【ライブレポート】SKY-HI a.k.a.日高光啓(from AAA)、「2年くれ。2015年にさ、日本武道館でやろうよ。SKY-HIのライブを。」
SKY-HI a.k.a.日高光啓(from AAA)初のソロワンマンツアーが、2月27日のZepp DiverCity (Tokyo)でファイナルを迎えた。
開演直前、ツアータイトルの<THE 1st FLIGHT>にちなんで、客室添乗員を模した影アナウンスが流れる。そしてこのアナウンス、最後には「以上、SKY-HIの実の母親、日高ゆきこがお送りしました。」と、なんとSKY-HIの母親が喋っていたという予想の斜め上を行く展開を見せて、いよいよツアーファイナルはスタートする。
1曲目は、いきなり未発表楽曲「Independence」。SKY-HIは、ソロアーティストとしての意気込みを高らかに宣言した後、2012年、自身が主宰したコンピ盤『FLOATIN' LAB』に収録された楽曲や他アーティストに客演した楽曲などを次々と披露して、会場をヒートアップさせていく。
また、中盤にはバックダンサーも登場。SKY-HI自身も踊りながらラップするという、AAAで培った技術をSKY-HIに落としこんで、彼ならではのスタイルで客席を魅了する。さらに「これから通常のHIP HOPのライブでは見られないような光景が繰り広げられるけど……」と、口にすれば、以前、BARKSのインタビューで匂わせていた“他には真似できないSKY-HIのエンターテインメント”が幕を開ける。
次の瞬間、我々が目にしたのは、リトル・リチャードの「ガール・キャント・ヘルプ・イット(女はそれを我慢できない)」に合わせてのコミカルなステージ。さらに、「A Girl In The Brouser」では、ピアノの弾き語りでラップを披露(ピアノの鍵盤を一音叩くだけで声を上げる、ノリのいいフロアとともに)。そして「言わないよ絶対」と名付けられたパフォーマンスでは、槇原敬之の「もう恋なんてしない」のフレーズをモチーフに、「2012年6月のSKY-HIの初ワンマンにAAAのメンバーも来場してくれたものの、メンバーのうちふたりくらい(同日行なわれていた)BIGBANGのライブに行っていた」とか、「我が党のマニュフェストで必ずやこの国を良い方向に導く……」といった、“言えないよ絶対”なことを、時にラッパーらしく強烈なアイロニーとともに投げかけて、オーディエンスを笑いへと誘う。また、イトーヨーカドーWEBチラシのTVCMで話題となった“いってみヨーカドー”高速ラップも「もう一回いっとく?」と、3回連続で披露すれば、会場中が驚愕。
ちなみにリトル・リチャードの音源を使ったパフォーマンスについて、SKY-HIは「1950年代の、このリトル・リチャードみたいな人のおかげで、(地球上に)音楽でスターになるという夢が生まれた。」と話し、「1st FLIGHTはこれが最終公演だけど、終わりじゃない、始まりでもない、始まりの「は」の字くらいなもの。ここからグイグイ成り上がっていくぜ、っていう意思表示」の一環としてのセレクト、そのためのコーナーであったことをネタばらし。
一方で、笑いと驚きを与えた直後のMCで彼は、過去に抱いていたAAAとSKY-HIという二足のわらじを履くことの苦悩や葛藤、そんな自分をHIP HOPが救ってくれたことを吐露する。
「7年くらい前か。クラブで俺がSKY-HIでライブをしたりバトルを始めた頃、俺はAAAのメンバーであることが周りにバレるのが嫌だったし、辛かったし、怖かった。そんな時期が確かにあったんだよね。」
AAAファンにとって衝撃的な言葉で始まったSKY-HIの告白。B-BOYSに「あいつ、AAAだ」と言われるのが怖かったのか、AAAのファンに「日高くんていつもクラブでお酒飲んでる」と噂され、AAA全体が悪いイメージで見られてしまうのが嫌だったのか、そもそもエイベックスに内緒でやっていた活動だったので、バレて怒られるのが怖かったのか。確かにすべて当てはまる部分はあるものの、しかし本質は、自分自身のことを受け入れきれてない自分自身が、いつもそこにあったから。「こんなめんどくさいことはない。こんなに辛いことはないよ。毎日、何があっても幸せを感じることができない日々が、何年か続いた。」と、ストレートな言葉を続けるSKY-HI。
そんな中で、逃げ場所となったのがHIP HOPだった。「巡りあった気がしたんだよ。そこに没頭している間は、すべてを忘れられる気がした。」
ラップのスキルを磨くことに集中していく中で、逃げ場だったはずのHIP HOPに救われていったSKY-HI。その文化、プレイヤー、先輩アーティストたちとその音楽に触れながら、やがて彼はひとつの結論にたどり着く。「俺が抱えているコンプレックス。みんなそれぞれあるじゃん。それって、マイナスなんかじゃないんだよな。ただの特徴なんだよな。見方によっては特徴だから最高の味方になるんだよ。それに気づいた瞬間、最大の敵だった自分が、最高の味方に変わったんだよ。自分にとって最高の味方が常に隣にいる状況が、ある日、急にできたんだよ。そしたらさ、漫画みたいな話で窓の外の景色がバラ色、みたいな。考え方変わった。生き方変わった。」
