【インタビュー】デス・エンジェル「何度も聴いてやり直して、完璧にしている」
アメリカ西海岸ベイエリアを拠点とするスラッシュ・メタル・バンド、デス・エンジェルが通算では8枚目となるスタジオ・アルバム『ジ・イーヴル・ディヴァイド』が5月27日に発売になる。アグレッシヴな中にも曲によっては洗練と叙情を横溢させた彼ら独特の作曲スタイルはここにきてますます冴え渡っている。バンドのメイン・ソングライターであるロブ・キャブスタニー(G)が4月中旬に取材に応じてくれた。
◆デス・エンジェル画像
――あなた方が『THE ULTRA VIOLENCE』でデビューしたのは1987年、もう29年前のことです。
ロブ・キャブスタニー:そのとおり。
――バンドの歴史には紆余曲折あり、途中、DEATH ANGELとしてはブランクがありました。解散していた時期があったからこそ今のバンドがあるとも言えますか? ずっと続けていたら、どうなっていたと思いますか?
ロブ・キャブスタニー:まさにあの時期があってこその今のバンドだ。まあ、その当時はわかりようもなかったが。とにかく、あの時はもう最悪の状態にあった。バンドはバラバラになっていたし、何もかも、これまで作り上げてきたものが崩壊していて…。総てはあのツアー中の酷いバス事故から始まった。それが終わりの始まりとなった。ちょうどサード・アルバム『ACT III』をレコーディングしていた1990年頃で、それまでの約8年は曲を書いてレコーディングしてツアーしてと、ノンストップで音楽に取り組み続けていた。それもまだわずか20歳であれこれ色々なことを経験していたわけだ。それまで楽しみながら音楽をプレイしていたけど、ビジネスのあれやこれやが絡んでくると…。マネージメントやレコード・レーベルとの問題が生じ始め、訴訟問題も抱えたり…。弁護士やら代理人やらを雇って色々な話し合いが行なわれ…当時は全くハッピーではなかった。まだ凄く若かったこともあって、状況を理解できず、凄く混乱し始めていた。俺達はただ単にロックしたいだけ、へヴィ・メタルをプレイしただけなのに、物事どうしてこんなにも複雑で面倒で大変なことになってしまったのかってね。ビジネス面やら数々の問題で俺達は楽しめていなかった。そんな最中にさっき言ったバス事故に遭ってしまった。その時点で「もうウンザリだ。限界だ」と思ったんだ。俺達は音楽をプレイし続けたいだけだったのに、それだけでは済まなくなっていた。あまりにも色々なことが起こり、あまりにも多くのことが音楽で楽しみたいという思いの妨げになっていた。それに家族や友達と疎外になり始めていた。だから互いから距離を取り、デス・エンジェル絡みのあれこれから離れなければならなかった。悲しいことではあったが、あの当時はそうせざるを得なかった。他に選択肢はなかったね。
だから、そう、こうして今振り返ってみると、そうする以外に術がなかったことがよく理解できる。あの状態のままで続けることなど俺達にはできなかった。絶対にもたなかったよ。でも、あれだけの歳月を経て、その間にそれぞれがスラッシュ・メタルだけではなく色々なタイプの音楽やプロジェクトと関わってきたおかげで今がある。俺達はスラッシュ・メタルだけでなく、ありとあらゆるタイプの音楽が大好きだからね。他のスタイルを探求し創造する機会にも恵まれ、ずっとやってきた1つのサウンドやスタイル以外のものも追求することができた。だから、離れていた時間や他の色々なスタイルで表現する機会に恵まれたおかげで、それまで以上に強く、お互いの良さがわかり認め合えるようになった。このバンドの良さがより一層理解できるようになった。その後また一緒にやるようになってから、デス・エンジェルとしてプレイするのが再び凄く新鮮でエキサイティングになったよ。2000年か2001年に再結成したから、あれから約15年経っている。ということは、解散する前以上に長くやっていることになる。だから、うん、長い道のりだった。1つだけ悔やんでいることと言ったら、あのバス事故だ。あの事故、それで怪我したりしたこと、あれだけは起こって欲しくなかった。もう人生の中で最悪の悪夢だ。それ以外のことは、人生の中でこれまで起こったことは総て、良いことであれ悪いことであれ俺は受け入れている。総ては起こるべくして起こったことだと思っている。
――それでは新作『ジ・イーヴル・ディヴァイド』についてお訊きします。お話にも出ましたが、ダミアン・シソン(B)とウィル・キャロル(Dr)が加わって今の編成になってからは3枚目のアルバムです。ドキュメンタリー映像や実際のライヴを観ても彼らがすっかりバンドに馴染んでいることはわかりますが、アルバム制作においても今の編成で行なうことに心地よさや確信はあるのではないですか?
