【インタビュー】ZAQ、「賛否両論あるだろうけど少しでも風穴をあけられたら」
■アニメの世界観を視聴者に紹介するのがオープニングの仕事
■作る楽曲にどこまで自分を入れるかというのが悩みどころなんです
――アニソンシンガーとして活動するようになってからは、アニメの作品ありきで楽曲制作を行うことになったと思うんですが、作曲家としてのスタイルの変化はありました?
ZAQ:もともと、何かのキャラクターに対して楽曲を作ることが好きなんです。それが三次元のシンガーでも二次元のキャラクターでもあっても。その人になりきって書くのが得意なんです。例えば、美術品を見たら、この美術品のテーマソングを書くとか。だから劇伴も好きなんですよ。むしろ得意だったので、あまり変化はないです。
――なるほど。以前、声優の小野賢章くんの「Mr.Trickstarr」という楽曲の作詞をZAQさんがすごい短時間で仕上げてきたという話を伺ったんですけど、それはキャラクターに合わせて書くのが得意だからなんですね。
ZAQ:実は、「Mr.Trickstarr」を書くまでは、男性のアーティストに曲提供をしたことがなかったんです。アニメのキャラクターにならあったんですけど。だから、アーティストに「俺の歌詞として書いてほしい」とオーダーされることがなかったんです。賢章くんはレーベルメイトでもあって、以前から友人でもあるんですけど、人間的にもすごくカッコイイ人なんですね。だから、「小野賢章に言われたい言葉」というのを考えて、打ち合わせの直後、2~3時間で書いたんです。最速でしたね。
――多作な方ですか?
ZAQ:曲はたくさん作ります。ただ、キャリアを重ねるうちに、前と同じことはやってはいけないという……。でも、私らしさは出さなきゃいけない。ジレンマで全然生み出せない時もあるんです。今作の「hopeness」は自然に出てきましたけど。
――アニメ『紅殻のパンドラ』の主題歌ということですが、どんなイメージで書き始めたんですか?
ZAQ:近未来バディアクションなので、バディ感を出して欲しいというオーダーだったんです。原作を読んで、自己犠牲の愛と希望の部分を広げようと思いました。
――ピアノのアレンジがすごくカッコイイですし、途中で入るコーラスのような部分も神々しくてハッとします。リズムも変拍子で複雑で面白い構成ですね。
ZAQ:これまでのポップスよりもZAQとしての進化を見せたいと思ったんです。なおかつ私の1stシングル「Sparkling Daydream」のようなイメージでと言われていたので、原点回帰もあった。結局、楽器の構成はシンプルにフュージョン・ジャズ・ファンク風の大人っぽいサウンドになりました。ピアノも生ピアノではないですけど自分で弾いたんですよ。
――すごくオープニングらしい楽曲に仕上がってますよね。
ZAQ:ZAQとしてのキャラクターも出して、アニメのテーマソングとして、アニメの世界観を視聴者に紹介しなきゃいけないっていうのは難しいことでもあるんです。「このアニメはこんな世界が広がっていて、こんな作品ですよ」っていうのを紹介するのがオープニングの仕事だと思うんですけど、それを自分の世界とドッキングさせるにはアニメに共感しないといけないんです。良いところを見つけるのが楽曲を作る前にやることですね。最近は、自分の作る楽曲に、どこまで自分を入れるかというのが悩みどころなんです。
――なるほど。それで言うと、「hopeness」のカップリング曲「ヒロインは嘘」はすごく個人的ですよね。
ZAQ:はい。「ヒロインは嘘」は、リスナーが「シンガーソングライターとしてのそんな気持ちなんて聞きたくない。引くわ~」っていうくらいの気持ちになったとしてもかまわないと思って書いて。
――生々しいですよね。
ZAQ:そうなんです。生々しいことをやりたかったんです。歌い方も激情的だし。アニソンシンガーとしては二次元の世界のことをいつもやっているからこそ、超三次元の歌を書きたくて。これまで活動してきて初めてシンガーソングライターのZAQとして、「女ってこうでしょ?」っていうのが書けた曲です。実体験ではなく、友達の恋愛話を聞いてその子のために書いたんですけどね。女の子って、「どうしてそんな男に引っかかるの!?」って周りの人に言われても、だいたい毎回同じような恋愛にハマってしまう。「女」というものから発せられるものをリアルに曲にしました。今作って、実は女性に向けてるところがあるんです。「薔薇の腰かけ」は、女の子って、ファンタジックなものも好きじゃないですか。お姫様に憧れたり。この曲は「青い鳥」っていう童話をモチーフにして、女の子の好む言葉をちりばめて。
――でも、その中にも女の子の毒の部分も入れているし。
ZAQ:そうそう。「棘に触れた」とか。こういうのも私らしさです。ただ、この曲はメッセージ性よりも、雰囲気で聴いてほしと思っていて。「hopeness」と「ヒロインは嘘」が濃いから。「hopeness」が生と死、自己犠牲だとすると、「ヒロインは嘘」は、愛と憎悪というか。だから、濃いままで終わらせず、1枚としてサラっと聴いてもらうには「薔薇の腰かけ」みたいな風景のようなイメージで聴ける楽曲が必要で。だから、楽曲の中のパンチラインも一つだけ。言いたいのは「いろいろな色の薔薇が咲く「バライロノジンセイ」とは何色か知らず」っていうところだけです。それを問いかける曲。
――10枚目のシングルは面白い内容になりましたね。アーティストZAQがすごくわかる一枚だから、今後が楽しみです。
ZAQ:アニソンシンガーは「ヒロインは嘘」のような生々しい曲を歌ってはいけないという暗黙のルールに切り込んだようなところはありますよね。私のファンの方からは賛否両論あるだろうし、ZAQのそういう部分は見たくないって言うかもしれないけど、少しでも風穴をあけられたら。今、アニソンシンガーを目指す人も増えていますから、追いつかれないように、ZAQというアーティストをもっと高めていけたらと思います。常にアンテナは高く、努力を続けたいですね。
取材・文●大橋美貴子
©2016士郎正宗・六道神士/KADOKAWA 角川書店/紅殻のパンドラ製作委員会
リリース情報
2016.02.03 ON SALE
【DVD付き限定盤(CD+DVD)】LACM-34447 ¥1,800+ 税
【アニメジャケット盤】LACM-14447 ¥1,300+税
01.hopeness
02.ヒロインは嘘
03.薔薇の腰かけ
04.hopeness cut out A-bee remix
05.hopeness(OFF VOCAL)
<DVD>※DVD付き限定盤のみ収録
hopeness Music Video
Making of hopeness
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