いい音爆音アワー vol.57 「とことん大瀧詠一特集」
いい音爆音アワー vol.57 「とことん大瀧詠一特集」
2015年8月12日(水)@風知空知
2013年12月30日に65歳で亡くなった大瀧詠一さん、結局、1984年の『EACH TIME』以降30年間、まとまった新作を出すことは遂になく、最後に聞いた消息は、「日本映画をすべて観て、DB化する作業をしている、しかしそれを発表する予定は全くない」というものでした(笑)。優れた歌手であり、稀代のメロディ・メーカーでもありましたが、過去の欧米ポップスのメロディの一部をほぼ拝借することもあるその作り方にとやかく言う人もいます。しかし、「知らないで」似てしまうことこそが、彼にとってはもっとも忌むべきことでした。過去のポップス遺産を徹底的に研究しつくした上で、自分のオリジナリティをプラスしてより進化した音楽を作る、つまり、よいメロディを借りて、それをよりよくするのは遺産に対する正しい姿勢だと確信していたのです。
『A LONG VACATION』と『EACH TIME』で彼は、それまで目指してきたことはやり切ったのでしょう。以降30年間、音楽の分野では新たにやりたいことが出てこなかった。もし、もう10年生きていたら出てきたかもしれませんし、それをぜひ聴いてみたいとは思いますが。
福岡智彦 (いい音研究所)