんで。

── ご自分達にとってのロックンロールってどういうイメージですか?

柿澤:なんだろうな……やっぱり、衝動的なものですかね。バンドで音を合わせる楽しさとか、そういう初期衝動感。当たり前ですけど初期衝動って最初のほうにしか得られないものだから刹那的でキラキラしてるものですけど、結成して12年も経った今、あの頃の感覚を取り戻せてるこの環境って割りと稀有なものだと思ってるんです。だから、自分達の中には「もっと売れたい」「なんでわかってくれないんだろう」っていう気持ちももちろんあるけど、今の状況だからこそこういう作品ができたのかなと思うと、なんというか……やってやるよちくしょーという感じです(笑)。『テルハノイバラ』は、あれはあれで、「こっからやるぞ」っていう作品だったんですけど、今回はよりその感覚が強くて。これが俺達にとってのロックンロールだ、っていう気持ちです。

── 秀吉は、等身大の音楽を作るバンドだと改めて思いました。自主っていう状況は予期せぬ事態だったかもしれないですけど、自分達の姿を見事にパッケージした作品のタイトルにふさわしいですよね。環境の変化によって音楽がパワーダウンしちゃう、攻められなくなっちゃうバンドもいると思うんですけど、生きざまを強気に表現しましたね。

柿澤:ありがとうございます。だから、響く人は絶対にもっといるはずだと思うので、まだ触れたことない人にも届くように頑張らなくてはと。ツアーの本数も今までで一番多いんですよ。あとこのあいだ、僕らがデビューする前からの知ってる先輩に、「群馬のみんなは、這いつくばって今がある人ばっかりだから、秀吉も頼むよ!」と言ってもらって。G-FREAKやLACCOっていう、不遇の環境を経てやってる群馬の先輩たちの姿があるから、僕らも頑張れている気がするし。G-FREAKなんて今40歳過ぎなのに、「今までの人生の中で一番今が売れてる」って本人達が言ってて(笑)。そういう姿を見てると、俺らはまだまだだな、これからだなって思うし……だから今、死に物狂いで頑張りたいと思うんです。

  ◆  ◆  ◆

取材・文=堺 涼子(BARKS)


アルバム『ロックンロール』

2016年8月3日発売
SRSB-005 ¥2,315 +税

1. 明日はない
2. 叫び
3. 潮騒
4. 明けない夜
5. ヌル
6. ナイフ
7. はなればなれのそのあとで
8. ロックンロール
9. メリーゴーランド
10. まっくらやみの中で

<秀吉のロックンロールツアー!>

8月20日(土)東京・新代田 FEVER ※ワンマン
8月28日(日)福島・郡山 CLUB #9
9月2日(金)宮城・仙台 enn 2nd
9月3日(土)福島・福島 OUT LINE
9月9日(金)茨城・水戸 LIGHT HOUSE
9月10日(土)栃木・宇都宮 HELLO DOLLY
9月30日(金)大阪・心斎橋 Pangea
10月1日(土)富山・富山 LOG SESSION
10月10日(月・祝)埼玉・熊谷 HEAVEN’S ROCK VJ-1
10月15日(土)山梨・甲府 KAZOO HALL
10月23日(日)北海道・札幌 SPIRITUAL LOUNG
10月29日(土)千葉・稲毛 K's Dream
11月5日(土)滋賀・大津 B-FLAT
11月11日(金)愛知・名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL ※ワンマン
11月13日(日)長野・長野 J
11月20日(日)神奈川・横浜 club Lizard
11月23日(水・祝)新潟・新潟 CLUB RIVERST
11月26日(土)広島・広島 4.14
11月27日(日)福岡・薬院 UTERO
12月4日(日)群馬・高崎 club FLEEZ ※ワンマン

【プロフィール】

柿澤秀吉(Vo, G)、町田龍哉(B)、神保哲也(Dr)からなる群馬で結成された3ピース・ロックバンド。
その異色のバンド名は、Vo&G柿澤秀吉の本名によるもの。群を抜いたメロディセンスと圧倒的なバンドサウンド。優しさと力強さを兼ね備えた歌声、独特な歌詞世界が胸を打つ。
2008年にアルバム『へそのお』でデビュー。これまでに4枚のミニ・アルバムと2枚のフル・アルバムをリリース。2010年には宮崎あおい主演映画『ソラニン』の挿入歌に抜擢され、同年発表された『むだい』のジャケットアートワークを浅野いにおが手がけ話題となる。2012年9月に群馬で初開催された<GUNMA ROCK FESTIVAL 2012>では1万人のオーディエンスを沸かせた。
2014年12月に自主レーベルを発足。待望のアルバム『テルハノイバラ』をリリース。2015年には新曲と過去曲のリメイクを織り交ぜたミニアルバム『アトノオト』をリリースし、全国ツアーを成功させる。
2016年には突如クラウドファンディングで新作の製作を行うことを発表し、結果目標人数252パーセント達成という快挙を成し遂げる。

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