ロブ・キャブスタニー:ああ、もう最高に心地いい!彼らとやるのは楽だしスムーズだし心から楽しめている。第一に、彼らは素晴らしいミュージシャンだ。彼らは自分達のプレイを理解しているし、プレイに自信を持っているし、彼らのスタイルは最近の俺が書きたいと思っているヘヴィでテクニカルなヴェリー・メタルなタイプに合致している。と同時に、実験的であり、それほど典型的ではないような要素をあちらこちらに組み込むことも躊躇していない。同じような考えを持っている素晴らしいチーム・プレイヤーだ。俺の持っているヴィジョンを一緒に見ようとしながらバックアップし、チームの一員としてやれることをとことんやろうとしている。凄く新鮮な気持で取り組めているよ。
アンディ(ガレオン/元Dr)とデニス(ぺパ/元B)のことは凄く好きだし何より家族だし、彼らの音楽的才能を尊敬している。彼らは素晴らしいミュージシャンだし、これまで一緒にやってきた中で俺達の間の化学反応は最高だ。しかし人は年月の流れと共に成長していくものだし、お互いに異なる成長を遂げ、それぞれが異なる方向へと進み、やがて疎遠になっていく場合もある。それで、俺達は一緒に何かを創造する中で、緊張する場面にも数多く遭遇した。それぞれ自分達のアイディアに近づけるために引っ張り合いをしてしまった。同じ方向を見ずにね。そういう状態は時としてクールだ。クリエイティヴ・テンションとよく言うだろう? お互いの引っ張り合いでマジックのようなものができ上がる場合もある。時として起こる。ただ、そう簡単なことではない。通常は議論や衝突があって、やがては疎遠になったりする。お互いに話さなくなり、気まずい雰囲気になったりもする(笑)。俺達は小さい頃から一緒に育ってきた仲だから、互いを凄く認め合っていた。それぞれの意見を聞きながら、個々のヴィジョンやアイディアを共有していた。当初はそういう関係にあったんだ。そうしないと誰かが気分を害したりする。そういうのは嫌だからさ。そんな雰囲気がしばらく続くとクレイジーになってしまう(笑)。1つの曲に3種類の曲が入っているようなことになりかねない。
でも、ダミアンとウィルは俺達と同じ方向を見ている。彼らが何の主張もないイエスマンだという意味ではないよ。彼らは俺と同じような物事の捉え方をする。彼らはバンド全体でやっているものに適格なパートやアイディアを簡単に生み出せる。つまり今のメンバーでのコラボレーションは、事がより簡単に滑らかに自然に運んでいる。だからだと思うんだが、やっている音楽にまとまりが出てきた。過去のアルバムにはゴチャゴチャとしたものもあったと俺は感じているけど、最近のアルバムにはそれがないと俺は思っている。
――楽曲の基盤となるリフやヴァース、曲の構成はあなたが中心となって行なっているものと思いますが、他のメンバーの貢献は今ではどれくらいあるのでしょうか?
ロブ・キャブスタニー:基本的には、俺が総てを書いている。そしてその方法は、その時々によって物凄く異なる。色々なアイディアを集め、リフを書き、あっちとこっちを繋ぎ合わせたりすることもあれば、何かにインスパイアされた時は腰を下ろし、途中で止めずに一気に1曲書き上げてしまうこともある。そういうのは最高に気持いいね。物凄く楽に自然にできてしまう。でも、いつもそう簡単にできるわけではない。とにかく、ありとあらゆる方法で1曲ができ上がる。
そうやって1曲がある程度まとまったら、通常はウィルとコラボレートし始める。彼が俺達のスタジオに入り、俺とドラムスだけで曲をジャムってみる。そして2人のアイディアをどんどん足していく。色々なビートやアレンジメントを試しながら、よりソリッドな形にまとまったと感じるまで手を加える。そしてそれをドラムスとギターだけでレコーディングする。そして録ったものを俺は家に持ち帰り、聴き返しながらそのアイディアをアレンジしてみる。そして改良されたものを持ってスタジオに戻り、そのセカンド・ヴァージョンを作る場合もある。そしてギターとドラムス入りのしっかりした感じの、完成形により近いデモができ上がった時点で他のメンバーに渡すんだ。そして彼らは自分達のパートを確認しながらアイディアを足していく。この時点でマーク(オセグエダ/Vo)が歌詞をつけたり自分のアイディアを入れたりする。その後、今度はみんなで集まり、他のパートが入ったそれを聴きながら、もっと手を加えたり変えたりしながら、どんどん完璧なものへと近づけていく。そうやって1曲がどんどんどんどん進化していくんだ。レコーディング・スタジオ入りした後にも、もっと進化させてもいいという姿勢で自由に取り組む。ごくたまにだけど、最初の段階からほぼ変わらない状態でレコーディングされる曲もあるけど、大抵は作業の過程でより進化していくね。
