【ライブレポート】前代未聞のCrossfaith「ここは地獄の入り口です」
Crossfaithが昨日9月26日、世界遺産であり今年徳川家康公の四〇〇年御遠忌である日光山 輪王寺大猷院(りんのうじたいゆういん)仁王門前にて<第一回世界遺産巡業特別公演 ‘日光の編'>と題したスペシャルライブを実施した。
◆Crossfaith画像
このライブはバンドコンテスト『Red Bull Live on the Road』とのコラボレーションによって実現したものだが、Crossfaithがこういった場所でライブを行うのは初めてのこと。また日光山でのロックバンドによるライブも前例がないということもあり、一体どのようなステージが繰り広げられるのかと開催発表以降、多くの音楽ファンから注目が寄せられていた。
前日まで降り注いだ雨もライブ当日はなんとか止み、会場には血気盛んなロックファンが大勢詰め掛けた。厳粛な雰囲気の中、彼らは早くもTシャツ姿で今か今かと開場を待ち続けている。しかし、無情にも開場時間30分前から小雨がぱらつき始めてしまう。しかも日光の気温は都心に比べればかなり低く、雨と共にさらに下がったことで、息を吐くとうっすらと白ばむのが見えるほどだ。
そしていよいよ開場時間に。ライブ会場となる日光山 輪王寺大猷院仁王門前は、文字通り大きな扉の両側に仁王像が立っている環境で、その前に特設ステージが設置されている。観客は雨で滑りやすくなった会場内をゆっくり進み、場内はすぐに大勢のロックキッズたちで埋め尽くされた。そして定刻を過ぎた頃には小雨も完全に止み、オープニングSEが大音量で流れ始める。場内に立ち込めるスモークと辺り一面を照らすまばゆい照明が幻想的な演出を施す中、仁王門の扉が開き、中からはCrossfaithの5人が登場。横1列に並んだ彼らは拳を高らかに上げ、これから始まる歴史的瞬間に意気込んでみせた。
5人がそれぞれセッティングを済ませると、Kenta Koie(Vo)は「行こうぜ、日光! Come on!」と叫び、そのまま「Monolith」からライブをスタート。世界遺産でのライブということもあり、事前にモッシュやダイブといったライブハウスでの“お約束”の禁止を告げられていた観客だが、彼らはTatsuya Amano(Dr)が繰り出す強烈なビートに合わせてジャンプやダンスで応えていく。先のZeppツアーから本格的にライブ復帰を果たしたKazuki Takemura(G)、そしてHiroki Ikegawa(B)はギターやベースのネックを高く掲げて観客を煽り、Terufumi Tamano(Program / Vision)はきらびやかなシンセと激しいスクリームでアグレッシヴなバンドサウンドに華を添える。Crossfaithはその後も「Raise Your Voice」「Ghost In The Mirror」と、リリースされたばかりのニューアルバム『XENO』からのナンバーを連発。攻撃的なパートではKoieが「日光、全員飛べますか!」と煽り会場全体がジャンプの渦と化し、メロウなコーラスパートでは全員での大合唱が巻き起こる。そして「Eclipse」ではさらに会場がカオス化。観客はKoieの「中指上げろ!」を合図に天高く中指を立てると、そのままダンサブルなビートに合わせて手を左右に振り続けた。
たった4曲で厳かな雰囲気の日光山 輪王寺をいつもと変わらぬライブ空間へと一変させたCrossfaith。KoieはMCで「昨日の設営からたくさん大変なことがありましたけど、今日を迎えることをできました」と感慨深げに話す。また、雨に備えてステージにテントで屋根を作る案があったことを明かし、それだと後ろの仁王門が見えなくなってしまうためテントなしで行うこと、最悪雨が降った場合は中止にせざるを得なかったという事実を告げた。そういった経緯を踏まえて、Koieが「モッシュするだけ、腕を振り回すだけがライブじゃないので、俺たちは俺たちの楽しみ方、お前らはお前らの楽しみ方でやっていこう」と伝えると、会場内は大声援に包まれた。
さらにこのライブの模様がオンデマンド配信されることを話し、「日本のバンド、日本のオーディエンスがどれだけヤバいか、世界に見せつけてやりましょう!」と煽ってから、グルーヴィーな「Madness」でライブを再開。世界遺産に響き渡る怪しげなサウンドとダンサブルなビート、そしてリズムに合わせてヘッドバンギングを繰り返すメンバーや観客。これらをまばゆいライトが照らし出すことで、会場は何かの儀式を彷彿させる空間へと変貌を遂げる。「前代未聞、新たな歴史を作る瞬間をお前らと作りたいです。歴史の一部になる準備はできてますか?」と問いに続いては、前作『APOCALYZE』からドラマチックなサウンドが魅力の「Scarlett」。ダークな空間を生み出した「Madness」から一変、今度はある種神秘的な空気が会場を包み込んだ。
「Scarlett」が終わるとTatsuyaのみを残し、他のメンバーは一旦ステージから捌けていく。1人残ったTatsuyaはドラムセットから立ち上がり、後方の扉のすぐそばに設置された巨大な和太鼓の前へ移動。2本のバチを高く掲げると、そのままゆっくりと精神統一を始め、タイミングを見計らって太鼓を叩き始める。ドラムではなく和太鼓の音色が場内に響き渡ると、改めてここは日光山 輪王寺なんだという現実に引き戻される。静寂と激しい太鼓の音が交互に訪れ、再び厳粛な空気が会場中に充満する中、Tatsuyaはここでしか実現できなかったスペシャルな“ドラム”ソロをやり遂げ満足そうな表情を浮かべた。
