【ライブレポート】ハロウィンさえもsads色に染め上げて

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10月24日、東京・品川ステラボールにて、sadsの<evils halloween III>が開催された。ここ数年の恒例となったハロウィン公演も今年で3度目。sadsとしては年内最後のライヴである。思い思いの華やかな装いで駆け付けたオーディエンスとともに、彼らは狂乱の宴を繰り広げた。

◆sads画像

この夜のOpening Actを務めたのは、HEAD PHONES PRESIDENT。メンバー全員がゾンビメイクを施し、へヴィなサウンドで魅せる。Anza(Vo)の狂気を孕んだスクリームとメロディアスな歌声からは、sadsの爆音に対する敬意が溢れ出ていた。初めて彼女たちのパフォーマンスを目にするオーディエンスの熱気が次第に上昇していくのが印象的だった。


彼らがステージを後にすると、この夜の趣向に合わせたハードロック/へヴィメタルの名曲の数々が場内に響き渡る。焦らしに焦らされた観客が見守るなか、sadsが登場したのは午後7時20分。思わせぶりなSEが鳴り、メンバーが一人また一人とステージに歩み出る。スカルメイクを施した黒衣の従者、K-A-Z(G)、GO(Dr)、クボタケイスケ(B)の影が見えた途端に大歓声が渦巻く。そこへゆっくりと姿を現す悪魔の花嫁、清春(Vo)。彼の息を呑むような美しさに見とれているうちに、「evil」の轟音が炸裂し、邪悪なパーティーが幕を開けた。




たとえメンバー全員が仮装していても、sadsの本質は揺るがない。時折観客をリラックスさせるようなMCを挟みながらも、圧倒的な音の塊で畳み掛けるさまは痛快だ。本編中盤のGOとK-A-Zの超絶にしてエモーショナルなソロコーナーも、非常に見応えがある。彼らの演奏に続いてクボタがダークなイントロを響かせると、妖しい吸血鬼に“お色直し”した清春がマントをなびかせて再登場。この「Darkness Is My Spiral Mind」が生み出した闇の空間は、今回のハイライトのひとつだろう。また、今夏のツアー中に会場限定販売されていたシングルDVDに収録の「May I Stay」も新たなアンセムとでも呼ぶべき輝きを放っていた。


「皆さんがこのあと年内観るライヴがいくつかあるとは思いますが、このsadsのライヴが一番です。我々が一番です」アンコールで観客にそう語りかけた清春。近年盛り上がりを見せるハロウィンという催しさえもsadsの色に染めてしまうのが、彼らの凄さだ。「sads、いいですね。昔も良かったですが、この5~6年も凄くいいと思います」。ラストの「CRACKER'S BABY」に至るまで気を抜けない、怒涛のへヴィチューン。夢のような時間を過ごした観客は、“生きる喜びと解放”に満ちた表情を浮かべていた。

sadsのライヴはいつでもあっという間に終わり、次なる渇望を生み出す。永遠にこの爆音を浴び続けたいと思わせる迫力を持ったバンドだ。充実の2015年を駆け抜けたsads。2016年に広がる景色は、より一層、果てしないものになるだろう。

文:志村つくね

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