【インタビュー】anderlust、前代未聞の領域を目指す2人のデビューシングル「帰り道」
シンガーソングライター越野アンナとベーシスト西塚真吾によるユニット・anderlust(アンダーラスト)が3月30日にシングル「帰り道」でメジャーデビューする。プロデューサーに小林武史を迎え、シングル表題曲が多部未華子主演映画『あやしい彼女』の主題歌に抜擢されたことも話題になっているが、今回の取材ではanderlustの2人の人柄と同時に、その自由なクリエイティビティーの一端に触れることができた。音楽シーンに新たな1ページを刻むであろうanderlustの初登場インタビューをお届けしよう。
◆anderlust 画像
■anderlustを、前代未聞のものにしたいんですよね。(越野)
■自由度の高さに惹かれたし、新しいことをやりたいという想いに共感したところもありました。(西塚)
――BARKSで取材させて頂くのは初めてですので、まずはanderlustのプロフィールを話して頂けますか。
越野アンナ(以下、越野):もともとは、私が2014年に雑誌『NYLON JAPAN』とソニーミュージックが主催した『JAM』というオーディションのミュージック・パフォーマンス部門でNYLON賞を頂いたんですね。のちに小林武史さんと一緒に、お仕事をすることになりまして。2人で何曲か作っていくうちに、『あやしい彼女』という映画の主題歌というお話を頂けたりするようになったんです。そういう流れと並行して、私は自分のソロ活動をしていて、そこでサポートメンバーとして(西塚)真吾さんにベースを弾いてもらっていたんですが、そこでいろいろ話していくうちにユニットを組もうということになって、anderlustを結成しました。
西塚真吾(以下、西塚):初めて彼女と会った時は、ちょっとビックリしました。彼女はアメリカ育ちなので、人との接し方とかがアメリカンなんですよ。初対面でも、“イェーッ!”みたいな感じで。僕はすごく人見知りなので、そこで一歩引いてしまって(笑)。
越野:ええっ、そうなの!? ショック~(泣)。
西塚:これから、そういうことに慣れないとな……というところから入りました(笑)。それで、しばらくサポートをしていて、ユニットを組もうという話をもらったのが「帰り道」(デビューシングル表題曲)の主題歌の話がある程度決まった段階だったんです。なので、誘われた時は、そんなに凄い人と一緒にやって良いの?──みたいな感じでした。結成した当初は自分が置かれている環境に実感がなかったけど、ここ最近やっと実感が湧いてきています。
越野:私は、まだ湧いていないです(笑)。
越野:これはanderlustの特徴でもあると思いますけど、枠にとらわれないということがコンセプトとしてあるんです。自由なスタンスで、新しい表現方法を探していこうと。私達は今『ショートムービーコンペティション』というものを開催させてもらっていまして。実は、そこで第3のメンバーを募集しているんです。3人目のメンバーは楽器ができなければならないというわけではなくて、もしかするとアート関係の人になるかもしれない。そういう風に、ちょっと変わったことをしたいんです。anderlustを、前代未聞のものにしたいんですよね。普通のバンド形態にすると、いろいろな縛りができてしまうのかなと思いまして。なので、どういう形にも広がっていけるメンバー2人のユニットという形から始めることにしました。ソロではなくて真吾さんに声をかけたのは、私は結構とっ散らかっているんです(笑)。ジャンルとかもとっ散らかっているし、デビューシングル「帰り道」に入っている3曲も全部カラーが違っているし、anderlustも枠を作らずにやっていこうと思っているし。そういう私を調和してくれる人が必要だなと思って、真吾さんに声をかけました。なので、anderlustでは、真吾さんは私が作る音楽のクオリティーを上げる役目を果たしてくれています。
西塚:2人だけのほうが確実にやれることが広がるというのは、ありますよね。それぞれの曲を自由にアレンジすることができるし、レコーディングやライブの時のサポートメンバーもいろんな方にお願いできる。そういう自由度の高さに惹かれたし、新しいことをやりたいという想いに共感したところもあって、2人のユニットというのは賛成でした。
越野:自由というのは、もう私の中で一番大事にしているものなんです。なので、anderlustが本当に自由なものであると良いなと思っています。
――すごく面白い存在になりそうな予感がします。それぞれの音楽的なバックボーンも話して頂けますか。
越野:私はアメリカで生まれて、6歳までアメリカに住んでいたので、ずっと洋楽を聴いて育ってきていて。特にUK物が好きで、ブラーとかオアシス、ビートルズとかが大好きです。あと、ジャミロクワイとかも、よく聴いていました。シンガーでは、クリスティーナ・アギレラさんとかが大好きです。あと、最近ではチャーチズという女の子がメインボーカルのバンドも好きですね。テクノっぽいことをやっているイギリスのバンドで、女の子が歌っていて、男性2人がいろいろマシンをいじっているというスタイルなんですけど、彼女の声が本当に良くて。最近は、よく聴いています。
西塚:僕は、完全に邦楽リスナーでした。斉藤和義さんやYUIさん、大塚愛さんといったJ-POPの人達を、高校生くらいの頃からずっと聴いていて。洋楽はバンドマンが聴いている中でも王道のレッド・ホット・チリ・ペッパーズくらいしか聴いたことがないという感じでした。今も邦楽ばかり聴いています。
――お2人の指向性の違いが上手く作用して、anderlustの楽曲がより個性的なものになっていることを感じます。ベースを弾くようになった経緯は?
