【寺田正典 連載(最終回)】ザ・ローリング・ストーンズ『トータリー・ストリップド』【ロンドン・ブリクストン・アカデミー編】
5月20日に日本先行リリースとなったストーンズの『トータリー・ストリップド』が非常に好評だ。それも嬉しいことに、三カ所でのスモール・ギグのフル映像入りのパッケージを入手して、その貴重なライヴ映像をひとつ一つじっくり楽しんでくださっているファンの方が多いそうで、そんな声をインターネット上でも数多く目にする。
◆ザ・ローリング・ストーンズ画像
今回は、連載ニュースの最後として、その貴重なスモール・ギグの三つ目、南ロンドンはブリクストンでの7月19日のライヴ映像内容を紹介したい。
スモール・ギグと言っても、この日の会場として選ばれたブリクストン・アカデミーの収容人員は約5,000人。そのキャパシティだけで比べれば、現在の東京だと国際フォーラムのホールAと同程度の会場である(実際のブリクストン・アカデミーは立ち見なので、会場の広さとしてはもう少し小さいはずだが)。ちょっと時代を遡り、'71年の「英国フェアウェル」ツアーのハイライトであったロンドンのラウンドハウスの収容人員が4,000人だったことを思い出せば、'70年代前半のストーンズにとっては、むしろこれくらいの観客数の会場が当時のストーンズにとっては主戦場という感覚だったのではないか?などと想像逞しくしながら観るのも楽しい。
スモール・ギグにしては会場が大きな分、ステージ上のスペースは、アムステルダムのパラディソやパリのオリンピアよりも広く、ステージ両脇には短いながらランウェイも設置されているため、画面を通して観ているだけなら、この時期の『ヴードゥー・ラウンジ』ツアーでのスタジアム・コンサートとほぼ変わらないスケールの大きなステージングが観られる瞬間がそこかしこにあったりもする。
三つのフル・ライヴ映像のうちこのブリクストンだけは緊張感あるバック・ステージ・シーンから始まり、オープニング・ナンバーはオランピアと同じ「ホンキー・トンク・ウィメン」。各種のバルーンが出てくるというようなギミック的な演出はなく、照明もやや控え目ではあるが、その分スタジアムの時と比べるとシブ目の色調の映像、つまり’70年代の雰囲気を思い起こさせるようなの「空間」の中でスタジアム級のパフォーマンスを繰り広げるストーンズが目一杯楽しめる、というわけだ。
「ファー・アウェイ・アイズ」のようなアコースティックを生かしたカントリー・ナンバーをしっとりと聴かせる、というような『ストリップド』プロジェクトならではのスモール・ギグでありながら、「アイ・ゴー・ワイルド」のような3本のエレキ・ギターがラウドにうなるハードなドライヴィング・ナンバーもバッチリとハマってしまう。そんないいとこ取りの作品となっているのが、このブリクストンのフル・ライヴ映像なのである。これまで映像作品がリリースされていなかった同年の『ヴードゥー・ラウンジ』ヨーロッパ・ツアーのストーンズの映像作品としても充分通用する仕上がりである。
文:寺田正典
Photo by Ilpo Musto
◆『トータリー・ストリップド』オフィシャルサイト
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