再度ドラムセットへと戻ると、今度はTeruと2人でニューアルバム『XENO』のオープニングに収録されているインスト曲「System X」を奏で始める。シンフォニックな曲が徐々に盛り上がりを見せると、他のメンバーもステージに戻り、Koieの「まだまだ行けるな、日光!」を合図に「Devil's Party」からライブ後半戦に突入。「悪魔のパーティ」というタイトル通り、ある種の邪悪さを感じさせる咆哮と演奏は和太鼓独奏を忘れさせるほどのパワーを放ち、観客もこれにダンスや合唱といった行為で立ち向かう。さらに「Omen」では会場のパーティ感がさらに増幅し、ブレイクダウンパートではこれでもかというほどに、その場にいた全員が激しく頭を振り続けた。そしてKoieの3カウントを合図に、観客全員が空にも届きそうなほど高いジャンプを見せ、盛り上がりは最高潮を迎えた。
「最後の1曲の前に」とKoieが話し出すと、「ここは地獄の入り口です。仁王像という地獄の門番の前でプレイしている、すごい状況です。それを噛み締めて、俺たちが今ライブをしている場所を理解して最後の1曲、ぶっ壊れていきましょう!」の言葉に続いてラストナンバー「Countdown To Hell」へと突入。曲とシチュエーションが見事に合致した、クライマックスに相応しいエンディングになろうとしていたところ、観客のある行動を前にKoieが珍しく演奏をストップする指示を出す。なんと、この場でウォール・オブ・デスをしようとした観客の動きに気付いたKoieは、「その場で、溜まってるエナジーを発散してください!」と呼びかけてから演奏を仕切り直し。いつもとは異なる状況を改めて理解した観客は、今度は溢れんばかりのエネルギーを高く掲げた拳や激しく振る頭などに込めて、その場で暴れる。カオティックなスクリームとアグレッシヴなバンドサウンド、大量のスモークと真紅の照明というコラボレーションは、まさに「地獄の入り口」という表現にぴったりな演出だ。この日は自身の機材の前にいることが多かったTeruもKoieやKazuki、Hiroと共にフロントに立って叫ぶなどカオスな状況を経て、最後はKoieの「We are Crossfaith!!!」というシャウトでライブは幕を下ろした。
あっという間のスペシャルライブだったが、まだまだ暴れ足りないキッズたちはすかさずアンコールを求める。しばらくするとTeruが1人でステージに現れ、もの悲しげなピアノの音色と共に「Astral Heaven」を演奏し始めた。最新作『XENO』のラストを飾るこのインストナンバーは、途中からエレクトロの要素が加わることで、クールダウンした会場の空気をじんわり温め始める。するとステージにはHiroとTatsuyaが姿を現し、激しいビートと流れるようなベースラインで演奏に華を添える。さらに仁王門の前にKazukiが登場し、耳をつんざくようなギターを鳴り響かせた。地獄(「Countdown To Hell」)から天国(「Astral Heaven」)へと引き戻された会場で、Koieはライブ実現のために働いてくれたスタッフ、この日のライブを一緒に作り上げた観客に対して最大級の感謝の言葉を送る。そして最後の最後にニューアルバムの表題曲「Xeno」をプレイ。ブルータルなオープニングで会場の熱気が加速すると、その場にいた全員が有り余るパワーをすべて放出していく。ドラマチックな展開を持つ「Xeno」は、今日という日に相応しいナンバー。全身全霊をかけて歌い演奏するCrossfaithからは、もはや神々しさすら感じられるほどだった。
こうして歴史に残る特別なライブは無事終了。最後はメンバーと観客が記念撮影をして、「次はライブハウスで会いましょう。ありがとう!」との言葉を残して、5人は満足げな笑みを浮かべてステージを後にした。終演後、Crossfaithのメンバーは以下のようなコメントを残している。
<Crossfaith ライブ終了後コメント>
大成功だったと思います。開催直前から雨だったり設営の問題だったり出来るのか出来ないかと言うラインをくぐり抜けて、最初のコンセプトをそのまま伝えられる事が出来たと思います。
今、本当に歴史的な一瞬だと思います。こういう場所で、ロックバンドがライブをする、ライブハウスのようにお客さんを入れてライブをするというこのスタイルが前代未聞の事だと思います。歴史の一部になれたような。本当に光栄な事だと思います。
最後に今回、本当にこういう場所でライブが出来、ご協力頂いた日光山、輪王寺方々、全ての方々に感謝をしています。ありがとうございました。
なお、ライブの模様が10月4日(日)00:00〜23:59の間、RedBull.com/Crossfaith 上にて無料 オンデマンド配信される。残念ながら会場に足を運ぶことができなかったファンは、メンバーが「歴史の一部になれた」と語る前代未聞のスペシャルライブを追体験してほしい。
取材・文:西廣智一
Crossfaith<第一回世界遺産巡業特別公演 ‘日光の編'>
2.Raise Your Voice
3.Ghost In The Mirror
4.Eclipse
-MC-
5.Madness
6.Scarlett
7.Drum Solo
8.System X
9.Devil's Party
10.Omen
11.Countdown To Hell
ENCORE
12.Astral Heaven
13.Xeno
◆LINE MUSIC「Crossfaith 20曲」プレイリスト
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