【インタビュー】稲葉浩志、「B'zというアイデンティティのために」

ポスト

2016年1月13日「羽」と名づけられたシングルをリリースし、1月16日からは全国アリーナツアーをスタートさせる稲葉浩志は、B'zの活動と並行し、ソロアーティストとしても充実した活動をみせている。活動歴25年を経て今もなお衰えることを知らない驚異的なパフォーマンスを発揮する稀代のボーカリストは、今、何を思い、どこに向かっているのか?

◆稲葉浩志 画像

2015年12月某日、都内にて稲葉浩志に話を聞く機会を得た。落ち着いた気配を漂わせながら、彼は静かに語り始めた。

   ◆   ◆   ◆

■個人によって違うと思うんですけども
■“出るだろ?”って見せたい自分もいるんですよ(笑)

──ソロとしては久しぶりのシングルになりますね。

稲葉:そうですね。制作作業自体はわりと断続的に時間があるときにはやっているんですけども、スケジュール的にまとまったものを出せそうになったときに、それに向けて細かく詰めていく感じですね。いつもそういうやりかたです。

──1月16日からはアリーナツアーが始まりますが、2014年にはステラボールで10日間も連日行う滞在型ライブを行いましたよね。ずっと稼働しているイメージがありますが、オフってあまり取られてないんですか?

稲葉:そうでもないですよ。わりと休んでます(笑)。

──ステラボールでのパフォーマンスも強烈なものでした。連日のライブにも潰れず、凄い喉ですよね。

稲葉:強くなったんじゃないですかね、ツアーを続けているうちに。

──ボイストレーニングは?

稲葉:自分自身で軽いものはやっていますね。昔はツアー中に喉が痛くなったりもしていましたね。だいぶ昔ですけども。

▲<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->7月26日@ナゴヤドーム

──最近はどうですか? B'zのステージでも全く不安げなところがありませんが。

稲葉:実際はその日のコンディションにもよります。風邪をひくこともあるし。でも、ガラガラになるまで歌うようなことは避けられるようになってきました。いろいろ失敗していくなかで、自分の中でいろいろデータが蓄積されてきて“このときは、こう。このときは、こう”と、その時々で考えられるので。

──コントロールできるようになったということですか?

稲葉:そこまでは完璧じゃないですけども…以前よりは。

──いや、いつも完璧な歌唱に感服していたんです。この人の喉はどうなっているんだ、と。

稲葉:はは(笑)。そうでもないですけど。“あのときやっぱり、リハであんなに歌わなきゃよかったな”みたいなことは多少はありますけど、確かにそこにいってしまう一歩前で避けているようにはなっていますね。

──そのノウハウというのは自分だけに適用されるもので、他人に応用できるものではないのでしょうか。

稲葉:身体のカタチも違うしそれぞれのコンディションがあるので、同じようには人に勧められないですね。年齢によってもだいぶ違っていて、今、昔と一番大きく違うのは、使わないと声帯が痩せていくことです。

──痩せていく?

稲葉:休みっぱなしだと逆に喉がダメになっちゃうんですね。年齢の話になりますけど、若ければすぐに立ち上がってパッと走り出せちゃう感じがあるじゃないですか。

──いきなり全力疾走できます。

稲葉:そうなんですよ。それがだんだんできなくなったりとか、十分暖かくなるまで暖気運転じゃないですけども、それがだいぶ必要になってきたりする。筋肉がパンッと張った状態になるには時間がかかるし、その反面痩せてしまうのは早いんです。

──キャリアの長いボーカリストは、みな様々な経験を重ねているんですね。

稲葉:(自分の歌は)自分の生身と直結しているものなので、そういう意味では10年前と同じようなフレーズを同じように無理して歌う、ということはしなくなりました。

──表現者としても変化している、ということですか?

稲葉:声も変わってきているし。単純に(作品の)キーが高いということもありますけど、細かくみたら“この音をこういう感じでヒットさせる”というのが今は難しいということもあります。場合によっては“どうだ、同じようにできるだろ”って見せることが、逆に表現力の面では劣ってしまうことになったりもするんです。無理しないほうが楽曲の表現としては良かったりするのに、そこを無理してやってしまう…そういうのは、やらないようにしてます。

──その姿勢は、ソロでもB'zでも同じですか?

稲葉:同じです。ただどうしても…これも個人によって違うと思うんですけども、“出るだろ?”って見せたい自分もいるんですよ(笑)。

──ですよね、実際出てますし(笑)。

稲葉:まぁ、細かくチェックしていくとアレだと思うんですけども(笑)、やっぱりそこで若い自分というか、いくら歳をとってもそうやりたい自分も片方でいるから、そことの攻めぎあいというか。まぁ、そこをやりくりしながらやっているという感じですかね。

──若い頃から、あまり無茶はせず体調管理はしっかりされていた方なんでしょう?

稲葉:わりとそう言われるんですけど、そんな厳格には…。これも人によって基準が違うので、その人から見ると厳格に見えるかもしれないんですけど、超がつくほどストイックというのは、自分は違うと思うんですけど…。

──いろんな都市伝説、ありますよね(笑)。

稲葉:やたら言われるんですけどね(笑)。そんなことないですよ。結局、僕も失敗したところからいろんなことが始まっているので。コンサートが終わった後、酒飲んで朝までカラオケ歌って、翌日“喉の調子がおかしいな”なんて当たり前のことなんだけど(笑)、それも失敗しないとわからないので。若いときですけどね。

──一通りの無茶は経験済みなんですね。

稲葉:はい(笑)。“なんか、おかしいな”って。それなりに苦い経験もしながらの、自分の中のデータの蓄積で現在に至るというところです。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報