【ライブレポート】SKY-HI、初のホールツアーが終了。「せっかくだから、最後まで最高に生きてやろうぜ、なあ!」
「東京、ありがとうございました。最終的にはその一言に尽きるね。いろいろ言いたいことはあったんだが、その720個くらいある感情をグッと一個にまとめたら、ありがとうって言葉で集約できるな。そう思います。」
ここまでを終えて、ステージ中央に用意された椅子に座り、観客にも座るよう促して、SKY-HIは語り始める。今回のホールツアーを計画するタイミングで、ツアーではなく日本武道館公演を演ろうかという話があったこと。そしてその話を断ったこと。
「ゴールになっちゃうなあ、と思ったんだね。(中略)ビッグマウスだと捉えてくれても構わない。10年後から見た時に、その日本武道館公演があくまでも通過点であるものに見えるためのものでなければ演る意味がない、と思ったから。俺が俺であるために、俺に会いに来てくれた君たちに最高のエネルギーなのか幸せなのか、言葉は何でもいいんだが、そういうものを手渡すために、今回はホールツアーを回ろう、全国7カ所で。そうやって俺と石川さんは決めたんだ。」
思い出されるのは、2013年3月の<The 1st FLIGHT>ツアー東京公演。もし失敗したら引退も覚悟していたというこのツアーで、SKY-HIは、「えー、2年……だな。2年くれ。2015年にさ、日本武道館でやろうよ。SKY-HIのライブを。」と、発言した。その約束からは若干の遅れが生じてしまったかもしれないが、それでもSKY-HIは、当時“夢物語”と表現していた日本武道館公演が、手を伸ばせば届くところまできていた。
しかしSKY-HIはホールツアーを選んだ。未来を見据え、そしてひとりひとりの君に向き合うため。
そして、SKY-HIは来年、2017年に今回のツアーよりも規模の大きなツアーをやると宣言。その前にやり残したこととして、今年の夏から冬にかけて、ライブハウスツアーを行ない、2015年に行けなかった秋田や青森などを含めた全国各地を細かく回ることを発表する。喜びの声が会場を包む中で、曲も大量に作ったことを明かし、いずれそれも世間に出していくであろうことを予告。“チャートなき時代”だけれども、だからこそ一人でも多くの人に自分の音楽を届けるために、上を目指すために、数字には絶対にこだわると力強く主張した。
「だけども、一個だけ忘れないでくれ。俺は上を上を目指すんだが、知っている。その、たとえば100は、たとえば何千は、何万は、すべて1の積み重ねでしかないことを俺は知っている。だから、すべての君にとても感謝しているし、これからもその関係を続けていければなあと思う。長くなってしまった、申し訳ない。だから座ってもらったんだ。立っていてくれた奴、ほんとごめんな。帰ったら……乳酸を飛ばせ。」
近年の研究結果から、どうやら乳酸と疲労は関連がないようではあるが、そんな話はともかく、SKY-HIは新曲へとつながっていく思いの丈をぶちまける。
「別れってさ、なんで寂しいもの、悲しいものになってんのかな。寂しいし、悲しいんだよ。だけれども……だからこそ、かな。それを愛してあげる歌を作りたいなって思ったんだ。だから、今から聴いてもらう「クロノグラフ」は、別れを愛する歌、そういうのになってます。……あと何分かでこのライブは終わるんだが、俺は知っている。このライブが終わったあと、次のライブハウスツアーだ、その後のツアーだ、そういうところでまた会える人もいれば、もうこれが最後になってしまう人も、必ずこの中にはいる。だから俺は、毎回、これが人生で最後のライブのつもりでステージに上ろうと、どの公演も思っているが、実際にやっぱりそうなってしまう人が絶対にいるからであって、それは止めようがない。だから、これが最後の、これが最後のさようならになっちゃう人が、きっとこの中にいるんだな。それは悲しいよ。だけどさ、それを悲しいから「悲しいね」って言ってるわけにはいかないじゃない? 「SKY-HIのライブに行ったな、あの時。その最後の別れはいい別れだったな」っていうものに、絶対にしたいじゃない? そういうものを手渡して、バイバイって言いたかったから、そういう曲を作ったんです。」
そして数多く作った楽曲の中から、5月11日にリリースが決定している6枚目のシングル「クロノグラフ」を歌い上げる。これが最後の別れになってしまう人に向けて、最後のSKY-HIのライブがいいものだったと言ってもらえるように。
ツアーの最後を飾ったのは、「カミツレベルベット」。そして客席に笑顔の花を咲かせたSKY-HIは、このツアーで封印を解いた最後の“指示”を客席に投げかけたのだった ── 「絶対生きてろよ!」と。
text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)
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