2009年に訪れたという、その瞬間。しかし、自分の意識が変わったからといって、状況はすぐには変わらない。「君たちみたいにLOVEをくれる人間ばかりじゃないからさ。」。ただ、SKY-HIはそういう状況にも向き合い、戦っていくとの決意を述べる。「なぜなら、最高の味方が隣にいるから。あの日からずっと。」
「未来が見えた気がした。どこまでも行ける気がした。その結果、つながったのが、今日、このステージなんだよ。2013年2月27日の1st FLIGHTのファイナルまで、その道はつながっていったんだよね。」と、SKY-HI。そしてこのステージから、またひとつ、次が見えた気がしたという。「何で見えたんだと思う? 何が俺に力くれたんだと思う? ほかでもない、今日、この場に集まってくれてる君たちひとりひとり。もう、それだけなんだよほんとに。おべっかでも嘘でもなんでも、ファンサービスでもなんでもねぇよ。この場所に立ってさ、こんだけの人とツラ突き合わせたんだ。そりゃさ、昔から応援してくれている人もいれば、なんとなく友だちの付き添いできた人もいると思うんだけど、変わんないよ。このひとりひとりの顔が見えているというこの状況を作ってくれたことで、俺は新しいプライド、新しい誇り、新しいパワー、新しい自信をみんなから勝手にもらっちゃったよ。おかげでまた強くなれる。また新しい景色が見えた。……次に進むことができます。ほかでもないみんなのおかげです。本当に、ありがとうございます。」
その瞬間、少しだけSKY-HIの声が震えたように思えた。そんなSKY-HIの告白に、会場を埋めたオーディエンスは誰もが瞳を潤ませて、温かい拍手が空間を包み込んだ。
「……ってなったらさ、お返ししなきゃだしさ。お返ししたいと思うよ、僭越ながら。勝手ながら。でも、俺にできることが残念ながらラップしかないからさ。君たちに与えられるのはラップだけ。だから、もしも、ステージ上から君たちに言葉を吐いた。それで君たちの人生がなんかいい方向に転がった。自分の殻を破る何かのきっかけになった。自分のコンプレックスがプラスになる瞬間、俺にとってHIP HOPがそうであったように、力を与えられることが俺にもできるんなら、俺はそれを生きがいって呼んで一生やり通していくからさ。」
熱い想いを訴え続けるSKY-HI。
「約束するよ。俺は、ステージ上にずっと立ち続ける。これをやめない。君たちの目の前に立つ機会を作り続ける。これを一生涯、俺はやめない。ステージ上から、役にも立たないかもしれないけど言葉を吐き続けて少しでも役に立てばいいなって。それでも君たちがまた会いにきてくれるんなら、できる限りのものをお渡しするよ。君たちが俺に、誇りを、プライドをくれたように、俺が君たちの自信だったり、プライドだったり。もうさ、“背中を押す”とかいう言葉がさ、最近、世の中溢れすぎてて言うのも嫌なんだけど、でも、やっぱ、それかな。正しい言葉は。君たちの明日の背中を押したい。なんかちょっとそれ嫌だな。もっと小さいスケールでなんかないかな(笑)。とりあえずさ、君たちが明日元気に生きるきっかけのひとつだけにでもなれば、それで俺は十分だからさ。これからもずっとステージに立ち続けていくよ。君たちの目の前に立ち続けていく。君たちから誇りをもらってそれを変換して君たちに渡していく。こういう関係をずっと続けられればいいなって思ってるよ。そうやって、お互いの人生をどこまでもアップしていきましょう。」
静まり返る空間に響くアカペラでのラップ。そして新曲「Up your Life」へ。オーディエンスは、SKY-HIの熱を帯びた言葉の数々に撃ち抜かれ、ただただ感動の中でステージ上のSKY-HIを見つめ、拳を振り上げる。この光景を言葉で簡潔に表現するなら、それは“圧倒”。SKY-HIは言葉と強い気持ちで2000人を圧倒し、会場の想いをひとつに、そして一気に高めていく。
終盤、人生を変えたというKEN THE 390の「What's Generation」(同曲にSKY-HIはfeat.参加。BARKSのインタビューでもSKY-HIはKEN THE 390からの客演オファーによってエイベックス内でも活動が認められたという旨の発言をしている。)からの「Critical Point」、さらに「マインドコントロール」「Tumblr」「Jackin' 4 Beats 2011」とアッパーチューンの連続でライブを一気にたたみかけた。
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