とにかく俺は、その曲がベストな状態になるよう常に心をオープンにしながら、いつでも何でもやってやろうという姿勢でやっている。あるパートを捨てることも、あるパートを足すことも、全体を変えることも、1曲を引き裂くことも、その曲にとって必要とあらば何だってやりたいと思っている。ふと思い立ち、1曲を引き裂いて2曲にしてしまうようなことさえある。とにかく、聴いては手を加え、聴いては手を加える作業の連続だ。そして、その聴く時間の方が長いと思う。とにかく、聴くことに時間を割いているね。聴く時間は凄く重要だ。若くて曲作りに対する戦略も方法も何もなかった初期の頃は、そんなことはあまり認識せずに、思いのままに取り組んでいた。ラッキーな場合はそれでも上手くいくけど、でも多くの場合は、「もっと上手くやれたはずだ」と振り返ることになる。あるいはそれすら気づかなかったりする。
でも、今の俺達の作曲の戦略と方式はより明白になっているし、これまでの経験によって無駄な時間をかけずより効率よく自分達のできる限りのベストなヴァージョンを生むことができるようになった。少なくも俺達は、完成させた時点では「ベストだ」と感じているし、実際そうだといいと願っているし、みんなも同じように感じてくれればいいなと思っている。とにかく俺は、何度も聴いて何度もやり直して、完璧なものができ上がるように必死に曲に取り組んでいる。
例えば、俺が歌詞を書く場合もたまにある。このアルバムで言うと、オープニング曲の「The Moth」の歌詞は俺が書いた。曲を聴きながらインスピレーションが湧き、「この歌詞は俺が書きたい」と感じた。自分でデモに歌詞とメロディを入れて、それをマークに渡して聴いてもらい、そこに彼の色を入れてもらった。そうやって曲を往復させながら、2人のアイディアを加え、完璧な1曲になるまでコラボレートする場合もある。
――新作の収録曲のいくつかについてコメントしてください。
ロブ・キャブスタニー:OK。じゃあ、まずはオープニングの「The Moth」だけど、かなり前からこれをオープニング・トラックにすると決めていた。「The Moth」はオープニングとして最強だと感じた。イントロ・リフが「ヘイ! ハロー!」と言っているように聞こえる(笑)。凄くイーヴルで、これぞオープニングという感じのサウンドで、リスナーの心を一瞬のうちに掴んでしまう。そしてその直後、物凄くアグレッシヴでファストなリフへと突入する。俺はファンにまずはこの凄く激しく爆発的なものを感じて欲しいと思った。最初の曲は爆発的なものでなければならない。爆発的であり、キャッチーであり、聴き終えた時に、「次にどんなものが来るんだろう?」と期待させてくれるような曲でなければならない。アペタイザーみたいなものだ。強烈なアペタイザーさ。
――「The Electric Cell」は非常にプログレッシヴな構成です。あなた方がラッシュを大好きなのは知っていますが、デス・エンジェルというフィルターを通したプログレッシヴ・スラッシュ・メタルという感じかもしれません。
ロブ・キャブスタニー:まさにそのとおり(笑)。そういう感じと、それから他の人から「デス・メタルを彷彿とさせるパートが含まれている」とも言われた。俺は個人的にはデス・メタルやそういうスタイルのものはあまり聴かないんだが、実際にはツアーに出ればみんながプレイしているのをしょっちゅう耳にしているわけだから(笑)、いつの間に俺の脳の中に入り込んでいると思う。あと、最近では個人的にカーカスを聴いたりもしているし。だからその辺りの音楽+ラッシュのようなプログレッシヴな面、そして凄くスラッシーなヴァースがミックスされていると思う。それにテロリズムについての強烈なメッセージ入りの歌詞もあるよ。非常にパワフルな曲だ。
後編では好きなギタリストや日本でのライヴについてお届けする。
取材・文:奥野高久/BURRN!
Photos by Stephanie Cabral
【メンバー】
マーク・オセグエダ(ヴォーカル)
ロブ・キャヴェスタニィ(ギター)
テッド・アギュラー(ギター)
ウィル・キャロル(ドラムス)
デミアン・シッソン(ベース)
デス・エンジェル『ジ・イーヴル・ディヴァイド』
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1.ザ・モス
2.コーズ・フォー・アラーム
3.ロスト
4.ファーザー・オブ・ライズ
5.ヘル・トゥ・ペイ
6.イット・キャント・ビー・ディス
7.ヘイトレッド・ユナイテッド、ユナイテッド・ヘイト
8.ブレイクアウェイ
9.ジ・エレクトリック・セル
10.レット・ザ・ピーシズ・フォール
11.ウェイストランド※ボーナストラック
【ボーナスDVD収録予定内容】*日本語字幕付き『ホワット・ウィ・ドゥ』メイキング映像
◆デス・エンジェル『ジ・イーヴル・ディヴァイド』
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