ヤマハ、20世紀のピアノの巨匠リヒテルの演奏を「人工知能演奏システム」で再現
▲スヴァトスラフ・リヒテル
ヤマハは、20世紀のピアノ巨匠、スヴァトスラフ・リヒテルの往年の演奏を「人工知能演奏システム」により忠実に再現、世界的名演奏家集団であるベルリンフィル・シャルーンアンサンブルとの共演によりその演奏を披露することに挑戦する。
演奏が披露されるのは、東京芸術大学奏楽堂(東京都台東区)で5月19日に開催される演奏会「音舞の調べ~超越する時間と空間~」。ヤマハはこの演奏会に技術強力を行う。演奏の再現に用いられるのは、ヤマハが開発中の「人工知能演奏システム」だ。
▲人工知能演奏システムの概要
今回の取り組みでは、リヒテルの生前のライブ演奏の録音から、ヤマハが忠実にその演奏表現をデータ化した専用の音源を使用。音源の再生にはヤマハの自動演奏機能搭載アコースティックピアノ「Disklavier」(ディスクラビア)が使われる。これはリヒテルが円熟期に愛用したヤマハピアノ「CF」の後継機種となるコンサートグランド「CFX」に自動演奏機能をもたせたもので、世界最高クラスの再生精度を誇る。
ヤマハの「演奏性追従技術」にも注目。アンサンブルの共演者である人間が演奏する「音」と「ジェスチャー」を逐次理解し、次の瞬間の演奏を予測することで、人間と協調した自動演奏を行う。
これらを組み合わせた「人工知能演奏システム」により、ベルリンフィル・シャルーンアンサンブルの演奏に合わせてピアノの自動演奏を制御し、人間と機械による息の合ったアンサンブルを披露する。
ヤマハは昨年より、文部科学省と科学技術振興機構の事業「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)の拠点の一つである「東京藝術大学COI拠点」に参画しており、今回の協力はその活動の一環として行われる。ヤマハのピアノを愛用したリヒテルの演奏を現代に蘇らせ、現代の演奏家との共演に挑戦する今回の試みは、未来の演奏会のあり方そのものにも影響を与えるほどの極めて大きな意味を持つとしている。
<スヴァトスラフ・リヒテル>
1915年ウクライナに生まれ、1997年に没した20世紀最大のピアニスト。独学でピアノを始め、19歳の時にショパンのプログラムでリサイタルを開き成功を収めた。その後、モスクワ音楽院でネイガウスに学ぶ。プロコフィエフと親交を深め、ピアノソナタ第7番を初演。1945年には、全ソビエト音楽コンクールで第1位に輝き脚光をあびる。その後、西欧で活躍し20世紀を代表するヴィルトゥーゾとして世界で活躍。日本には1970年以来度々来日し、多くの音楽ファンを魅了した。なお、1969年に出会って以来、彼はヤマハピアノを愛用し続けた。
<ベルリンフィル・シャルーンアンサンブル>
1983年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の団員によって結成されたシャルーンアンサンブルは、ドイツの主要な室内楽団の一つである。バロック、古典派、ロマン派の室内楽から現代の作品まで幅広いレパートリーとともに、四半世紀以上の長きにわたりヨーロッパを始め、世界各国の人々に大きな感動をもたらしている。革新的なプログラム編成、洗練された音色と活気あふれる演奏で高い評価を得ている。
「音舞の調べ~超越する時間と空間~」概要」
会場:東京藝術大学奏楽堂(大学構内)
主催:東京藝術大学、東京藝術大学COI拠点
入場料:5,000円(全席指定・税込み) ※就学前のお子様の同伴・入場はできません。
曲目:
L.v.ベートーヴェン 《七重奏曲》変ホ長調 作品20より 第1、3、5、6楽章
A.ドヴォルジャーク 《チェコ組曲》ニ長調 作品39
F.シューベルト ピアノ五重奏曲《鱒》イ長調 D667より 第4、5楽章] ※技術協力対象
松下 功 《音舞の調べ》(2016) ~ 時、人、空を繋ぐ「間」 ~
出演:
ベルリンフィル・シャルーンアンサンブル
コシノ ジュンコ(デザイナー) ※プレトークおよびショーに出演
松下 功(作曲家・東京藝術大学副学長)
田邑 元一(ヤマハ(株)研究開発統括部 第1研究開発部長)※プレトークに出演
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