西塚:もともとは、小さい頃にピアノをやっていたんです。中学生くらいの時に、モテるためにバンドをやろうと思って(笑)。最初はギターをやろうと思ったんですけど、弦の数が多くて弾けなくて。それで、ちょっと挫折してベースにいきました(笑)。僕の中には音楽プロデューサーに対する憧れがあって、ベースを弾きつつアレンジの研究もしながら今に至るという感じです。
――アレンジ力を持っていることも越野さんが声を掛けることにした理由になったんですね。では、デビューシングル「帰り道」について話しましょう。表題曲の「帰り道」は良質なメロディーや軽やかにせつなくて、どこかノスタルジックな味わいもあるという独自の世界が印象的なナンバーです。
▲「帰り道」ジャケット |
――昔の彼の良さに気づいたけど、もう戻れないという諦めの歌かなと思いきや、最後に“もう一度 帰るよ あなたへ”と歌っていて心に染みました。
越野:この曲の歌詞は、実体験というか。実際にこういうことがあった訳ではないですけど、過去に私が感じた気持ちを活かしています。
西塚:「帰り道」を最初に聴いた時は、とにかくメロディーが印象的でしたね。ヒネリがあるというか、フックが効いているけど、スンナリ耳に入ってきて印象に残るというメロディーだったので。それで、すごく良い曲だなと思いました。ベースに関しては、せつない曲なのでフレーズ的にもせつなさを演出できるものを盛り込んで、楽曲の一部になるようなベースを意識しました。
――今回のシングル3曲共に感じたことですが、西塚さんのベースは休符の入れ方や、歌の合間に弾くハイポジのフレーズが絶妙です。
西塚:ありがとうございます。僕は今回の「帰り道」がanderlustとして初めてのレコーディングだったんですけど、小林武史さんは自分が小さい頃から聴いている音楽を作られた方じゃないですか。だから、すごく尊敬しているし、憧れもあって。レコーディングの時は小林さんがいらっしゃったので、もうずっと緊張しっぱなしでした。ベースのことについてやり取りがあったんですけど、緊張していたからどんな話をしたかは全く覚えていないです(笑)。
越野:アハハ(笑)。真吾さんのベースは、本当に良いですよね。真吾さんのことは、ベーシストとしても、人としても信頼しています。楽曲全体を見ているから出しゃばったことはしないし、そのうえですごく良いベースを弾いてくれるんですよ。だから、ベースに関しては、完全に任せています。anderlustは、ボーカルとベースという2つのメロディーを楽しんでもらえると良いなと思いますね。それに、今後どういう形で出すことになるか分からないですけど、実は私達が隠し持っている曲がありまして。その曲のベースは、めっちゃヤバい(笑)。本当にすごくて、その曲を歌う時は、いつもニヤけてしまうんです(笑)。なので、その曲にはめっちゃ期待していて欲しいです。
――楽しみです。「帰り道」の歌録りは、いかがでしたか?
越野:この曲は、まっさらな気持ちで歌いました。自分の伝えたい気持ちはコアにあるんですけど、自分の気持ちは強く入れ過ぎずという。そういう方向でいこうと決めて自分なりに歌ったんですけど、小林さんが何もコメントされないんですよ。なので、これで良いのかなと思いました。
西塚:何も言わないということは、それで良いということだよ。
越野:ああ、そうか(笑)。
――そう思います。しっとりした歌中と張った声も織り交ぜたサビ・パートの対比が心地好いですし、洋楽っぽさもあるという上質な歌になっていますので。
越野:ありがとうございます。まっさらな気持ちで歌いましたけど、歌のトーンで流れを作るということは意識しました。この曲に限らず、Aメロはこういう風に、でもサビではこういって……みたいなことは、どの曲でも自然と意識するんです。なので、それが心地好いと言って頂けると、すごく嬉しいです。
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