【インタビュー】坂本美雨、「レクイエム(鎮魂歌)である“pie jesu(ピエ・イェズ)”を子守唄にしようとレコーディングしたんです」
■引き続き子守唄もたくさん歌っていくと思うんですが
■子供たちが一緒に歌って楽しめる曲も視野に入れています
──それが形になったのが現在、配信限定中の楽曲「pie jesu」ですね。「オペラ座の怪人」、「キャッツ」などで有名な作曲家、アンドリュー・ロイド・ウェバーの作品を選ばれた理由というのは?
坂本:聖歌隊、CANTUSのリーダーの(太田)美帆ちゃんが提案してくれたんです。これまでにさまざまな合唱曲、宗教曲、グレゴリア聖歌などを歌ってきて知識が豊富なので、「何かいい曲ない?」って聞いたら「『pie jesu』が美雨ちゃんの声に合うと思う」って言ってくれて。
──そうなんですね。そもそも「pie jesu」で共演しているCANTUSとの出会いというのは?
坂本:5年ぐらい前に中島ノブユキさんとライヴで共演した時に紹介していただいて、コーラスで参加していただいたのがキッカケです。CANTUSのメンバーの中にも子育て中の方が何人かいらっしゃるので、今回の久しぶりの共演に関しては「私にとっての自然の流れがCANTUSにとってもそうだったのかな」と勝手に解釈しているんです。「子供ってこういう曲が好きだよね」って話し合えるし、コーラスは「さすが!」って思う美しさだし。本当に声が溶け合う気持ちよさを感じるし、なおかつ支えてくれて、響きを大事にしてくれていますね。
──坂本さんの美しい声にぴったりの曲ですよね。
坂本:「pie jesu」はレクイエム(鎮魂歌)なんですが、それを子守唄にしようという共通認識のもと、レコーディングしたんです。
──エレクトロニカやアンビエントミュージックを手がけているharuka nakamuraさんがプロデュースなさっていますが、子守唄のようなアプローチを共通認識としてカヴァーなさった楽曲ということですか?
坂本:はい。例えば、サラ・ブライトマンもこの曲をカヴァーしているんですが、朗々と歌い上げている。私たちは歌い上げないようにして、ちょっとキーを下げたりとか。この曲でデュエットしている中学生のうららちゃんもCANTUSが紹介してくれたんです。
──静けさがあって、とても澄んだ響きの歌に癒されます。震災で亡くなられた方たちへの追悼の意を込めつつ、身近な人を大切にしようというメッセージも込められたということですが。
坂本:震災の復興に関してはまだまだ終わりが見えないので、まずは継続して支援し続けること、忘れないでいることは、伝えたいというより、自分の覚悟としてずっとあります。故郷に帰れないご家族、家に帰れない動物たちのこと、放射能のことなど、解決していない問題がたくさんある中、ちょっと離れた場所に住んでいる私たちが何事もなかったかのように日常を送れていることを忘れないようにして、じゃあ、今、何をするべきかと言ったら支援をし続けることは当たり前のこととして、やっぱり自分が大事にしている家族をしっかり守ること。まわりの人を大切にしないと手を差し伸べることも難しくなるから、しっかり守って愛して、いつ、そういう出来事が自分に起きるかわからないという危機感はいつでも持っていたいと思います。
──そういう想いが「pie jesu」を通して少しでも伝わればと?
坂本:そうですね。想いが1曲の中に全て込められるとは思わないですけれど。
──熱いメッセージとは違う形で伝わる曲だと思います。フラットになれる楽曲というか、気持ちが無になる美しい曲なので、そこからまた考えさせられたり。
坂本:そうだといいなぁと思います。
──この曲から新たな坂本美雨さんの音楽活動が始まると考えていいんでしょうか?
坂本:はい。引き続き、子守唄もたくさん歌っていくと思うんですが、子供たちが一緒に歌って楽しめる曲も視野に入れています。自分が子ども時代に楽しかった音楽体験のように。それから、音楽とともに日常を過ごして楽しめて、育児の大変さを溜め込まずにいられるような。お子さんを連れて見にこられるようなライヴもやりたいなと考えています。「お母さんになったからって急にママさん活動?」と思われるかもしれないけれど(笑)、最初に話したように、歌が日常に近づく経験ができたことは大きかった。昔から歌われている「おにのパンツ」が百発百中で自分の子供を笑顔にできるって凄い。偉大だと思ったし、自分が表現してきた歌ってちっぽけだったなとも感じたんです。みんなで音楽を楽しんでいきたい。根はそういうシンプルな気持ちです。
取材・文●山本弘子
「pie jesu」はiTunes 、レコチョクなどのほか、ヤマハが運営する音楽配信サイト「MySound」でもダウンロードが可能。
◆http://ymh.jp/sakamotomiu_bks
リリース情報
2016年3月11日 配信限定発売
【通常配信】 YCCI-10258
iTunes 、レコチョク:250円(税込)
その他サイト:257円(税込)
【ハイレゾ配信】 YCCI-10259
(24bit/96kHz):500円(税込)
関連リンク
◆坂本美雨オフィシャルフェイスブック
◆坂本美雨オフィシャルtwitter
◆坂本美雨オフィシャルinstagram
◆坂本美雨オフィシャルYouTubeチャンネル】
◆CANTUS(カントゥス) official site
◆haruka nakamura official site
◆MySound 坂本美雨「pie jesu」
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事の関連情報
【ライブレポート】坂本美雨、ワンマンライブ<still lights>開催「父親が遺したメロディを歌いたいと思います」
坂本美雨、“子供”をテーマにしたEP『あなたがだれのこどもであろうと』リリース
<日比谷音楽祭2023>に桜井和寿、DJダイノジ、おお雨、民謡クルセイダーズ、LIBERAら15組
坂本美雨、25周年記念シングルリリース決定
坂本美雨、平井真美子を迎える金沢21世紀美術館でのライブが配信決定
坂本美雨、オリジナルAL『birds fly』リリース決定
dreamusic×KSR、新レーベル「FOLKY HOUSE」発足。新羅慎二、坂本美雨、一戸惇平作品リリース決定
<100万人のキャンドルナイト2020>にUA、おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)、大宮エリー&コトリンゴ出演
ハナレグミ、菅原卓郎ら出演。自然とデジタルが共存する無観客配信ライブ<坂の上の NAMAOTO>開催